ネット炎上予防

企業SNSの運用ルール策定方法と参考にすべき事例とは

企業SNSの運用ルール1

新年度になって新たに企業SNSの運用を始めた…。そんな担当者も多いのではないでしょうか。

ご存知の通り企業にとってTwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを用いたSNSマーケティングは、ユーザーと距離が近いコミュニケーションが可能で企業のブランディングや認知拡大などさまざまな効果が期待できます。

しかし、ただ始めるだけではそのような効果を発揮することはなく、取り組みそのものが無駄になってしまう可能性があります。また昨今の企業SNS運用は炎上騒動と隣り合わせであり、綿密な準備が必要不可欠となっています。

ここでは企業SNSを効果的に運用するにはどのようなルールを作る必要があるのか、トラブルや炎上を最小限に抑えるにはどのようなポリシーを設定する必要があるのかを解説します。

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企業SNSの運用ルールの必要性

企業SNSの運用ルール2先述の通りSNSは手軽に始めることが出来ますが、しっかりとした成果を出すためには事前準備が大切です。準備をすることで投稿のハードルを低くすることが出来ますし、その後効果測定をして改善を行うことも可能です。

運用ルールを定めることは具体的には下記の3つのメリットにあります。

投稿の質を担保することが出来る

企業SNSを運用する際、ルールがないと運用担当者の独断と偏見で投稿やコメント返しなどが行われてしまう可能性があります。また複数人で運用をする際は担当者によって投稿のクオリティが変動してしまう恐れもあります。

投稿のトーンマナー、写真や動画の撮影ルール、投稿回数や頻度などを定めることで一定の品質を担保することができます。

運用の属人化を防ぐことが出来る

投稿の質と一部重複しますが、運用が属人化することは大きな問題につながりやすい傾向にあります。

ルールのない属人的な運用は、継続性のなさやトラブルに対処しきれない、クオリティのブレなどのリスクを抱えることになります。

誰が担当者になっても継続的に運用を実現できるルールの策定が望ましいです。

トラブルを最小限に抑え、企業の利益や信用を守ることが出来る

企業SNSの運用ルールを定める一番の理由はトラブルを最小限に抑えることに尽きると思います。

ユーザーと近い距離でコミュニケーションを行うことが出来るSNSは、企業にとって「自社のファンを作ることができる」「ユーザーとの接点を増やし認知拡大ができる」などといったメリットを享受することができます。

しかし、接点が多いあるいは距離が近いからこそ、トラブルや炎上のリスクを孕んでいるのは間違いありません。

SNSで発信している情報は自社ユーザーやフォロワー以外の不特定多数に向けて発信されています。

意図しない範囲や形で拡散され炎上に繋がる可能性も十分あるのでしっかりとした運用ルールを定め、トラブルを最小限に抑える仕組みづくりをすることが重要です。

企業SNSの運用ルールの策定方法

企業SNSの運用ルール3実際に企業SNSの運用ルールを策定するにはどのようにすればよいのでしょうか。

下記に一例を載せますので是非参考にしてみてください。

①目的を決める

まずは「なぜ」企業SNSを運用するかを決めていきましょう。なんとなく流行りだからやってみたなどの動機ならば運用そのものを見送る検討をした方がいいでしょう。

企業SNS運用目的の例
  • 企業、サービスの認知拡大
  • 企業、サービスのファンを獲得
  • ユーザーとのコミュニケーションの場の形成
  • 店舗やECサイトへの集客のための導線づくり

など

②運用するSNSを決める

「どこで」SNSを運用するかはとても重要です。目的に応じたSNSを決めましょう。プラットフォームによって特徴が異なるので目的に応じたものを選択するといいでしょう。

SNSの特徴

③ターゲットを決める

プラットフォーム選びにも関わる問題ですが「誰に」届けるのかはもっとも重要な要素の一つです。

出来るだけ細かくペルソナを設定することでコンテンツの作成にも活きてくることになります。

ペルソナ設定はできるだけ細かいことが望ましいですが、最初は自社のメインの顧客層などを可視化していくといいでしょう。また下記の項目に当てはめていくのもおすすめです。

ペルソナ設定の項目例
  • 年齢
  • 性別
  • 住んでいるところ
  • 職業(内容、役職)
  • 収入、貯蓄状況
  • 最終学歴
  • ライフスタイル(起床・就寝時間、通勤時間、勤務時間、休日の過ごし方)
  • 性格、価値観
  • 人間関係、家族構成
  • 趣味、興味
  • 不満、悩み
  • インターネット利用状況、利用時間
  • 所持するデバイスの種類

④訴求したいコンテンツを決める

次に「何を」発信するか決めましょう。ターゲットと順番が前後することや最初の目的設定に組み込むこともあると思います。

コンテンツリストを作成してどのようなコンテンツを作成するか検討したうえで、カテゴリ分けしてネタ帳のようにしておくのがおすすめです。これをあらかじめ作っておくと、ネタ切れによって投稿が止まってしまうことを避けられます。

少なくとも3か月程度の基礎コンテンツを用意しておけば、導入の一文を少し変化させるだけで使いまわしも可能です。最低限、ここに書かれているネタを投稿すれば放置状態にはならないと思えるので、運用のプレッシャーを軽減することも出来ます。

定期的にネタの更新や入れ替えもしていきましょう。

⑤投稿頻度を決める

投稿のルールの最後は「いつ」投稿を行うかを決めることです。

運用の体制が整っているのであれば、毎日投稿をする方が当然好ましいです。しかし、無理をして運用担当者が疲弊してしまうと成果が出る前にとん挫するリスクも発生してしまいます。

なので、リソースを踏まえて現実的な投稿スケジュールを検討する必要があります。

例えば、次のような基本的な投稿スケジュールを策定しておくと運用が楽になるでしょう。

投稿頻度の例

⑥ユーザー対応の範囲を決める

最後にユーザーとどのようにコミュニケーションをとるかを決めましょう。

SNSは本来コミュニケーションツールであり、発信だけの一方通行だけの運用ルールを決めても効果がありません。

コメントやシェア・リツイートされた際にどのような反応を取るかをあらかじめ決めておきましょう。

実際はケースバイケースにより対応を考える必要があることが多いですが、大まかな方針を策定しておくだけで判断の指針になり、スムーズなやり取りが可能になります。

また、クレームが寄せられたとしたらどうするかも事前に決めておくことも重要です。迅速な対応がポイントとなるので初動を速めることが重要です。

企業SNSの運用ルールは周知と教育が重要

企業SNSの運用ルール4せっかく決めた運用ルールも周知徹底されなければ意味がありません。

ここでは「関係者への書面の交付」と「関係者への研修の実施」をおすすめします。

関係者への書面の交付

策定した企業SNSの運用ルールを書面化し従業員に署名と捺印を促しましょう。

このような誓約書は法的な拘束力としては弱いものの、社内規定のように運用担当者への啓発と意識の向上を目的としています。

運用ルールをまず周知し書面にすることで、ルールの統一を図りSNSトラブルへの抑止力とします。

関係者への研修の実施

書面の交付と合わせて研修も実施すると効果を最大限化することが出来ます。

企業のSNS担当者、いわゆる「中の人」を対象にしたSNSならではのコミュニケーションを学ぶ機会は通常業務ではあまりないことです。質の高いコンテンツを提供し、ユーザーと適切な関係を築くために運用ルールに基づいたSNS研修は必須と言えるでしょう。

研修の実施は自社リソースでも問題ありませんが、炎上やSNSリスクリテラシーに精通した専門家に依頼するのがより効果的でしょう。

参考になるSNS運用ルールとポリシー

企業SNSの運用ルール5最後にSNS運用ルールやポリシーを公開している企業を紹介します。

これから企業SNSの運用ルールやポリシーを策定してようとしている方は参考にしてみてください。

株式会社サンリオ

SNS運用ルールサンリオ出典:株式会社サンリオ『ソーシャルメディアポリシー』

キャラクターにあわせて数多くのSNSアカウントを持つ株式会社サンリオは「ソーシャルメディアポリシー」を公開しています。

サンリオの方針の根底にあるのは世界中の人々がソーシャルメディアを通じて支え合い、助け合って生きていけるようにメッセージを発信するという企業理念にも表れています。

企業理念の段階で公式アカウントからユーザーへ一方通行のコミュニケーションではなく、ユーザー同士をも巻き込んだコミュニケーションがイメージされているのは特筆すべき点です。

また削除事由に該当するユーザーコンテンツを「投稿しないことをユーザーに期待」するとして、削除や修正の条件を提示しています。

SNS運用ルールサンリオ
出典:株式会社サンリオ『ソーシャルメディアポリシー』

公式アカウントはSNSの種類ごとに一覧化。どのアカウントがこのポリシーに準じて運用されているのかすぐ確認できるようになっています。

シャープ株式会社

SNS運用ルールシャープ
出典:シャープ株式会社『シャープ 公式Twitterアカウント コミュニティ・ガイドライン』

シャープ株式会社のガイドラインの特徴は「本ガイドラインの内容にご同意いただいた上で本アカウントをご利用賜りますようお願い致します」と記載されているように、ユーザーに向けた免責事項の説明が主になっている点です。

例えばコメントのすべてに返信するものではない、DMの問合せには対応しない、フォロー・リフォローしない場合もあるなど「公式Twitterアカウントが実施できないこと・しないこと」が明確になっています。

また、ユーザーに対して禁止事項を定義し、該当する場合はブロックやフォロー解除を行うとしています。

特にユーザーとの距離が近く、トラブルや炎上にTwitterの特性に合わせ、リスクを最大限回避するためにあえてユーザー向けに免責や禁止事項を説明する手法を採用しています。

千葉県千葉市

SNS運用ルール千葉市
出典:千葉県千葉市『千葉市職員のソーシャルメディアの利用に関するガイドライン』

行政組織である千葉県千葉市もSNSに関するガイドラインを公開しています。

ここでは千葉市職員がSNSを利用する際の基本的な考え方や留意点を明らかにするガイドライを開示しています。

SNS利用にあたっての基本原則やSNSを利用して千葉市行政に関する情報を発信する際の留意事項が記載されています。

まとめ|運用ルールをしっかり決めて効果的なSNS運用を

企業SNSの運用ルール6企業SNSの運用ルールやポリシーはSNSを通じた企業のブランディングやマーケティングの幅を広げる助けになることは間違いありません。

また、策定して終わりにするのではなく周知と教育を徹底して継続的な取り組みにすることも大切です。

「5W1H」を意識した運用ルールを設定し効果的な企業SNSの運用を目指しましょう。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。