ネットの誹謗中傷を解決したい時、頼りになるのが弁護士です。誹謗中傷をしている人を特定したり、書き込みを削除したりしたい場合、弁護士にしか対応できないことがほとんどです。
しかしながら、弁護士に相談する機会は滅多にないため、手続きやかかるお金など、わからないことが多く不安に感じる人も少なくありません。
そこで、弁護士に誹謗中傷の解決を依頼した場合、どんな対処が可能なのか、費用や依頼の流れはどうなるのか、といった点について解説していきます。
弁護士が誹謗中傷の解決のためにできること
ネットの誹謗中傷について弁護士に相談した際、対処は主に次の3つです。
- 誹謗中傷にあたる書き込みの削除請求
- 誹謗中傷の書き込みをした人の特定
- 損害賠償の請求・刑事告訴
それぞれ詳しく説明していきます。
誹謗中傷にあたる書き込みの削除請求
基本的にネットに書き込まれた誹謗中傷は、こちらから行動を起こさない限り削除されることはありません。誹謗中傷を放置しておくと、検索エンジンを使った際の検索結果に表示されて様々な人の目に触れたり、画面のキャプチャーを撮られるなどして、拡散されたりする恐れがあります。
そのため、誹謗中傷が書き込まれているのを発見したら、放置せず、迅速に削除のための行動を起こすことが重要です。
ネット掲示板などの場合、誹謗中傷にあたる書き込みの削除を依頼するために運営元に連絡し、個人で対処できる場合もあります。しかし、サイトによっては連絡先が全く分からなかったり、削除の依頼をしても対応してもらえない場合があります。
このような場合、弁護士に依頼すれば削除要請の代行やサイトの調査をしてもらうことが可能です。法的な根拠に基づき削除を要請してくれるため、個人で対応するよりも削除される可能性がぐっと高まります。
また、サイトの性質によっては削除請求をすることで逆に被害が拡大してしまうこともあります。弁護士に相談していれば、そのような場合はあえて削除請求をしないで、他の対処方をとる、といった提案を受けることも可能です。
書き込みをした人の特定
ネットの書き込みは匿名でされることがほとんどですが、発信者がわからない場合損害賠償の請求をすることができませんし、刑事告訴もなかなか受け付けてくれません。そこで、まずは書き込みをした人が誰かを特定する必要があります。
弁護士に依頼した場合、「発信者情報開示請求」という手続きを行うことで、誹謗中傷の書き込みをした人を突き止めることが可能です。
ただし、通信記録が保存されるのは3~6か月ほどなので、書き込みがされてから時間が立ちすぎていると、発信者の特定ができなくなってしまいます。損害賠償請求や刑事告訴を検討する場合は、早めに弁護士に相談することが大切です。
損害賠償の請求・刑事告訴
誹謗中傷の書き込みをしていた人を特定できた場合、損害賠償請求や刑事告訴などの手段をとっていくことになるでしょう。
損害賠償請求を行うことで、誹謗中傷の書き込みによって被った損害の埋め合わせをさせることができます。慰謝料の他、発信者の特定のためにかかった調査費用や弁護士費用も損害と見なされます。どれくらいの金額になるかはケースバイケースですが、少なくとも数十万円、多い場合は100万円を越えることも。
刑事告訴は、捜査機関に対して犯罪があったことを申し出て、犯人の処罰を求める行為です。検察が裁判を行うかどうか(起訴するかどうか)を判断し、裁判で有罪になった場合は、書き込みをした人に懲役や罰金が科される可能性があります。有罪となれば前科がつきますし、不起訴になった場合でも前歴(捜査機関に逮捕された記録)が残ります。
ただし、すべての誹謗中傷被害においてこのような手続きが取れるわけではありませんので、どのような対処が適当か、弁護士に相談しアドバイスを受けるようにしましょう。
弁護士が対応できない誹謗中傷の解決方法
弁護士に相談しても、誹謗中傷が削除できなかったり、法的に問題がないため対処できないと判断されたりする場合があります。
また、誹謗中傷を書き込んでいる相手によっては、削除請求や法的な手段をとることで火に油を注いでしまう可能性も。さらに書き込みがエスカレートしたり、騒ぎが大きくなったりすれば、SNSやまとめサイトなどに掲載され、拡散される恐れがあります。
このような事態を避けたい場合、誹謗中傷対策を行っている企業に依頼するのも解決方法のひとつです。弁護士とは違ったアプローチで、誹謗中傷の被害を抑える手立てを講じることができます。
誹謗中傷の解決を弁護士に依頼した場合の費用
誹謗中傷の解決を依頼する際の費用は、法律事務所によって異なります。今回はネットの誹謗中傷問題を数多く取り扱う、法律事務所アルシエンを例にご紹介します。
削除請求:送信防止措置依頼 着手金3万円~(税別)、報酬金5万円~(税別) 削除請求:仮処分 着手金25万円~(税別) 発信者情報開示請求 着手金25万円(税別)~/仮処分1件 損害賠償請求 着手金20万円~(税別)、報酬金別途 刑事告訴 着手金20万円~(税別)、報酬金20万円~(税別)
弁護士事務所や誹謗中傷の状況によって着手金や報奨金の額は前後しますが、目安として覚えておきましょう。
弁護士費用の捻出が難しい場合
誹謗中傷の解決を弁護士に依頼したいけど費用が払えない、という時は、法テラスの利用がおすすめです。
条件を満たしていれば、法テラスが着手金や報奨金などの、弁護士に支払う費用を立て替えてくれます。立て替えてもらった費用は分割で法テラスに返済する必要がありますが、一括でお金を用意する必要がなくなるため、費用の捻出がネックになっている方には非常に役立つ制度です。
ただし、弁護士費用を立て替える制度を利用する場合、依頼する弁護士が法テラスと契約をしていることを前提に、次の3つの条件を満たしている必要があります。
- 収入等が一定額以下
- 勝訴の見込みがないとは言えない
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
かみ砕いて言えば、弁護士費用を自分で支払うのが難しい人に限って、勝訴の可能性があり、さらに報復や宣伝のための訴えでない場合は費用を立て替えます、という決まりです。
収入等に関する具体的な要件は、収入要件(賞与を含む手取り月収額)と資産要件(不動産や有価証券などの現金でない資産)の2項目に分かれます。
要件を満たしておらず、弁護士費用の立て替え制度を利用できない場合でも、サポートダイヤルによる相談やメールでの問い合わせは、無料で利用可能です。法制度や相談できる機関、団体について紹介を受けることもできるので、いきなり法律事務所に問い合わせるのが不安な方はぜひ利用してみてください。
収入要件
収入要件は、法テラスの利用を申込む人と、その配偶者の手取り月収額(賞与を含む)についての要件です。弁護士費用の立て替え制度を利用する際は、収入がこの要件を下回っていいなければなりません。
配偶者でなくても同居している家族に収入があれば、家計に組み込まれている時に限り申込者の収入に合算されます。また、申込者が家賃や住宅ローンを支払っている場合は、一定の額を手取り月収の基準額に加算することが可能です。
収入要件は「生活保護の基準に定める一級地」(生活保護の基準額の高い大都市部)とその他の地域で基準額が異なります。まず、生活保護一級地の収入要件は次の通りです。該当する自治体の詳細は、法テラスの生活保護基準に定める一級地をご参照ください。
世帯人数 | 手取り月収額の基準 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に手取り月収の基準額できる限度額 |
1人 | 200,200円以下 | 53,000円以下 |
2人 | 276,100円以下 | 68,000円以下 |
3人 | 299,200円以下 | 85,000円以下 |
4人 | 328,900円以下 | 92,000円以下 |
次に、生活保護の基準に定める一級地以外の収入要件です。
世帯人数 | 手取り月収額の基準 | 家賃又は住宅ローンを負担している場合に手取り月収の基準額できる限度額 |
1人 | 182,000円以下 | 41,000円以下 |
2人 | 251,000円以下 | 53,000円以下 |
3人 | 272,000円以下 | 66,000円以下 |
4人 | 299,000円以下 | 71,000円以下 |
資産要件
資産要件とは、法テラスの利用を申し込む人や、その配偶者が持っている不動産や株券などの有価証券、現金、預貯金の合計について適用される要件です。
法テラスで弁護士費用を立て替えてもらうためには、不動産や有価証券などの資産の時価と、現金、預貯金の合計が次の基準を満たしていなければなりません。
なお、医療費や教育費などの将来的な出費がある場合は、相当する額が控除されます。
世帯人数 | 資産合計額の基準 |
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人以上 | 300万円以下 |
弁護士に相談する前に知っておきたいポイント
実際に弁護士に相談する際、どういった流れで契約が進むのか、どのような弁護士に依頼するのがいいのかなど、事前に知っておきたい知識をご紹介します。
お問い合わせから契約までの流れ
誹謗中傷の解決を弁護士に依頼したい場合、大まかな流れは次のようになります。
1.お問い合わせ
まずは法律事務所に電話かメールで連絡をし、相談日時を設定します。
2.弁護士との相談
法律事務所に訪問し、弁護士に誹謗中傷の経緯や状況などを説明します。
3.弁護士からのアドバイス
弁護士から削除請求の見通しや解決のためのアドバイスを受けます。複数の提案がある場合は、それぞれメリットやデメリットを確認しましょう。
4.見積り
着手金や報酬金などの弁護士費用の見積りが提示されます。
5.契約
弁護士の提案や見積り内容に納得できたら契約となり、正式に弁護士に誹謗中傷の解決を依頼したことになります。もちろん相談当日に契約する必要はありません。一度持ち帰って検討することも可能です。
なお、法律相談(法的な権利や義務についての相談)には別途料金がかかる法律事務所もあるので、事前に料金体系を確認しておきましょう。
相談に行ったその日に契約しなければならない、ということはありませんので、複数の法律事務所で見積りを出してもらい、提案内容や価格を比較した上で契約することもできます。
弁護士に誹謗中傷の対処を依頼する時の注意点
弁護士は誹謗中傷の解決において非常に頼れる存在ですが、全ての弁護士がWebの仕組みやネットの誹謗中傷問題に精通してるわけではありません。事前に法律事務所の公式サイトをチェックして、ネットの誹謗中傷問題に当たった実績があるかどうかチェックしておきましょう。
公式サイトにネットの誹謗中傷の削除請求、情報開示請求などについての実績や費用の記載がある法律事務所に相談するのが望ましいです。
まとめ|誹謗中傷の削除や賠償請求は早めに弁護士へ相談しよう
確実に書き込みを削除したい時や法的な手続きを検討している時、最も頼りになるのは弁護士です。
ただし、損害賠償請求などの手続きをする場合、誹謗中傷した人を特定するために必要な通信記録が保存されている間に手を打たなければなりません。あまりに時間が経ってしまうと、いくら弁護士に依頼しても損害賠償請求や刑事告訴をすることが難しくなってしまいます。
また、時間が経って色々な場所に誹謗中傷が拡散されてしまえば、解決まで余計に時間や費用がかかることになりかねません。
そのような事態を防ぐためにも、ネットの誹謗中傷は早めに弁護士に相談しましょう。弁護士が対応できないケースは、誹謗中傷対策を行っている業者に依頼するのをおすすめします。
ネットの誹謗中傷、風評対策のプロがお悩みを伺います。
風評サイトやサジェストのお悩みのほか、SNSや口コミサイトの監視など、幅広くご対応可能です。
清水 陽平