「Twitterで〇〇のツイートが拡散されて話題を集めています」
こんなニュースをテレビやネットで目にしたことはないでしょうか?
ポジティブなものならうれしいことですが、ネガティブなものが拡散されてしまった場合、
それは企業の経営において大きなリスクになり得ます。
また拡散されやすい話題は年々変化を続けており、常に情報をアップデートする必要があるため、経営者や担当者にとってはとても悩ましい問題です。
ここではソーシャルリスクが発生する要因とその対処法について考えていきます。
ソーシャルリスクとは
ソーシャルリスクとはTwitterやInstagram、FacebookやYoutubeなどのソーシャルメディアの利用に伴うリスクのことを指します。
個人の何気ない投稿、企業のプロモーションによる発信、第三者からの指摘などソーシャルリスクを引き起こす炎上騒動の発端は数えきれないほど存在します。ひとたび拡散されて炎上騒動に発展してしまうと、騒動の内容は未来永劫残り続け取り返しがつかないことになってしまいます。
もちろん企業経営においても重大なインパクトを与えてしまうのがソーシャルリスクと言えるでしょう。
ソーシャルリスクを経営リスクにさせないためには
- 顕在化させないこと
- 早期発見すること
- 適切な対応をすること
以上の3点を重視したガバナンスを構築することが大切です。
ソーシャルリスクが企業経営に与える影響とは
では具体的にソーシャルリスクが及ぼす企業経営リスクとはなんなのでしょうか?
世界的に有名事例は2013年に発生したジャスティン・サッコの例でしょう。
ある女性の冗談ツイートが人種差別的だとして大炎上し、彼女の名前はツイッターの全世界トレンドランキング一位となったのです。勤務先も特定され、結果的に彼女は職を失い名前は未来永劫残り続けることになります。
参考:『世界最大のツイッター炎上事件―ネットリンチで人生を破壊された人たち』,光文社新書,https://shinsho.kobunsha.com/n/nc5a01868356b
国内の事例では某回転寿司チェーン企業で発生したバイトテロ事件が有名です。アルバイト店員が調理していた魚をいったんゴミ箱に捨てた後、まな板に戻した動画が拡散。
同社の株価は前日比で130円下落し、これによって時価総額が「1日で27億円吹き飛んだ」という報道もありました。衛生面への懸念も消費者の間では発信されることになり、イメージの損失にもつながってしまいました。
このようにSNS炎上は企業の評判や好意度の低下、ブランド価値へ悪影響などのソーシャルリスクとなります。
ソーシャルリスクを分類すると、下記の2つに分類されます。
- 内部情報、企業機密の漏洩
- 会社、サービスのブランドイメージの毀損
それぞれ詳しくみていきましょう。
内部情報、企業機密の漏洩
内部情報、企業機密の漏洩はソーシャルリスクの1次的な被害です。これが拡散され炎上騒動に発展すると世間の目に晒され、TVや新聞などのマスメディアに取りあげられることもあります。
しかし、拡散がされる前に食い止めれば極限られた人にしか情報は漏洩せず、大きなソーシャルリスクにはなりません。
SNS上の内部情報、企業機密の漏洩をソーシャルリスクにさせないためにはそもそも内部通告者を出さないリテラシー教育、及び情報の発信をいち早く察知する体制の構築が必要になります。
会社、サービスのブランドイメージの毀損
内部情報や企業機密、従業員の不適切な投稿や不祥事の記事などが拡散されるといわゆるSNS炎上といった状態になってしまいます。そもそもSNSはポジティブな発信よりネガティブ、もしくは賛否両論あるような情報が発信されることが多く、会社、サービスのブランドイメージの毀損に繋がってしまう危険性が高いです。
しかしSNS炎上に対して適切に対処することでブランドイメージの毀損というソーシャルリスクを回避することも可能です。
例えば、とある飲食店運営会社では不適切ともとれるSNSプロモーションを実施し拡散炎上。ブランドイメージの毀損もあり得る事態でしたが、即座にプロモーションの問題点と改善策を公式アカウント、及び公式HPから発信したことで逆に支持を獲得することに成功しました。
もっとも、このようなケースはまれでやはりSNS炎上はソーシャルリスクに繋がってしまう確率の方が高いので、対応できる体制と知見が必要です。
ソーシャルリスクが発生する要因とは
ソーシャルリスクに対応するには発生する要因をしっかりと知っておくことが重要です。細かく挙げればキリがないですが、ソーシャルリスクの火種は主に6つに分類されます。
従業員による内部告発の拡散
まずは「従業員による内部告発の拡散」です。
「〇〇株式会社の××課長は事務の女性に日常的にセクハラをしている上に会社はそれを黙認している」
「〇〇(企業名)は新卒研修の一環でパワハラまがいのことをして自殺者を出した」
などのような発信が拡散されるイメージです。
特にセクハラやパワハラなどのハラスメント行為、労働基準法違反とも受け取られる「働きかた」に関わる内部通告はSNS世論に響きやすくブランドイメージの毀損にも繋がりやすい特徴があります。
従業員による不適切投稿の拡散
バイトテロに代表される従業員による不適切投稿の拡散も有名なソーシャルリスクの火種です。
2015年前後は多数の飲食店で同様の事例が頻発し連日ネットニュースやワイドショーのネタになっていたことを覚えている人も多いと思います。現在では事例も減ってきましたが、大きなソーシャルリスクを孕んでいることに間違いはありません。
公式アカウントによる不適切投稿の拡散
公式アカウントによる不適切な投稿も大きなリスクです。個人アカウントと間違えた、いわゆる「誤爆」によるものが多いとされていますが、通常の投稿が拡散されてしまうことも少なくありません。
特にプロモーション活動にかかわる投稿は賛否を招く場合が多く、あらかじめ何か起きた際の対応の軸をもって発信するのがよいでしょう。
利用者によるクレームの拡散
サービス業や飲食店、食品に関わるクレームは企業やブランドイメージを大きく毀損しかねません。
有名な例だと2014年にある大学生のツイートから発覚した「某カップ焼きそばゴキブリ混入事件」は非常に大きな騒動になりました。この事件をきっかけにこの商品は約半年もの間、店頭から消えてしまう事態となりました。
特に食品への異物混入などは日本では拡散されやすい傾向にあり、一気にユーザーの離脱を招く可能性があります。この例は初動対応を誤ったという分析が多く、食品製造業がソーシャルリスクへの体制づくりを一段と強化したきっかけにもなりました。
ニュース、新聞記事の拡散
企業の不祥事や不正がマスコミによって明るみとなり、それがSNS上にも波及するパターンです。
企業のイメージダウンやブランドイメージの毀損になることは間違いありませんが、ソーシャルメディアをきっかけとした炎上とは言い難く、日々供給される新しいニュースによって埋もれてしまうことも多いのが事実です。
しかし、当事者のSNSが掘り起こされた結果、新たな事実や疑惑が登場した際は新たな炎上騒動に発展することもあります。この場合はSNSのアカウントや書き込みを削除しても炎上騒動に発展することもあり向き合うのが難しい問題でもあります。
風評被害
最後に事実無根な風評を書き込まれ、それが拡散されてしまうケースです。身に覚えのないことで企業やブランドのイメージがダウンしてしまうことは最大のソーシャルリスクといえるかもしれません。
この場合は媒体の運営者に申請を行うことで書き込みの削除が出来るパターンもあります。
風評被害にはまず専門家に相談し、毅然とした態度で臨みましょう。
ソーシャルリスクを未然に防ぐ対処法とは
さまざまな要因から顕在化するソーシャルリスクですが、未然防ぐ方法とはなんでしょうか。
枝葉の対策は様々ですが根本の対策は下記に大別されます。
- ソーシャルリスクの火種を発生させない体制づくりと教育
- ソーシャルリスクの火種をいち早く察知する仕組みづくり
それぞれ詳しく見ていきましょう。
従業員向けのSNSリテラシー教育
従業員のSNS利用によるソーシャルリスクを未然に防ぐにはまずは従業員向けの教育が必要不可欠です。
社用の端末ならある程度のコントロールが可能ですが、個人利用となると各々のモラルに任せるしかありません。
若手には学生気分の延長で使うと痛い目を見る上に社会的な制裁を受けるかもしれないこと、ベテラン層にはひとつひとつの発信が相手に届いてしまうこと、それによって相手が傷つき自分に返ってくる可能性があることを啓蒙する必要があります。
このような研修や教育は普段から企業の風評などに触れている専門業者に任せるのがおすすめです。ニュースにはなっていないような事例などを交えてくれるので活きた知識になることが多いのが特徴です。
SNSガイドラインの策定
次に必要な対策はSNSガイドラインの策定です。
対内だけでなく対外に策定したこととその内容を発信することで、SNS炎上が発生した際も世間へのイメージアップを訴求することが可能でソーシャルリスクを抑えられる可能性もあります。その際は弁護士や専門家の監修を受けているガイドラインを導入するのがおすすめです。
ただし単に策定するだけでなく、前述の従業員向けのSNSリテラシー教育内で周知徹底すると良いでしょう。
WEBモニタリングの実施
最後にWEBモニタリングの実施です。
いち早くソーシャルリスクの火種を察知し迅速な対応の準備を整えるのに必要不可欠です。
毎日SNSを担当者が確認するのは非常に大変な作業なので専用のツールを導入するか、WEBモニタリングを専門で行っている業者に依頼することをおすすめします。
また導入初期は有事の際の初期対応コンサルティングを合わせて受けるとノウハウが蓄積にもつながり有効的です。
実際にソーシャルリスクが発生した際にはどうすべきか
どれだけ対策を行ってもSNS炎上やソーシャルリスクは発生してしまうものです。
その際はどういう対応をすべきなのでしょうか。
焦らず落ち着くことは当然ですが、SNS世論は独特の理論で動くことが多く「法的に正しい」「社内ルール的に正しい」という倫理観で対応することは火に油を注ぐ結果になりがちです。
ここでは主な3つの対応を紹介します。
世論に対する対応
まずは世論に対する対応です。ソーシャルリスクに対するものなので発信相手もSNS世論に定めるべきです。
ただ謝るのが良いわけではなく、ソーシャルリスクが生じた発端によって対応を変えるのがベターです。特に賛否両論あるものはノイジーマイノリティの声によるものもあるためです。
◆自社に明らかに非があるもの、もしくはそう思われそうなもの(不祥事や内部告発など)◆
謝罪の意思表明、再発防止策など改善への動き、迅速な内部調査の実施の表明など
◆賛否両論を招いているもの(プロモーション施策の実施など)◆
発信の意図の説明、再発防止策など改善への動きなど
証拠の隠滅を図ったり真っ先に言い訳をしたりしてしまうのが最も悪い対応です。数千万、数億人いるSNS世論を相手にしていることを強く意識しましょう。
従業員に対する対応
次に従業員に対する対応です。ソーシャルリスクの発端が従業員からか否かで対応が分かれます。
◆ソーシャルリスクの発端が従業員の発信によるものの場合◆
内部調査の実施、事実関係の確認、厳正なる処分など
◆ソーシャルリスクの発端が従業員の発信によるものではない場合◆
事実関係の調査と社内への発信、改善への取り組みの継続的な実施など
更なる炎上を恐れてかん口令を敷いたり、証拠の隠滅を従業員に指示したりすることは絶対にしてはいけません。その内容が従業員によりSNSにアップされ、更なる炎上を招いてしまう危険性が非常に高いです。
デジタルタトゥーの除去(削除申請)
最後に削除申請などによるデジタルタトゥーの除去です。特に風評被害などの事実無根によるソーシャルリスクの発生は大本を消す必要があります。
この場合は法律のプロである弁護士に任せるのが最善の方法です。
刑事告訴を行う場合、刑法に反していることが必要であり、実務上の対応も踏まえて警察への相談が通るかどうかを判断する必要があります。そのため、告訴を受理して欲しい場合は予め弁護士に相談するのがおすすめです。裁判を起こすにあたってのサポートを含めてインターネット上のトラブルの解決実績が多い弁護士を頼るのが賢明と言えます。
まとめ|ソーシャルリスクには先手先手の対策を
ご紹介した通り現在の企業経営においてソーシャルリスクは決して見過ごせないものになっています。
ソーシャルリスクを顕在化させない、させたとしても被害を最小限に抑えるためには
- ソーシャルリスクを未然に防ぐ体制の構築、教育の実施
- ソーシャルリスクが発生した際の対応ノウハウの蓄積、相談先の開拓
が必要になります。
風評対策の専門業者では技術的なアプローチで解決策を提示してくれることもあるので、弁護士と合わせて相談してみることをおすすめします。
大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。
企業の風評対策実績10年以上のプロフェッショナルが、炎上を知り、未然に防ぐための社員研修を代行致します。
その他にもネット上の投稿、口コミの監視など、炎上予防や風評対策のための様々なご提案が可能です。
清水 陽平