近年、SNSは企業のマーケティングやブランディングにおいて欠かせないツールとなっていますが、企業のSNS利用には多くのリスクがあります。
不適切な投稿や情報漏えいによる炎上など、SNS上のトラブルは企業の信用を一瞬で失う原因となり得るでしょう。
炎上内容はネットに残り、業績悪化や売上低下の一因になることや、企業の採用や顧客・取引先まで影響を及ぼす可能性があります。
上記のようなSNS上のリスクを抑えるため、SNSガイドラインの策定が必要です。
本記事では、SNSガイドラインの種類や必要性、ガイドラインの作成が炎上リスク対策になる理由について解説していきます。
SNSガイドラインとは?
SNSガイドラインは企業のSNS活用においての行動指針やルールを定めたものです。
SNSに関するガイドラインは、主に「社員のSNS利用におけるガイドライン」と「企業SNSアカウントの運用におけるガイドライン」の2つに分かれます。
また、上記のガイドラインも社内向けか社外向けかによって内容や目的が異なりますので、各ガイドラインの種類と概要について説明します。
SNSガイドラインの種類
SNSガイドラインとして主に4種類のガイドラインを紹介します。
①社員の個人SNSのガイドライン
対象 | 社内向け(社内マニュアル) |
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内容 | 社員が個人のSNSを使用する際の心構えや注意事項 発信内容の精査、トラブル発生時の対応など |
目的 | 社員が個人SNSを利用する際に、情報発信において責任が伴うことをガイドラインに記載し周知することで、未然にトラブルを予防できます。 |
②社員の個人SNSの外部向けガイドライン
対象 | 外部向け |
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内容 | 社員が個人のSNSを使用する際のガイドラインをHPなどに掲載するもの |
目的 | ガイドラインの外部への開示を行い、社員全員がガイドラインの内容を遵守してSNSを利用している事を外部にアピールできます。 |
③企業アカウント使用者の運用ガイドライン
対象 | 社内向け(社内マニュアル) |
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内容 | SNSの企業アカウント担当者が発信を行う際の心構えや注意事項 SNSでの返信対応や他者アカウントの交流についての対応方針 |
目的 | 社内の発信用アカウントの運用基準を定めることで、社内の運用体制を統一し炎上に対しての事前対策ができます。 |
④企業アカウントの行動ポリシー(ソーシャルメディアポリシー)
対象 | 外部向け |
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内容 | 企業アカウント担当者の行動マニュアルをHPなどに掲載するための内容 |
目的 | 運用基準を外部へ開示し基準の透明化を行うことで、トラブルの防止や企業アカウントの保護につながります。 |
SNSガイドラインの必要性
SNSの炎上は業種・業界や企業規模の大小を問わず、どの企業にも起こり得る可能性があります。
ここでは、「社員の個人用SNSガイドライン」や「企業のSNS運用ガイドライン」を策定する必要性について詳しく説明します。
社員の個人SNSガイドライン
SNS利用時のガイドラインを作成しルールを明文化することで、従業員のSNS利用における炎上リスクを抑えることができます。
特に、従業員が多く複数店舗や事業所を展開している会社などは、現場の教育のみでは社員教育を徹底することが難しいケースもありますので、ガイドラインを作成して周知する事が有効です。
また、SNSリスク対策の社内教育制度が整っていない場合、SNSのリスク防止に関する研修を実施するのも炎上リスク対策として有効です。
企業のSNS運用ガイドライン
企業のSNSアカウント利用においても、運用上のトラブルを防ぐためにガイドラインの作成が重要です。
特にSNSの使用率が高い企業や、企業の中に関連する複数SNSアカウントが存在する場合は、管理する難易度が高くなり炎上リスクも上がっていきます。
そのため、SNS運用ガイドラインを策定することで、企業としての指針やルールを統一し、炎上リスクを下げることが重要です。
また、SNS運用ガイドラインがあれば、仮にSNSの運用担当者が変わっても共通基準に従って情報を発信できるので、投稿のトーン&マナーを統一できることや、運用における業務の属人化を防ぐことができます。
SNSガイドライン作成時に入れ込む9項目
SNSガイドラインを作成する場合、最低限入れ込んでおきたい9項目を解説していきます。
1.個人情報とプライバシーの保護
SNS利用時には、自分や家族・友人・会社関係者などの個人情報やプライバシーを保護することが求められます。
具体的には、住所・電話番号・メールアドレスなど、個人を特定できる情報やその他プライバシー情報を含むものを発信しないことです。
2.機密事項や知的財産権の保護
社内の機密事項や特許権、著作権などの知的財産権を有するコンテンツなど、公開が制限されている情報はSNS上で発信しないよう保護する必要があります。
そのつもりがなくても「写し込み」によって保護されるべき情報が流出してしまうこともあるため、写り込みへの配慮を促すことも重要でしょう。
3.第三者の権利の尊重と保護
第三者の肖像権や氏名権を侵害しないように尊重することや、第三者へのなりすまし行為などがないように権利を保護する必要があります。
4.誹謗中傷の禁止
特定の人物や企業等を含め誹謗中傷することを禁止します。
差別用語や悪口、根拠のない嘘・噂を言わないことはもちろんのこと、宗教・歴史・政治などの事柄で物議を醸す内容の発信や誹謗中傷をすることは避けるべき事項です。
5.透明性の保障
SNSでの発信は透明性を保つため、情報源を明確にし誤った情報を発信しないように注意が必要です。
また、広告を配信する際、該当の配信が広告である旨を明記しないと、ステルスマーケティングとして景品表示法に違反する恐れがありますので、発信内容については細心の注意を払う必要があります。
6.非難を受ける可能性のある技術利用の制限
不正アクセスやスパム行為など非難を受ける可能性のある技術を利用しないよう制限し、他者の個人情報やプライバシーを侵害する技術は利用を避けるようにします。
7.自己責任の明確化
SNSの発信については自己責任を負うことを意識し、発信する内容については常に批判の対象となり得ることを理解して発信する必要があります。
8.第三者へ敬意を払う傾聴の態度
第三者の意見や考えを尊重し耳を傾ける姿勢が大切です。
異なる意見に対しても価値観の違いを受け入れ、建設的に意見を交わすよう心がけます。
9.デジタルツールとしての特質の理解
SNSは拡散性があり、炎上しても二度と取り消せないということを理解し情報発信については表現や内容に十分注意する必要があります。
各項目の詳細については下記記事で解説しています。
SNSにおいて企業が炎上するパターン
SNSで企業が炎上するパターンは多岐にわたります。
SNSガイドライン策定においては、SNS上で企業が炎上するパターンを把握し、その内容を加味したガイドラインを作成することで、炎上の事前対策ができるでしょう。
個人・企業のSNS運用で炎上しないためには、文章の表現方法に十分留意し発言することや、コンプライアンスを遵守した発信が求められます。
特にX(旧Twitter)は拡散性が高く、二次拡散・三次拡散と広がっていくので投稿時には十分注意が必要です。
近年でもSNS上で炎上する事例が増えていますので、「個人SNSにおける炎上」と「企業SNSにおける炎上」の2パターンについて解説していきます。
従業員の個人SNSにおける炎上と対策
従業員の個人SNSでの炎上は、雇用する企業が対応するケースも多く、場合によっては使用者責任に問われる場合もあります。
従業員の発信が炎上し雇用先の企業が影響を受けた場合、炎上後にSNSの利用ポリシーを見直すといったケースもありますが、炎上前にあらかじめ事前防止策を考えることが重要です。
ここでは、従業員の個人SNSにおける炎上事例と、考えられる対策について解説します。
①従業員の悪ふざけ
飲食店やコンビニで従業員による不適切な写真や動画の投稿が炎上するパターンです。
「バイトテロ」と呼ばれており、雇用した会社側がイメージダウンや売り上げ減少などの影響が生じる可能性があります。
具体的な事例として、コンビニの店内で未成年のアルバイト店員2名が、ケースに陳列されているポテトを交互にかじる様子を撮影した動画がSNS上に投稿され、その後、X(旧:Twitter)に転載され拡散された事件があります。
前述の通り、雇用主の企業は炎上の対応に追われ、場合によっては使用者責任などさまざまなリスクが生じる可能性があるので、SNSガイドラインを制定・周知し、リスク対策することが重要です。
②機密情報の流出
社内の内部情報や新製品情報といった企業内の機密情報を社内の従業員がSNSで流出してしまうケースです。
具体的な事例として、電子機器メーカーの発売前の新製品情報を従業員の娘がYouTubeに公開してしまい、従業員が解雇されたケースがあります。
情報漏えい防止については、SNSガイドラインで業務上知り得た情報を社外に持ち出さない旨を明記することで抑止力につながります。
③不適切な発言
従業員の発言が炎上する理由は多岐にわたりますが、特に以下のようなテーマに関連する不適切な発言はSNS上で炎上しやすいです。
・差別用語や差別的内容(ヘイトスピーチ)
・性別、性差(ジェンダー)に関して物議を醸すおそれがあるもの
対策として、SNSガイドラインに差別や誹謗中傷など、避けるべき発信内容を明記することで、従業員の不適切な発言を防ぐ取り組みが必要になります。
企業SNSにおける炎上と対策
企業SNSにおける炎上においても注意が必要です。
一般的に企業アカウントは個人アカウントよりも発信力や影響力が高いため、注目が集ま
りやすいですが、その分、十分に発信内容に留意する必要があります。
ここでは、企業SNSにおける炎上事例と考えられる対策について解説します。
①誤情報の発信
企業の公式アカウントが誤った情報を投稿したことによって、クレームが発生し炎上する可能性があります。
対応策としては投稿内容のチェック体制を整えることや、誤情報を発信した後の対応をあらかじめ決めておくことが必要です。
②不適切な表現や発言
個人SNSにおける炎上パターンと同様に、企業アカウントにおいての不適切な表現・発言や顧客への返信内容に不適切な内容が含まれるケースです。
例えば、企業アカウントのX(旧:Twitter)での発信において、配偶者の呼び方を「嫁」という言葉で表現したことで、SNS上で「嫁という言葉遣いは不適切」といった声が寄せられ物議を醸しました。
上記のケースの場合、「嫁」は息子の妻といった意味合いもあるため、配偶者に対しては「妻」という言い方が望ましいとされています。
このように、言葉の表現方法によっては不適切な言動と捉えられてしまうケースがあるので、投稿前のチェック体制の構築や議論が必要です。
SNSガイドライン策定例
SNSガイドラインを制定している企業の中で、必要な項目が網羅され内容がうまく整理されている事例を紹介します。
タカラトミー
こちらのソーシャルメディアポリシーでは社員によるSNS利用や企業アカウントのSNS運用において適切な情報発信を行うために必要な内容が網羅されています。
また、上記ポリシーとは別に社内でSNSガイドラインを定め社員に周知されている旨も記載されており、社内でのリテラシー管理が徹底されていることが伺えます。
サントリー
SNSガイドラインとして、ユーザーが公式アカウントとコミュニケーションをする際の注意事項などの内容を記載しつつ、アルコール関連の投稿に関する注意事項として、飲酒において不適切な内容の投稿は削除することを明記しており、飲料メーカーとしての社会的役割を明示している点が特徴です。
また、SNSガイドラインとは別にソーシャルメディアポリシーも制定しており、自社のSNSアカウントでの発信時に、以下のポリシーを遵守する旨が明記されています。
ソーシャルメディアポリシー記載項目
1.企業倫理綱領、社内外の法規・ルールの理解と遵守
2.メディア特性の理解と参加時の心構え
まとめ SNSガイドラインを策定して炎上リスクを防ごう
SNSガイドラインを実際に導入している企業もありますが、まだ導入していない企業も多く見られます。
現在は多角的な視点でのネットリテラシーが求められる時代になっているので、SNSガイドラインを策定して炎上リスクを防ぎ、SNSを利用することを推奨します。
弊社では弁護士監修のもと作成したガイドラインの雛形を提供しております。
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大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。
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清水 陽平