企業によって必要な新人研修は様々ですが、コンプライアンス研修はどの業界にとっても必要不可欠となっています。
中堅・ベテラン社員はもちろんですが、新社会人・新入社員にとってはより重要性が高いといえるでしょう。
また、彼らにとっての当たり前や常識が、先輩や上司の価値観と異なることもしばしばみられます。
そのような世代間のギャップを埋めつつ、新入社員にどのようにコンプライアンスを学ばせるべきか解説していきます。
コンプライアンス(法令遵守)について
まずは、コンプライアンスの定義について確認しましょう。
コンプライアンスとは、直訳で「法令遵守」を指し、企業経営の監視システムであるコーポレートガバナンスの基本原理の一つにもなっています。
また、コンプライアンスは法令に限った話ではなく、一般的な社会的規範や企業倫理も定義に含まれます。
企業はこのビジネスコンプライアンスに基づいて企業活動を行うことが求められているのです。
近年は、多種多様なメディアやインターネット普及の影響もあり、不祥事やコンプライアンス違反が明るみになりやすいことが社会問題にもなっています。
新入社員にコンプライアンス研修を実施する目的とは?
社会人経験ゼロの新入社員に対しては、「コンプライアンスとは何か?」という出発点から、研修による効果をより高めるために、実施目的を明確にすることが大切です。
次の二つは大前提として、コンプライアンス研修の冒頭でも受講者にしっかりと認知させましょう。
社会人としての心構えを身に付ける
社会人として経験が浅い状態ですと、基礎的なビジネスマナーもわからず、環境の違いによるギャップや業務が円滑に進まないなど様々な問題が発生します。
学生時代やアルバイトとの違いを理解させ、社会人としての常識的な行動や求められる倫理観を正しく指導する必要があります。
社会人としての自覚を持たせることが、コンプライアンス遵守の考え方の大切な基盤となるからです。
会社のルールを学び、法令違反などによるリスクを防ぐ
社内規程は企業によっても様々ですが、会社の守秘義務やトラブルが発生した際の対応などについては、文章で目を通しただけでは理解させることが中々難しいです。
また、重大なコンプライアンス違反が起きた場合に、個人の問題だけで済まず、企業側も多大な損失や責任を被る事例も多数あります。
ルールを守ることの重要性を伝える=社員としての自覚を促すことがリスクマネジメントにもつながるのです。
新入社員にありがちなコンプライアンス違反の例
社会経験が未熟ですと規範意識も甘くなりがちです。
些細なきっかけやお酒による気の緩み、身内間だから外部に漏れないだろうという誤った自己判断など、無自覚な行動によって最悪のケースに発展するリスクは常に考えられます。
コンプライアンス違反をわかりやすく理解させるためには、具体事例を用いて説明することが大切です。
具体例①:友だちに社外秘の情報を話す(不正競争防止法違反)
お酒の場で発売前の自社新商品の情報を友だちに話し、その友だちが競合他社に所属していたため、うっかり情報を社内で話してしまい、それが発端で競合が先に同様の商品をリリースしたことで問題となった。
不正競争防止法は、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的」とする法律です(法1条)
具体例②:顧客の個人情報を流出させる(個人情報保護法違反)
職場に有名人が来客した際に、SNSなどでその事実を投稿し、個人情報を流出させてしまった。
更に、ネット上でその問題点を批判され、拡散・炎上し、収拾が付かなくなってしまった。
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱う場合、あらかじめ本人の同意を得なければなりません。
なお、同意を得るために個人情報を利用すること(メールの送信や電話をかけること等)は、当初特定した利用目的として記載されていない場合でも、目的外利用には該当しません。(法16条)
具体例③:ネット上の写真や文章をそのままコピペ(著作権・特許権の侵害)
サービス案内資料作成時に、ネット上で検索した画像やテキストなどをそのままの形で使用してしまった。それを見た第三者から著作権に関する指摘を受けた。
著作権は著作物を保護するための権利です。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。
引用:日本弁理士会|著作権とは
必ず盛り込みたい5つの項目
新入社員を対象にしたコンプライアンス研修を行う際に、実施すべき項目を紹介します。
もちろん、自社のサービス内容や業界・部署などによっても学ぶべき内容は異なりますが、共通項目として必要なコンプライアンスの要素は必ず盛り込みましょう。
SNSリスクについて
近年では、特にSNSを中心としたコンプライアンス違反が取り沙汰されるようになりました。
個人のスマートフォン普及によるSNS利用率の急増によって、情報漏洩に対する危機意識の低下、拡散による炎上が起きやすい環境の常態化などが要因とされています。
一番身近なリスクであり、影響力も強いSNSは、必ずコンプライアンス研修に加えたい項目です。
また、これまではコンプライアンス研修の一端としての扱いが多かったSNSですが、最近ではSNSリスクを重要視し、そこにフォーカスした研修を実施する企業も増えてきています。
コンプライアンスの一環としてSNS研修を掘り下げた記事がありますので、こちらをご覧下さい。
社会人としてのビジネスマナー
挨拶や敬語、名刺交換などを始めとする、社会人の基本的なマナーは押さえておきましょう。
その他に、業界独特の文化や社内独自のルールなどもあれば、あわせて指導するとよいでしょう。
ビジネスマナーは、一度の座学だけで身に付くものではありませんので、後から反復学習ができるテキスト集や参考書籍なども用意しておくと良いです。
こちらは、新入社員向けのテキストとして、コンプライアンスの重要な項目10個がイラストや図でわかりやすく解説されています。
画像引用:コンプライアンス、全力支援 | ハイテクノロジーコミュニケーションズ(HTC)
情報セキュリティ・情報漏洩
ハードやシステム面のセキュリティ強化だけでなく、使う側の意識を高めることも重要です。
また、日進月歩、変化を続けるインターネット・情報社会では常にアップデートした情報を備えておく必要があります。
ハラスメントについて
ハラスメントの種類も多様化していますが、代表的なものとして、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント(いわゆる、パワハラ・セクハラ)というものがあります。
主に、上司・部下間、男性社員・女性社員間というケースが多く、本人の意識や受け手側の捉え方によっても問題の観点が異なります。
そのため、ハラスメントの定義に対する基礎的な理解やハラスメントを起こさない環境づくり、注意点、問題が起きた際の対策について多面的に学ぶ必要があります。
最近では、セクハラやパワハラ以外にも次のようなものがハラスメントとして考えられるようなっています。
テレワーク中のコンプライアンス
コロナ禍による影響で、テレワークが浸透した企業も多くなってきました。
また、テレワークに移行していない企業でも、リモート会議や商談を実施する企業は非常に増えています。
そうした中で、例えば画面内に社外秘が移り込んでしまう、見せてはいけない画面を誤って共有してしまった、など不注意や操作ミスで情報漏洩をしてしまわぬように研修で注意喚起することも大切です。
コンプライアンス研修の効果を最大化するためには?
研修カリキュラムがまとまり、いざコンプライアンス研修を実施するとなった際には「研修内容の理解と定着」を受講者に意識させましょう。
そのために重要なポイントをまとめましたので参考にしてください。
研修の目的とゴールをはっきり示す
前述でも解説した研修を行う目的と、研修後に期待する姿を明確にし、研修時に必ず受講者に明示しましょう。
新入社員にも当事者意識を持たせる
「新卒・新入社員だから、ミスや未熟さが許される」という誤った認識を持たれないように、必ず自分ごとに置き換えさせ、いち社員としての当事者意識を持たせましょう。
コンプライアンス違反の背景や原因を具体的に説明する
なぜコンプライアンス違反を犯してしまったのか、答えを示すだけでなく、しっかりと個々人で意見を持たせることが重要となります。
その際には、共感性の高い事例ベースのケーススタディやグループワークを行うことが効果的です。
コンプライアンス研修実施にあたって、他にも実施ポイントをまとめた記事があるので参考にして下さい。
まとめ|新入社員にはコンプライアンス研修の目的とゴールを明確に示そう!
新入社員にコンプライアンス研修を行う際には、まずはコンプライアンスの重要性や研修を実施する目的、研修を通して学ばせたいことを確認しましょう。
そして、実際に研修を行う際には、それらをしっかりと受講者に示し、反復させることが重要です。
弊社でも新入社員の方向けの研修を実施しておりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
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清水 陽平