誹謗中傷・風評対策

【2020年度版】実際にあったネット誹謗中傷トラブルの事例を紹介

実際にあったネット誹謗中傷トラブルの事例を紹介

インターネットの掲示板やSNSを利用する中で、突然見ず知らずの人から身に覚えのない中傷を受ける人が増えています。

その中には、他者からの誹謗中傷に心を痛め、解決方法や相談できる機関がわからず塞ぎこんでしまったり、恐怖感を覚えたりする人がいるのも事実です。

インターネットでの誹謗中傷は基本的に匿名で行われることが多く、「相手がわからないからどうしようもない」と思われがちでしたが、全てのケースでそうであるとは限りません。

近年では発言に違法性が認められた場合、投稿の削除申請が通ったり、相手を特定して損害賠償を請求できたりするケースも出てきました。

本記事では、実際に起こったインターネットの誹謗中傷トラブルや、トラブル対応の結果損害賠償の請求に至った事件の事例を集め紹介しています。

過去の事例から、どのような誹謗中傷のケースがあったかを確認し、万が一トラブルに巻き込まれてしまった場合は参考にしてみてください。

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インターネット上の誹謗中傷トラブルの現状

インターネット上の誹謗中傷トラブルの現状

警察庁が発表したデータによれば、警察に寄せられたインターネット上の誹謗中傷トラブルの相談件数は平成29年まで右肩上がりに増えてきたとされています。

平成30年においては前年より数値は低いとはいえ、依然として1万件以上もの相談があるとのことです。

平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

参考:警察庁 平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

毎年1万人以上という数値でも大きいと言えますが、インターネット上の名誉毀損・誹謗中傷トラブルを抱える全ての人々が必ずしも警察に相談している訳ではない事を考えると、トラブルで悩んでいる人は見える以上の人数にものぼっていると考えられます。

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「匿名性」と「正義感」が誹謗中傷を行う理由の根底にある

インターネットで誹謗中傷トラブルが後を絶たない理由のひとつとして、インターネットで発言する人の「匿名性」が挙げられます。発言をする際に自分の素性を明かす必要がないため、普段よりも過激な発言をしてしまう人が一定数いるということです。

また、インターネットを閲覧している人数が多ければ、それだけ同じ考えを持つ人達が集まってきます。「みんなが言っているから自分も言って良いだろう」という安易な考えで誹謗中傷を投稿する人も少なくはありません。

さらに利用者の持つ「正義感」が悪い方向に働いている場合もあります。

ここで言う「正義感」とは、「間違った正義感」「歪んだ正義感」「正義感の暴走」などと例えられる類のもので

  • ミスを犯したもの(人・企業など)が許せない
  • 間違ったもの(人や事象など)を徹底的に罰しなければいけない
  • 間違ったものなのだから酷い扱いを受けても当然

と思い込んでいる状態の人もいるのです。

「自分のしている事(言っている事、投稿した言葉)は絶対に正しい」と思い込んでいるため、たとえその内容が誹謗中傷であったとしても、本人には自覚がない場合もあります。

こういった「他人に正義の制裁を行うこと」に対し人間が快楽を覚えることは脳科学の観点からも説明されており、誰でもこのような状態になってしまう可能性があると言われています。

参考:東洋経済オンライン 他人を許せない正義中毒という現代人を蝕む病

2020年に起きたインターネットでの誹謗中傷事例まとめ

2020年に起きたインターネットでの誹謗中傷事例まとめ

2020年は新型コロナウイルス感染者の増加の影響などもあり、インターネット上の誹謗中傷が多くニュースを賑わせた1年でした。

実際にニュースになったインターネットの誹謗中傷トラブルを振り返っていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染者への誹謗中傷が投稿された件

2020年初頭から引き続き余断を許さない状況である新型コロナウイルスについて、感染者の個人情報や職場を特定し、SNSなどに投稿する事件が起こりました。

これには、事実ではない情報が拡散されてしまう事例も少なくはなかったと言えます。

ウイルスが全国的に猛威を振るう中、最後まで感染者が出なかった岩手県では、7月末に初めての感染者を確認。その際、感染者の勤務先が特定され嫌がらせのメールや電話が殺到しました。

これを受けて岩手県では県の担当者がネット上の投稿をチェックするように対策を開始。この対策は、誹謗中傷の抑止力になったとされています。その他、県の対応として誹謗中傷や差別を未然に防げるような取り組みも行っていく方針のようです。

2020年の2月から9月までの間に新型コロナウイルスに関する被害の相談件数が32件あった和歌山県では、こういった事態に対してインターネットへの書き込みを監視するモニタリングを導入すると発表しています。

県として、もしも悪質な書き込みを発見した場合にはプロバイダに削除を依頼したり、被害に遭った人が裁判を起こす事になった際の資料としてモニタリングの結果を提供したりできるようにしていくとのことです。

もちろん、インターネット上での情報や発言を把握しておくことの重要さを認識した自治体は上記の県だけではありません。率先してインターネット上の投稿の監視を行い、誹謗中傷を発見した場合には対策に移れるよう動いている地方自治体は複数あります。

参考:東京新聞 コロナのデマや誹謗中傷防げ ネット上をパトロール、法務局に通報 自治体が取り組み
参考:「和歌山県新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例」を施行しました | 和歌山県

番組内での言動がきっかけで誹謗中傷が相次いだ件

2020年5月、ある番組に出演していた女子プロレスラーの方が番組内での言動をきっかけにSNS上で誹謗中傷を受け、亡くなった事件がありました。

2020年に起こったSNS上での誹謗中傷問題で日本中で大きく問題視された事件といえば、この事件を一番に思い出す人も多いでしょう。

事件の詳しい真相は非公開であり「誹謗中傷が直接的な理由であった」という証明はないものの、当人のTwitterやInstagramには毎日100通を越える批判コメントが寄せられていたという報道もある事などから、SNSへの誹謗中傷が原因の一部であることは想像にかたくありません。

現在も残る亡くなった本人のInstagram・Twitterのアカウントからは誹謗中傷コメントは削除されているものの、当時寄せられていた誹謗中傷コメントの一部は問題意識を持っていたユーザーによるスクリーンショットなどに残されており、Twitterなどのサイトで確認する事が可能です。

この事件を機に政府や有志の民間企業(インターネット関連)が中心となって、インターネット上で誹謗中傷が起こった際の対策や対処を改善するよう大きく動きました。

参考:木村花さん中傷で母親が賠償請求「投稿した言葉に責任を」 :東京新聞 TOKYO Web

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インターネットの誹謗中傷で損害賠償が認められた事例

インターネットの誹謗中傷で損害賠償が認められた事例

このようにインターネット上の誹謗中傷が後を絶たない中、被害者が「権利を侵害された」と自ら行動を起こして損害賠償を勝ち取った事例もいくつかあります。近年の事例から見ていきましょう。

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ケース1:元市議会議員が事件とは無関係の人をSNSで拡散した事例

2019年に起こった常磐道のあおり運転殴打事件に関連して、元市議会議員が事件とは無関係の女性の写真を添付し「(事件の犯人の)同乗者の女」「早く逮捕されるように拡散してほしい」という内容の文章をFacebookに投稿しました。

実は当時、インターネット上で無関係の女性が「同乗者の女性である」というデマ情報が流されていたのです。その情報を元市議会議員が鵜呑みにしてしまい(真実であると思い込み)拡散してしまった事件となります。

情報の出どころではなかったものの、市議会議員という公から信用されている立場の著名人が拡散したため、デマ情報は多くの人に知れ渡ることとなりました。

そして、デマ情報に写真を掲載された女性のInstagramアカウントにはなんと1000件をこえる誹謗中傷のメッセージが届く結果となってしまいました。

裁判ではこの元市議会議員の行為が女性の社会的評価を低下させた事実が認められ、33万円の損害賠償が命じられています。

このように、虚偽の情報を発言した人物ではなく、虚偽の情報を多くの人に拡散した(たとえば、Twitterならリツイート、Instagramならリグラムなど)人物に対して損害賠償の支払いが命じられる場合もあります。

参考:朝日新聞デジタル 「ガラケー女」デマ拡散、元市議に33万円の賠償命令

ケース2:有名人の配偶者に対する誹謗中傷を匿名で投稿した人の事例

2018年、ある野球選手の妻(実際には選手自身やお子様に対する誹謗中傷も散見されていました)に対して某掲示板に誹謗中傷が投稿された件で、野球選手が「妻と自分の名誉が毀損された」として、書き込みを行った女性に対し約190万円の損害賠償を請求しました。

この金額には権利侵害(「名誉毀損」や「名誉権の侵害」、「プライバシーの侵害」などが想定されます)に対する損害賠償のほか、情報開示や訴訟にかかった金額も含まれています。

実際には、誹謗中傷の被害は訴訟の数年前から続いており、今回損害賠償を請求された女性だけが誹謗中傷を行っていた訳でもありません。

しかし、彼女が行った誹謗中傷の発言内容や、弁護士からの問い合わせを無視した事など諸々の理由が重なった事によりこの女性が「名誉を毀損した」として訴えられる事になりました。

参考:ABEMA TIMES プロ野球選手の妻をネット中傷し“200万円請求”、投稿者特定の流れと慰謝料の相場は

ケース3:匿名掲示板を使い他人になりすまして投稿した人の事例

2017年、大阪府の男性がインターネットの掲示板を悪用し、長野県に住んでいる全く別の男性になりすまして投稿を行った事件が起こりました。

犯人は、被害者の男性になりすまして他者に対する誹謗中傷を行っていたと報道されています。

被害者である長野県の男性は、自身の肖像権などを侵害されたとして損害賠償を請求。犯人の男性に対して130万円の支払いを求める判決が出されました。

このケースでは、被害者が別のSNSで使用していたプロフィール画像や名前を用いて誹謗中傷を行っていたため、被害男性の肖像権や名誉権を侵害したと結論付けられています。

類似の事例で、犯人が被害者本人のアカウントに何らかの方法でログインし誹謗中傷を行った場合は「不正アクセス禁止法違反」が当てはまる場合もありますので覚えておきましょう。

参考:朝日新聞デジタル SNSでなりすまし、他人を罵倒 名誉権侵害で賠償命令
参考:SNSでなりすまし、名誉権侵害で賠償命令について 3978 : ブログ : 安全・安心の横浜へ 「何を言ったかでなく、何をやったか!」

もしもインターネット上で誹謗中傷の被害に遭ったら?

もしもインターネット上で誹謗中傷の被害に遭ったら?

誹謗中傷をされている人に対して、「嫌ならSNSをやめればいい」という意見を述べる人も少なからずいます。しかし、インターネットが日常生活に根づいている現代で、その対策方法をとることは現実的とは言えないでしょう。

もし、インターネット上で誹謗中傷の被害に遭ってしまった場合、その書き込みの内容がSNSなどの利用規約や法律に違反しているなら「削除」が認められる場合があります。

さらに、誹謗中傷の度合いや書き込みの内容によっては、犯人の特定作業を経たうえで、特定した犯人に対して法的責任を追求できる可能性も。

以下の記事では、インターネット上で誹謗中傷を受けてしまい、それを法的に解決したい場合を想定し、専門家に相談するまえに準備しておくことや、相談した後の流れについて簡潔に説明しています。

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「SNSを利用しなければいい」が現実的ではない現状

先述した通り、インターネット上(とりわけSNS)で誹謗中傷を受けた際、「嫌ならSNSをやめればいい」という意見が一定数上がる事も現状です。しかし、現代では10代~20代の学生を中心に、学校の状況やイベントの情報をSNSを使って入手しているなど、SNSが生活に深く根づいた生活を送っている人も多くいます。

また、若年層にとどまらず「効率よく自身・自社のPRを行うためにはSNSが必要だ」と考え、公式アカウントを開設・運用している芸能人や企業も多く見られます。

SNSは上手に利用すれば自身や企業のファンを効率よく獲得できるツールであると言えます。

そのため、SNSを日常的に利用する世代をターゲットにしている人や企業にとって、SNSはサービスや商品のPRと切っても切り離せない存在になりつつあります。

仮に自分のSNSアカウントを所持していなかった場合でも、他人から誹謗中傷を受けたり、なりすましのアカウントを作成されてしまったり、仕事として活用したりする場合もあるため、完全にインターネットの誹謗中傷の脅威から逃れる事は難しいと言えるのではないでしょうか。

つまり、現代においてはインターネットの誹謗中傷被害に遭わないための対策とともに「誹謗中傷の被害に遭った場合にはどうすれば良いか」という心構えも持っておくべきだという事です。

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専門家にインターネットの誹謗中傷相談をする前にやっておくこと

インターネット上の誹謗中傷問題は、もしもその誹謗中傷が明らかに法律に違反するような内容であった場合は削除申請などの対応ができます。

また、削除申請は被害を受けている本人であれば個人でも行うことが可能です。

しかし、基本的に削除申請が通るためには、その誹謗中傷にあたる投稿が「どのような法律に違反しているのか」「その誹謗中傷によってどのような被害を受けたのか」などを明確に説明する必要があります。

根拠のある説明をするためには法律の知識が不可欠であるため、「トラブルの対応は専門家に任せたい」と考える方も多いでしょう。

専門家に相談する前に、SNSやWEBサイトへ投稿された誹謗中傷投稿の証拠としてスクリーンショット(画像)を保存したり、キャプチャ画面を紙に印刷しておいたりすることが大切です。

また、書き込まれた内容が虚偽であると証明できる資料などを用意しておくのも良いでしょう。これらの準備は、削除のためだけではなく、損害賠償を請求したい場合の資料としても有効です。

誹謗中傷を投稿した相手に法的な責任を追求するまでの流れ

インターネット上で誹謗中傷の被害にあい、書き込みを行った相手に対して損害賠償の請求を行うなど法的な責任を追求したい場合、まずは書き込みを行った人物を特定しなければなりません

現行の日本の制度では、まず相手を特定するために2回の裁判が必要となっており、特定が完了するまでの期間は大体半年から1年程度と言われています。

無事に特定ができたら、書き込みの内容や被害状況によって民事責任(損賠賠償の請求)や刑事責任(名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪、場合によっては脅迫罪など)、またはそのどちらもを追求していく流れとなります。

投稿者特定に関しての詳しい解説はこちらの記事を参考にしてみて下さい。

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まとめ|ネットの誹謗中傷に法的な対策を行う事例は増えている!万が一のための対処法を知っておこう

万が一のための対処法を知っておこう

近年の出来事を中心に、インターネット上での誹謗中傷の事例を紹介しました。

インターネットはリアルの繋がりとは違い、自分の素性を明かさずに発言ができたり、見ている人が多い分共感が得やすかったりといった事から誹謗中傷が投稿されやすい場です。

また、インターネット(とくにSNS)は個人の生活に根づいている部分もあり、利用しないという選択肢を選ぶことが難しい場合もあります。そのため、誹謗中傷に遭わない対策とともに、万が一誹謗中傷をされてしまった場合の対処法も覚えておくことが大切です。

多く人が日常的に利用しているSNSを中心にインターネットの誹謗中傷問題は深刻化しており、年内にも痛ましいニュースが多数報道されました。その中で、誹謗中傷に対して法的な対処を検討する人達も増えています。

投稿を削除したり、相手に法的責任を追求したりする場合はまず弁護士に相談するのがオススメです。もしも法的な対処が困難であった場合には、誹謗中傷対策の会社に相談してみる事も検討してみて下さいね。

弊社でも誹謗中傷対策のソリューションを提供しておりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。