デジタルリスクはインターネットが普及した現代において、業種にかかわらず全ての企業にとって身近な問題になったと言っても過言ではありません。
実際、2023年現在でも既にSNSを通じた炎上問題が多発している状況の中、企業はどのようにデジタルリスクと向き合っていくべきなのでしょうか。
本記事では、「デジタルリスク」の基本的な知識とその影響、とくにSNSに関連したデジタルリスクの軽減方法について解説します。
「デジタルリスク」とは?
「デジタルリスク」とは、業務のデジタル化によって発生するビジネスリスクのことを言います。
例えば、「企業が持っている社外秘の情報を紙の管理からデジタルの管理に変えた場合」で考えてみましょう。管理を紙(アナログ)からデジタルに変えたことにより、外部からの攻撃(ハッキング、ウイルスなど)やアクセス権限を持つ内部の情報持ち出しによる情報漏洩のリスク(=デジタルリスク)の発生が考えられます。
身近な例で言えば、企業が宣伝のために利用しているSNSで運用担当者の不用意な発言や企業の不適切なPRが発見されて拡散、大炎上するという事例や、飲食店での不適切行為がSNSで取り上げられて拡散、炎上するといった事例も「デジタルリスク」が関係した問題のひとつです。
現在ではデジタルリスクと言えば、情報漏洩などよりも「企業の不祥事がSNSを介して情報拡散される」といった炎上の方がメジャーとなってきており、今や企業にとって「デジタルリスク」と「SNS」は切っても切り離せない状態であると言えます。
デジタルリスクが企業に及ぼす影響とSNSリスクマネジメントの必要性
SNSの普及により、ひとたびデジタルリスクが顕在化すると、その情報が瞬く間に拡散されてしまうようになりました。
誰でも気軽に情報を発信することが可能であるだけではなく、基本的に投稿は匿名で行われるため、情報の真偽がしっかり検証されないまま情報だけが一人歩きしてしまう場合も多くあります。
顕在化したデジタルリスクがSNSによって拡散されることにより、企業が受ける影響とはどのようなものでしょうか。
金銭的な損害
1つ目に言えるのが、「金銭的な損害」です。これは多くの企業が一番最初に心配するデジタルリスクに関する心配事ではないかと思います。
BtoCの企業については状況がイメージしやすく、SNSなどの炎上による不買運動や顧客離れといった売上の減少や、飲食店であれば一斉消毒など設備面を整えるための資金繰り、炎上を鎮火するための社内リソースなどが考えられます。
BtoBの企業であっても、例えばハッキングなどによって取引先の顧客情報などが流出した場合、巨額の損害賠償を請求される場合もあります。
企業の社会的信用が落ちる
2つ目に言えることは「企業の社会的信用が落ちる」、つまりブランド力の低下という点です。直接的に消費者と関わり合いのあるBtoCの企業はイメージしやすいと思いますが、BtoBの企業にとっても決して「対岸の火事」とは言えない問題です。
なぜなら、ブランド力の低下は企業同士のやり取りや採用にも関わってくるためです。企業の社会的信用が低下した場合、取引先の企業からの信用も同じように離れていくおそれがあります。新しく入社したいという人も減り、有能な社員も離れていくかもしれません。
SNSは多くの人が利用しているため、自社の関係者も「一般人」として利用している可能性があります。その「一般人」の中に将来の顧客や従業員がいるかもしれないという点をBtoB、BtoCであるにかかわらず、忘れてはいけないのです。
デジタルリスクマネジメントの方法
リスクマネジメントの方法は、大きく「回避」「軽減」「移転」「保有」という4つの観点から考えることができます。
「回避」=リスクそのものを取り除くこと
「軽減」=リスクが顕在化した際の対策を準備しておくこと
「移転」=リスクを社外組織に共有すること
「保有」=特に対策を行わず、リスクのある状態を受け入れること
以上で挙げたデジタルリスクのマネジメント方法のうち、書類のペーパーレス化やSNSでの宣伝、個人のSNSアカウントの所有が当たり前になった現代では、完全な「回避」は中々難しいところがあると言えます。
ちなみに、デジタルリスクマネジメントにおける「保有」とは、リスクが顕在化してしまった場合の対応を自社で行える場合を言いますが、中小企業などでリスクマネジメントに割く予算がないために「(対策はしたいけれど)何も対策していない」……つまり、「やむを得ず受け入れている」という状態も当てはまります。
企業のデジタルリスクマネジメント方法のメインは「軽減」と「移転」になります。具体的には、「SNSの監視」「SNSマニュアルやガイドラインの策定」「デジタルリスクリテラシー研修の実施」などが挙げられます。
SNSの監視
デジタルリスクをマネジメントする方法として最も優先的に取り入れたいのが、各種SNSの監視です。
なぜなら、昨今の企業のネット炎上において、炎上の火種がどうであれほとんどの事例で「油」の役割を果たしてきたのが「SNS」であるためです。
普段からSNSの監視をしておくことにより、炎上の火種となり得る投稿を早期に発見でき、先回りして対策を行うことができます。
企業の大きさにかかわらず、効率よく監視を行うには「監視ツールを利用する」「外部に有人監視を委託する」といった2通りの方法があります。
監視ツールを利用する
【監視ツールを利用するメリット】
- 費用が安く、導入の敷居が低い
- 監視のために割く時間が短縮できる
- ひとつのツールで複数の箇所を監視できる
- リスクの高い投稿などを自動でお知らせしてくれるものもある
監視ツールの最大のメリットは、費用の安さ(導入の手軽さ)だと言えるでしょう。
「リスク回避のために監視の重要性は理解したが、対策の予算があまり貰えない」といった企業でも、お試し感覚で導入することができます。次に紹介する「有人監視」導入を検討する前の第一ステップとしてまず監視ツールを使ってみるといった企業もあるようです。
監視ツールは様々な企業が独自に開発し、提供しています。例えば、炎上が拡散されやすいTwitterをメインに動画サイトのYouTubeやTikTok、利用者の多いInstagramといった各種SNSに特化したツールや、GoogleやYahoo!の検索結果などSNS以外で多くの人の目に触れやすい場所まで監視できるツールなど、様々な種類があります。
監視ツールを導入する際には自社のニーズに合わせて、「監視できる場所(SNSなど)」「操作の手軽さ」「料金」をよく比較検討するようにしましょう。
外部の業者に有人監視を委託する
【有人監視を利用するメリット】
- 監視を行うために社内のリソースを割く必要がない
- プロが監視を行うためツールよりも正確性が高い
- ログインが必要なサイトなど、ツールで監視不可能な場所も対応できる
有人監視の最大の魅力は、監視のプロに丸投げできる点。社内に監視を行える人員がいなくても安心です。
監視ツールは基本的にログイン不要のSNSなどを対象としているものが多いのですが、有人監視であれば大手口コミサイトなどの「アカウントを作り、ログインを行わないと監視不可能なサービス」まで監視できる場合があります。(業者によりサービス内容は異なります)
デメリットとしては有人監視サービスは監視ツールに比べて高額になってしまう点が挙げられますが、それを踏まえても有人監視は「監視」の自由度が高く、企業によっては監視結果のレポートを提出している場合もあるため導入のメリットは大きいと言えます。
有人監視サービスも提供している業者によって監視できる範囲や頻度、損害保険の有無などの違いがあるため、こちらもサービス内容をよく比較検討するのが良いでしょう。
SNSマニュアルやガイドラインの策定
デジタルリスクの顕在化が企業の炎上に繋がった過去の事例は、その多くがSNSを介しての炎上だったと言っても過言ではありません。
しかし、現代において「炎上を防ぐために企業としてSNSを全く使わない」というリスクの回避方法は、あまり意味がないどころか「効果的な宣伝ツールをひとつ失う」ということにもなりかねません。
そこで、企業としてのSNSアカウントを運用するにあたり、必ず「SNS運用マニュアル」や「SNS運用ガイドライン」の策定をしておくことがおすすめです。企業の公式サイトに「ソーシャルメディアポリシー」とあわせて掲載している行政機関や自治体、企業も多数あります。
<ソーシャルメディアポリシーやガイドラインの一例>
【千葉市】
千葉市ソーシャルメディア活用ガイドライン
千葉市ソーシャルメディア活用指針
【デジタル庁】
公式ソーシャルメディア運用ポリシー
【資生堂】
ソーシャルメディアポリシー
SNS利用規約
各ページでは、実際に企業が運用しているアカウントのリストを明記しているものも多いですね。これは、SNSで度々起こる企業の「なりすまし」によるユーザーの混乱を防ぐという意図もあります。
デジタルリスクリテラシー研修の実施
企業で働いている従業員が広報目的で運用するSNSでの炎上事例も数多くあります。
企業や自治体などがPRをTwitterやInstagramで行ったところ、その投稿(PR内容)が「不適切」だと指摘され、炎上してしまったという事件を覚えているという方も多いでしょう。
そこで企業が従業員に対して行っておきたいのは、SNSの利用方法や、誤った使い方をしてしまった際のリスクを知ってもらうということ。「デジタルリスクリテラシー研修」の実施です。
デジタルリスクリテラシー研修を開催する方法と準備
デジタルリスクリテラシー研修を行う際には、
- 誰を対象にするのか
- どのような規模で行うのか
- 対象の社員にどのような知識を身に着けて欲しいのか
の3点を意識して構成を考えます。社内にデジタルリスクへの理解度の高い社員がいれば、その社員が講師となって自社開催するのも良いでしょう。どうしても社内で講師をできる人員がいない場合は、外部の研修も検討してみてください。
一例として、株式会社エルプランニングの「SNSリスクリテラシー研修」では、対象者(新人向け・管理職向け・SNS運用者向け等)や規模(人数・時間・予算等)、テーマ(リテラシー向上・コンプライアンス対策・炎上疑似体験)などを自由にカスタマイズし、オーダーメイドでのSNS研修を承っています。
オンラインでの開催もできますので、地方からの参加や数百人規模の研修にも対応しています。「SNS担当者が1人で研修を受け、後ほど自社社員に共有したい」など、打ち合わせの際にご相談ください。打ち合わせもオンラインで行う事が可能です。
まとめ|デジタルリスクは身近なもの!普段からの対策が大切
デジタルリスクは、今やどんな企業でも少なからず保有しているものだと言えます。
リスクが顕在化した場合、企業は自社の信頼を守るため、適切な対応を行い早期の解決を目指すことが大切です。
しかし、近年メジャーになってきているSNS関係の炎上は企業の予期せぬ場所で炎上が広がってしまう可能性も高いといえ、早期のうちに適切な対応を行うには「普段からの予防対策」が必然だと言えるでしょう。
まずは、社員のリテラシーを高めたりSNSの監視を行ったりするなど、できる所から対策を行っていくのがおすすめです。
大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。
企業の風評対策実績10年以上のプロフェッショナルが、炎上を知り、未然に防ぐための社員研修を代行致します。
その他にもネット上の投稿、口コミの監視など、炎上予防や風評対策のための様々なご提案が可能です。
清水 陽平