企業にとって、風評被害は信頼や収益に深刻な影響を与える可能性がある問題です。ネットやSNSの普及により情報が瞬時に拡散する現代では、風評被害のリスクが一層高まっています。
適切な風評対策を行うことで、ネガティブな情報の影響を最小限に抑え、ブランドイメージを保護することが可能です。
本記事では、風評対策の重要性や原因、具体的な手法について詳しく解説します。企業イメージを守りたいと考える広報・マーケティング担当者や中小企業の経営者の方々にとって、有益な情報を提供します。
風評対策の重要性とは?
風評対策は、企業の信頼性を守るために欠かせない要素です。一度広まったネガティブな情報は、企業イメージを傷つけ、売上や採用活動などに多大な影響を及ぼします。本セクションでは、風評対策がなぜ重要であるのか、またその効果について詳しく解説します。
風評被害が企業に与える影響
風評被害は企業に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。売上の急激な減少は、企業の財務状況を直撃します。
顧客からの信頼喪失は、長年かけて築き上げてきたブランドイメージを一瞬で崩壊させる可能性があります。さらに、従業員のモチベーション低下は、企業内部の生産性にも深刻な影響を与えます。
- 売上減少
- ブランドイメージの低下
- 採用活動への悪影響
- 取引先との関係悪化
これらの影響は、単に一時的な問題にとどまらず、長期的な経営戦略にも深刻な打撃を与える可能性があります。
経験則では、一度失われた信頼を回復するには、通常の数倍の労力と時間が必要となります。特に、デジタル時代においては、ネガティブな情報が瞬く間に拡散されるため、迅速かつ的確な対応が求められます。
ネット時代における風評リスクの増大
インターネットとソーシャルメディアの急速な普及により、風評被害のリスク(デジタルリスク)は従来よりも格段に高まっています。誰もが簡単に情報を発信・共有できる環境では、一つの投稿が瞬く間に何万もの人々の目に触れる可能性があります。
SNSプラットフォームは、情報の拡散速度と到達範囲において従来のメディアをはるかに凌駕しています。Twitter(現:X)、Facebook、Instagramなどのプラットフォームでは、一つの投稿が数分で何千、何万もの人々に共有される可能性があり、企業にとって非常に大きなリスクとなっています。
また、口コミサイトでは、ユーザーのレビューや評価が購買行動を左右するため、否定的な評価が広がることで企業イメージに大きな影響を与えます。さらに、検索エンジンの結果にネガティブな情報が長期間表示される場合、風評の影響が継続することが懸念されます。
風評対策の必要性とその効果
適切な風評対策を実践することで、企業は多くのメリットを得られます。リスクの早期発見と迅速な対応は、ブランドイメージを保護し、顧客との良好な関係性を維持するための重要な戦略です。また、潜在的な経済的損失を最小化することができます。
効果的な風評対策は、単なる防御的な取り組みではなく、企業の評判と信頼を積極的に守り、強化するためのプロアクティブな戦略と言えるでしょう。常に先を見据え、リスクに備える姿勢が求められます。
風評被害の原因と発生メカニズム
風評被害は、SNSやメディア報道、口コミ、誤解などさまざまな要因で発生します。ここでは、風評被害の主要な原因とその発生メカニズムを深掘りしていきます。
SNSでの不適切な投稿
SNSは双方向コミュニケーションが可能なプラットフォームですが、誤解を招く投稿や従業員の不適切な発言、顧客による批判的な投稿などのリスクが存在します。
企業が自社の公式SNSを使っていなくても、顧客がサービスへの不満を投稿すれば、それが他の顧客によって拡散され、炎上につながる場合があります。
また、BtoBの企業であっても、従業員の不用意な投稿が企業全体の信頼を揺るがす事態を招くこともあります。企業はこれらのリスクを事前に予測し、適切なガイドラインを整備する必要があります。
マスコミ報道の影響
マスコミによる報道が誇張されると、企業にとって風評被害の引き金となる場合があります。
特にセンセーショナルなニュースは拡散力が高く、企業の名誉回復には時間と費用がかかります。事実と異なる報道が流れた場合は、迅速かつ正確な情報発信が求められます。
誤解や憶測による拡散
匿名掲示板やSNSでは、情報の断片が誤解や憶測によって拡散され、事実とは異なる内容が定着してしまうことがあります。このようなケースでは、正確な情報発信が風評被害を抑えるカギとなります。
誤解や憶測が生まれると情報の訂正が困難になるため、企業は継続的なモニタリングを行い、炎上に繋がる可能性のある風評の早期発見と対策を徹底する必要があります。
風評対策の具体的な手法
風評対策は、事前にデジタルリスクを軽減する予防策と、発生後の被害を最小限に抑える対応策の両方が重要です。ここでは、それぞれの具体的な手法について説明します。
削除依頼と法的措置
風評被害が発生した場合、まずは問題の投稿や記事を削除する手続きを検討することが一般的です。
削除の正当性を証明できる資料を準備し、できるだけ早い段階でGoogleやSNS(X、Instagram、Facebook、YouTubeなど)の運営会社に削除を依頼し、迅速に対応してもらうことが重要です。
削除依頼が拒否された場合や、投稿が法的な違反に該当する場合には、弁護士を通じて以下のような具体的な法的措置を取ることができます。
- 削除請求
ネガティブな投稿やデマの拡散を少しでも減らすため、SNS運営会社に対して記事削除を求める裁判等の手続きを行います。裁判所が削除を命じれば、削除を拒否していた運営会社も削除をしてくれます。 - 発信者情報開示請求
ネガティブな投稿やデマの投稿者を特定するため、プロバイダやSNS運営会社に対して発信者情報を開示する手続きを行います。この請求が認められると、投稿者の氏名や住所、IPアドレスが判明し、損害賠償請求などの次のステップに進むことが可能になります。投稿内容の違法性を証明するために、証拠(スクリーンショットや被害状況の記録)を十分に準備しておくことが重要です。 - 損害賠償請求訴訟
投稿者の氏名住所が特定できれば、ネット風評被害により売上の減少やブランド価値の低下が発生した場合、損害賠償請求を起こすことが可能です。
法的な根拠を持って投稿の削除や損害賠償請求を行ったり、刑事告訴が必要になったりした場合は、インターネットトラブルを解決した実績を持つ弁護士を頼ると良いでしょう。
ソーシャルメディアポリシーの策定
企業が風評被害を未然に防ぐためには、ソーシャルメディアポリシーの策定が重要です。このポリシーには、従業員がSNSを使用する際の基本的なルールや、禁止事項、推奨される行動などを明記します。
特に、企業の内部情報や取引先の情報を無断で公開しないことや、ブランドのイメージを損なう発言を避けることが含まれます。ポリシーを策定するだけでなく、従業員に対して定期的な教育や研修を行うことで、その内容を浸透させることが重要です。
さらに、SNSでの不適切な投稿を防ぐために、企業がモニタリングツールを活用し、従業員や関係者の発信内容を監視する体制を整えることも効果的です。ただし、監視が従業員のプライバシーを侵害しない範囲で行われるよう、バランスの取れた運用が求められます。
モニタリングと監視体制の構築
風評リスクを管理するうえで、日常的なモニタリングと監視体制の構築は欠かせません。ネット上でのネガティブな言及や批判的な投稿を早期に発見することで、迅速な対応が可能になります。
現在、多くの企業が利用している代表的なモニタリングツールとして、Googleアラート(無料)が挙げられますが、より手軽に詳細な情報を得たい場合は、専門的なモニタリングツールの導入が推奨されます。
モニタリングツールでは、企業名やブランド名、製品名などのキーワードを設定することで、関連する投稿をリアルタイムで追跡できます。これにより、SNSや掲示板、口コミサイトなどでの動向を素早く把握することが可能です。
モニタリングツールの一例として、株式会社エルプランニングの「イメージチェッカー」は、「Google・Yahoo!のサジェスト・関連ワード(虫めがね)の風評チェック」と「検索結果(オーガニック検索)100位までの風評サイトチェック」が同時に行えるモニタリングツールとなっています。
「サジェスト・関連検索・オーガニック検索」いずれかにネガティブな情報が出現した際には、予め登録した担当者のアドレスにメールが届くアラートメール機能を搭載し、風評対策を万全にしたい企業に有用なツールとなっています。
イメージチェッカーについての詳しい情報は、こちらのページより確認できます。
もちろん、リソースを割く事が可能なのであれば、企業の広報担当者が定期的に検索エンジンで企業名を検索し、検索結果に表示される情報をチェックすることも重要な取り組みの一つです。
一方で、モニタリング体制が整備されていても、それだけでは不十分です。発見した問題に対してどのように対応するか、事前に具体的な対応手順を策定しておくことが重要です。たとえば、特定の投稿が確認された場合の報告ルートや、対応を決定する責任者を明確にしておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。
風評被害が発生した場合の対応方法
万が一、風評被害が発生した場合、企業の対応次第でその影響は大きく変わります。迅速かつ適切な対応が求められるため、事前に具体的な手順を定めておくことが重要です。
ここでは、被害発生時に取るべき具体的な対応について解説します。
事実確認と証拠保存
風評被害が発生した場合、最初に行うべきは事実確認と証拠の保存です。問題となる投稿や記事の内容を確認し、それが真実に基づいているのか、あるいは誤解や虚偽に基づくものなのかを判断します。
その際、投稿を保存することがとても重要です。これにより、投稿内容が削除された場合でも、証拠として利用することが可能です。問題の投稿やコメントが削除されてしまう前に、以下の手順で証拠を確保しましょう。
【証拠保存の手順とポイント】
- ・PDF印刷
投稿されている個別投稿を表示し、フッターにURLを表示する設定にした上でPDFとして印刷します。まとめサイトなどでは、広告等で問題部分が隠れてしまうこともあるため、適切に印刷されているかの確認をすることが重要です。 - ・第三者サービスの活用
ウェブ魚拓などのサービスを使用して投稿の証拠を確保します。 - ・スクリーンショットの保存
上記の利用が難しい場合は、取り急ぎスクリーンショットでもないよりマシであるため、投稿画面全体が写るように撮影し、投稿日時が分かる形で保存します。その際、該当投稿の正確なURLもどのスクリーンショットのものか分かるように保存します。
保存した証拠は、弁護士への相談時や裁判所への提出資料として非常に重要となるものです。また、GoogleやSNS運営会社への削除依頼の際にも具体的な証拠が求められるため、法律手続きまでは考えていなくても、「風評対策」を考えた時点でできるだけ早く保存しておくことをおすすめします。
迅速な声明発表と誠実な対応
風評被害に対しては、迅速かつ誠実な対応が求められます。問題が発生した際、企業としての立場を明確にし、迅速に声明を発表することで、顧客や関係者の信頼を守ることが可能です。声明内容は簡潔で正確な情報に基づき、問題に対する責任の所在や再発防止策について言及することが望ましいです。
特に、誤解やデマが原因で風評被害が発生した場合には、根拠を持って正確な事実を伝えることが最優先です。一方で、企業側に非がある場合には、問題を認めたうえで謝罪し、改善のための具体的な取り組みを提示することが求められます。
誠実な対応を示すことは、企業の信頼回復を早めることに繋がります。
再発防止策の提示
風評被害が収束した後には、同様の問題が再発しないよう対策を行う必要があります。
まずは、発生原因を詳細に分析し、内部プロセスや体制に問題がないかを見直します。たとえば、従業員のSNS利用ポリシーを強化したり、商品やサービスの品質管理を徹底したりすることが有効です。
さらに、顧客や従業員からのフィードバックを積極的に収集し、それを基に改善を図ることで、再発防止策を効果的に実行することができます。取り組みを社内外に示すことで企業の誠実さをアピールし、信頼を取り戻していきましょう。
風評対策サービスの選び方
風評被害に対応するには、自社での取り組みに加えて、専門業者のサポートを活用することが有効です。ただし、信頼性のあるサービスを選ぶことが重要です。
ここでは、風評対策サービスを選ぶ際の基準とポイントを詳しく解説します。
また、風評対策を行っている会社の選び方はこちらの記事でも詳しく紹介しています。
実績と信頼性の確認
風評対策サービスを選ぶ際に、まず注目すべきはその業者の実績です。これまでに対応した案件の数や規模、解決までの具体的なプロセスが明示されている業者は、信頼性が高いといえます。過去の実績や成功事例が豊富な業者であれば、安心して依頼できるでしょう。
また、業者の信頼性を確認するには、顧客からのレビューや評判を調べることも有効です。第三者の口コミや評価サイトでのレビューは、業者選びの参考になります。特に、他社の広報担当者や経営者からの評価が高い業者は、実績と信頼性が裏付けられている可能性が高いです。
費用とサービス内容のバランス
費用とサービス内容のバランスを慎重に検討することも大切です。安価なサービスに飛びつくのではなく、費用に見合った内容かどうかを確認する必要があります。具体的には、サービスの範囲(モニタリング、削除依頼、法的サポートなど)が料金に含まれているかどうかを確認しましょう。
また、複数の業者から見積もりを取得し、それぞれの内容を比較することで、最適なコストパフォーマンスを提供する業者を見つけることができます。一見すると高額に見えるサービスでも、問題解決の迅速さやリスク軽減効果を考慮すれば、結果的にコスト効率が良い場合もあります。
サポート体制と対応スピード
風評被害は時間との戦いです。そのため、緊急時に迅速に対応できるサポート体制が整っている業者を選ぶことが重要です。24時間対応可能なカスタマーサポートや、専属の担当者が付くサービスは、特に評価が高いポイントとなります。
さらに、具体的な対応スピードも重要な要素です。業者によっては、問題発見から初動対応までの時間が異なるため、事前に対応までの流れを確認しておくことが推奨されます。対応の遅れが被害の拡大を招くことがあるため、迅速さは選定の決め手となるでしょう。
風評対策を継続するための方法
風評対策は、一度実施して終わりではありません。長期的に企業の信頼を維持するためには、継続的な取り組みが求められます。このセクションでは、風評対策を継続するための方法について解説します。
定期的なモニタリングの実施
風評リスクを管理するうえで、継続的なモニタリングは欠かせません。インターネットやSNS上の動向を定期的にチェックし、企業やブランドに関する言及を追跡することで、早期にリスクを察知できます。専用のモニタリングツールを活用すれば、効率的に情報を収集し、リスクを管理することが可能です。
また、検索エンジンでの定期的な企業名検索も有効です。検索結果に表示されるネガティブな情報が削除されずに残っている場合は、早急に対応する必要があります。モニタリングを日常業務に組み込むことで、風評リスクを継続的に管理する体制を構築しましょう。
ポジティブなコンテンツ発信の強化
ポジティブな情報を発信することで、ネガティブな影響を和らげる効果が期待できます。
たとえば、企業の成功事例や顧客からの良い評価、社会貢献活動に関する情報を積極的に発信することで、ブランドイメージを向上させることが可能です。特に、SNSやブログを活用した情報発信は、広範囲にわたってポジティブなメッセージを伝えるのに効果的です。
ポジティブな情報が拡散されることで、検索エンジンの上位にネガティブな情報が表示されにくくなる効果もあります。このような情報発信を定期的に行うことで、風評被害に対するリスクを軽減できます。
リスク管理体制の整備
長期的な風評対策の成功には、社内のリスク管理体制を整えることが不可欠です。リスク管理担当者やチームを設置し、風評被害の兆候を察知した際に迅速に対応できる仕組みを構築しましょう。
また、従業員向けに定期的なリスク管理研修を実施することで、組織全体で風評リスクに対する意識を高めることができます。
さらに、外部の専門業者との連携を強化することも効果的です。専門家の知見を活用することで、リスク管理体制の精度を向上させ、風評リスクに対する迅速かつ的確な対応が可能になります。
まとめ|風評対策は継続的な取り組みが鍵
風評対策は、企業の信頼性を守り、ブランド価値を維持するために欠かせない取り組みです。一時的な対応だけでなく、長期的なリスク管理体制を整えることが重要です。
定期的なモニタリングやポジティブな情報発信、社内外の連携を強化することで、風評リスクを効果的に管理し、企業イメージを保護することが可能です。
ぜひ本記事を参考に、自社に最適な風評対策を実践してください。
清水 陽平