誹謗中傷・風評対策

ネット上のネガティブキャンペーンとは?正しい対策方法を解説

ネット上のネガティブキャンペーンとは?正しい対策方法を解説

最近では選挙以外でもよく聞くようになった「ネガキャン」や「ネガティブキャンペーン」という言葉。本来の意味とはすこし異なる意味で用いられる事もしばしばあります。

本記事では、「ネガティブキャンペーン」という言葉の本来の意味を押さえつつ、現代においてよく使われるようになった誹謗中傷の意味を持つ「ネガティブキャンペーン」の傾向や対策方法について解説します。

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ネガティブキャンペーンとは

ネガティブキャンペーンとは
ネガティブキャンペーン(Negative campaigning)通称「ネガキャン」とは、元々の意味では対立する相手の人格上の問題点や政策の欠点を批判し貶める事によって支持率を下げ、結果的に自分への支持率を相手より高く保つ選挙手法のひとつでした。

その後、選挙以外の場面においても「ある特定の相手の悪口を言う事により相手の好感度を下げ、その結果自分が何らかの利益を得る」という広い意味合いでも「ネガティブキャンペーン」という言葉が使われるようになりました。

例えば、日本ではあまり見かけませんが、海外の一部で展開されている企業の「比較広告」は他社を比較対象として問題点を挙げている場合はネガティブキャンペーンの一種であると言えます。

ネガティブキャンペーンと誹謗中傷はどう違う?

ネガティブキャンペーンは、単に誹謗中傷と同じような意味合いで理解される事がしばしばありますが、実際には正しい意味の「ネガティブキャンペーン」には2点の特徴があります。

まず1点目は「批判内容が論理的で、裏付けがとれていること」です。ネガティブキャンペーンで相手を批判する場合、感情的に相手を貶めるのではなく、基本的にはそのバッシング内容に値する根拠などが必要です。

2点目は、「発言者を明確にすること」です。元々ネガティブキャンペーンは選挙用語であると説明しましたが、ネガティブキャンペーンを行うのも、批判の対象も公人でした。企業の行う比較広告においても、広告を発信した企業は明白です。

ネガティブキャンペーンは「相手の批判をする」「相手のイメージを落とす」という意味では単なる誹謗中傷のように取れます。しかし、選挙手法である本来の意味合いでの「ネガティブキャンペーン」と「誹謗中傷」を比べると、発言に責任を持つ事が前提ではない誹謗中傷に対して、ネガティブキャンペーンは相手を批判するに値する根拠が必要であり、万が一でたらめな情報を発信してしまえば自分が民衆からの信頼を大きく失うというリスクを伴うという相違点があると言えます。

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ネガティブキャンペーンとヘイトスピーチの違い

また、ネガティブキャンペーンと混同されがちな「誹謗中傷」に「ヘイトスピーチ」というものがあります。ヘイトスピーチとは、人種や民族、宗教、性別、外見、社会的地位などといった属性・特徴に基づく不当な誹謗中傷や差別、扇動、脅迫行為のことを指します。

英語の「Hate(=憎悪・嫌悪)」と「Speech(=発言)」をかけ合わせた語句からも想像できるとおり、ヘイトスピーチは主観的・一方的な憎悪や敵意が含まれている発言や、関係のない第三者に対して、ヘイトの対象への憎悪・差別意識を煽る発言がほとんどであることから、近年大きく問題視されています。

日本では 2016年5月24日「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号)」いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が成立するなど、この問題を解決しようという動きも進んでいます。

「ネガティブキャンペーン」は名誉毀損になるのか?

「ネガティブキャンペーン」は名誉毀損になるのか?
上記を踏まえて考えてみたとしても、「公の場で相手の悪口を言う(またはインターネット上に書き込む)ならネガティブキャンペーンは名誉毀損ではないか?」と思う方はいるでしょう。ここでは名誉毀損罪の内容と「なぜ選挙における(本来の意味での)ネガティブキャンペーンが名誉毀損にならないのか」について解説していきます。

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名誉毀損罪とは

名誉毀損罪について、刑法にはどのように言及されているか確認してみましょう。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:電子政府の総合窓口(e-Gov) 刑法 第二百三十条

「公然」というのは、不特定または多数の人々が知ることのできる状態を指します。また、「その事実の有無にかかわらず」という言葉は、「悪口の内容が嘘か本当かとは関係なく」という意味です。したがって、名誉毀損の条件を簡単な言葉にすると、「誰でも知り得る事のできる場所で、人の悪口(例え本当の事であっても)を言ってその人の名誉を傷つける」行為という事になります。

名誉毀損罪が免責される場合について

選挙におけるネガティブキャンペーンは「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」に当てはまるように見えますが、「名誉毀損」にならない場合が存在します。

(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。

3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

引用:電子政府の総合窓口(e-Gov)刑法 第二百三十条の二

この「刑法第二百三十条の二」には、名誉毀損が成立しない特例についての条件が記載されています。第1項を簡単にまとめると、「公共の利益に関する内容であること」「目的が公益のためであること」「批判の内容が真実であると証明すること」の3つの条件が全て揃っていれば、名誉毀損にはしないという意味の内容であると言えます。

また、第2項は、「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」と書かれているので、まだ起訴されていない状態であっても「犯罪行為に関する事実を公の場に拡散する」行為は、第1項の「公共の利益に関する内容であること」という要件を満たすと判断する事ができます。

さらに、第3項は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」の毀損された当人が公務員や公選による公務員の候補者に関する真実(=本当だと証明されたこと)の場合は「名誉毀損罪」として罰しないとしています。これは、報道の自由や知る権利を守るための例外と言えます。選挙におけるネガティブキャンペーンが名誉毀損罪に当たらない場合が存在するのはこのためです。

しかし、もちろん「相手が公務員だから真実なら何を言っても良い」という訳ではありません。公務員としての適性に関係のない事象で名誉を毀損した場合は、公務員や公選による公務員の候補者に関する真実であっても名誉毀損が認められた判例があります。(参考:最高裁判所判例集 事件番号: 昭和27(あ)3760 相手方の氏名を明示しない公務員に関する新聞記事が名誉毀損罪を構成する事例)

現代における「ネガティブキャンペーン」

現代における「ネガティブキャンペーン」
現在、広義で使われている「ネガティブキャンペーン」は、本来の意味と変わっている場合があります。例えば、職場で根拠のない同僚の悪い噂を広めたり、インターネットの掲示板に匿名で誰かの悪口を書いたりする場合でも「ネガティブキャンペーン」という言葉が用いられる事があります。

とりわけ、インターネット上では匿名性を盾にした上記の意味でのネガティブキャンペーンが起こりやすいと言えます。インターネット上のネガティブキャンペーンは選挙のような個人対個人の構造ではなく、一般人対企業・商品・著名人や有名人となる事もありますし、明確な根拠が提示されない場合が多くあります。こういったネガティブキャンペーンを謳った「誹謗中傷」は、その内容によっては違法となる場合もあります。

ネガティブキャンペーンの対策

ネガティブキャンペーンの対策
それでは、実際にネガティブキャンペーンの被害に遭った場合はどんな対策方法を実行すれば良いのか解説していきます。大きく分類すると、匿名性の低い職場や学校などオフラインのコミュニティ内と、匿名性の高いインターネット上とで対応方法が分かれます。

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匿名性の低いコミュニティ内で被害に遭った場合はまず「無視」をする!

自分の悪い噂を職場などのコミュニティー内で広められるのは、その内容が本当でも嘘でも辛い事ですよね。しかし、個人間のネガティブキャンペーンに関しては、基本的には無視することが一番の対応策と言えます。

ネガティブキャンペーンを行っている相手は悪い噂を流すことで相手にダメージを負わせる事を目的としているため、対抗して悪口を言うなど感情的に反論しては逆効果です。さらに、被害に遭っているからと言って自分まで悪口を広めては、それが原因で元々悪い噂を信じていなかった人からの評価まで落としてしまう危険性もあります。

どうしても辛い場合は、まず上司や気の置けない同僚など確実に味方になってくれる人に本当の事を話し、協力を仰ぐのが良いでしょう。

匿名性の高いインターネットでの被害は冷静に対処を!

インターネットが普及し、誰もが個人のSNSで簡単に自分の意見を発信できるようになったことに加え、一般人だけではなく企業や有名人もSNSを使って自分の言葉を発信する機会が増えました。

企業や芸能人は、同じSNSを使う事で「距離の近さ」を演出でき応援して欲しいユーザーからの共感を得やすいのが利点ですが、その一方で同じ「距離の近さ」から簡単に誹謗中傷の的にされてしまうトラブルも多発しています。

基本的に、インターネット上でおこるネガティブキャンペーンも一方的な憎悪や嫉妬などからくる誹謗中傷です。しかし、インターネットでの発言は匿名性の高さも相まって誹謗中傷の被害が大きくなりやすい傾向にあります。

例えば、普段なら使わないような酷い言葉を使われてしまう事もありますし、職場や学校など現実のコミュニティと違ってインターネットに個人情報を投稿されてしまった場合は、その情報が世界のどこからでも閲覧可能な状態となってしまいます。

さらに、インターネット上に投稿された情報は簡単にコピーやスクリーンショットをする事が可能であるという点や、X(旧:Twitter)など一部のSNSの拡散性の高さなども忘れてはいけません。こういった危険性の高いインターネットでの誹謗中傷は、可能な限り早期に発見して対処しましょう。

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インターネットの誹謗中傷を削除したい場合

インターネットの誹謗中傷は、拡散される前に発見し、削除申請をするのがスマートです。削除可能な投稿の基準に関してはそれぞれの掲示板やブログ・SNS等の利用規約をよく読んで確認する必要がありますが、多くの場合は「プライバシーの侵害にあたる個人情報」「リベンジポルノにあたる画像や動画」「名誉毀損罪や侮辱罪に当たる発言内容」などが違法投稿として削除可能な傾向にあります。

投稿の削除申請を行う場合は、被害に遭っている本人が申請の手続きを行う必要があります。その際、どの書き込みがどうして違法なのか、書き込みによってどういった被害を受けているのかなどを法律の観点からわかりやすく説明する必要がありますので、もしも法律の知識に自信がない場合は事前に弁護士に相談すると安心です。

また、弁護士は被害者の依頼で削除の代理をすることも可能なので、どうしても自分で対処する事が難しい場合や削除できる確率を上げたい場合はインターネットのトラブルに詳しい弁護士を探して全てお任せしてしまうのもひとつの手です。

法律的に削除するのが不可能だった場合は誹謗中傷対策を行っている会社に相談し、情報の拡散防止に務めるのが良いでしょう。インターネットの誹謗中傷対策を行っている会社は多数あり、それぞれに対策方法が異なる場合があります。依頼をする前にしっかり目的や予算を伝えて対策方法などをヒアリングし、自分が信頼できると判断した会社に依頼するようにしましょう。

ネットの誹謗中傷や風評対策、プロに相談してみませんか?

まとめ|ネガティブキャンペーンを謳う誹謗中傷に注意!インターネットの場合は特に冷静な対応を!

ネガティブキャンペーンを謳う誹謗中傷に注意!インターネットの場合は特に冷静な対応を!
ネガティブキャンペーンとは、本来は相手の欠点を指摘する事によってイメージダウンを狙い、結果的に自分が利益を得るという選挙手法の事を言いました。根拠や発言者が明確であったはずの「ネガティブキャンペーン」ですが、現代では匿名の誹謗中傷でもこの言葉が用いられる場合があります。

学校や職場などのコミュニティ内におけるネガティブキャンペーンは、基本的に無視をする事が望ましく、反論したり対抗して悪口を言ったりする事は避けましょう。信頼のおける人に相談して協力してもらうのも良いでしょう。

近年問題視されているインターネット上での匿名で行われるネガティブキャンペーン(=誹謗中傷)の被害に遭った場合は、情報が拡散されて多くの人の目に触れる前に冷静に対処を行いましょう。これらの書き込みは、違法である場合は削除できるケースも多くあります。

実際に削除申請を行う場合、不安であればインターネットのトラブルに強い弁護士に相談すると安心です。万が一、法律で対処できない書き込みであった場合には、風評対策を専門にしている会社に相談してみましょう。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。