オンライン上での発言が容易で誰でも簡単に情報発信が出来る一方、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化し、被害が後を絶ちません。安易な気持ちで書きこんだ投稿によって、実在する企業や個人の名誉が著しく損なわれてしまうなどの風評被害が発生しています。
ネット上で誹謗中傷が起こった時の影響や、もし被害に合ってしまった時の対処法などを紹介します。
インターネット上の誹謗中傷が及ぼす影響
スマートフォンを開いてニュースを見たり、SNSを開けば、毎日のように企業や政治家、芸能人についての誹謗中傷が投稿されているのを目にするという状況があります。
インターネット上は公共の空間であるはずなのに、なぜこのような誹謗中傷が後を絶たないのか、また実際に誹謗中傷を書き込む加害者や、書き込まれた被害者側にはどのようなことが起こっているのか、見ていきましょう。
なぜ、誹謗中傷が書き込まれるのか
引用 :twitter
オンライン上では、Web会議などを行わない限り、相手の顔を見て発言するという機会が少ないです。SNSが普及し、1人の発言が大多数の人に拡散しやすいという状況が当たり前のものとして、私たちに用意されています。
誰しもが、特定の会社や人物に対して批判している状況があるため「みんな言ってるから」という、気持ちが働いてしまい、無意識のうちに批判的な言動や激しい表現を用いて、攻撃的な発言を投稿してしまうことがあります。
また掲示板やSNS上では、自分の名前を明かさずに、気軽に発言することができます。「匿名性」を盾にして、身柄を明かすことなく、自分を守ることが出来るため、ある人物や特定のトピックについて、批判的な発言がしやすいのです。
上の画像は、ツイッター上である企業の労働環境について言及されたツイートです。ツイッターは短い投稿で自分の名前を明かさずに投稿できるため、誹謗中傷が起こる確率が非常に高く、拡散しやすい媒体です。
投稿しているユーザー本人は悪意がなかったとしても、公の場で投稿されてしまうことで、発言力・拡散力が強まることで、誹謗中傷被害に発展してしまうのです。
誹謗中傷を書き込んだ加害者側に及ぶ影響
もしも自分が誹謗中傷を書き込んだことにより、対象となる会社や個人の名誉が低下したり、社会的な地位の低下をもたらした場合、相手方から訴えられてしまう可能性があります。
気軽な気持ちや、悪ふざけによって行った書き込みによって、罪に問われたり賠償請求されることもあり得るのです。
誹謗中傷を書き込んでしまう人は、攻撃的な書き込みを行うことでストレス発散する場合があります。このような人は理性を失って、相手方に与える影響を考えていないことが多いです。このような投稿がSNSや掲示板の拡散力に乗ることで影響力を増して、被害が拡大してしまうのです。
匿名で投稿できるからといって無差別に投稿したとしても、インターネット上の発言は何らかの記録が残ります。
SNSを使用していればアカウント情報を登録する必要があり、また掲示板で匿名で投稿した場合にも、書き込みを行ったコンピューターがインターネットに接続する時のIPアドレスが記録されます。
投稿した発信者の情報は調査を行うことで追跡可能なため、匿名で投稿を行っていたとしても、発信者本人の情報は明るみにされて罪に問われてしまうこともあるのです。
被害者側に及ぶ影響
引用 : Google
SNSや掲示板でネガティブな書き込みをされると、その媒体の利用者が閲覧するだけでなく、書き込まれた内容が、Googleなどの検索エンジン上に表示されてしまいます。
検索エンジン上では、企業名や個人名で検索をかけると、その名前に関連した評判や口コミが上位に表示される傾向が強いです。ある会社に入社しようと考えている人が、社名を入力して検索し、ネガティブな内容が投稿された転職サイトを見つけてしまったとしたら、入社する意欲が消えてしまうでしょう。
また検索候補にネガティブワードが現れてしまうことがあります。上の画像は、ある企業名で検索した時に「事故」というワードが表示されている例です。過去に社員が事故にあったことが報道されたことで、ネットユーザーに繰り返し検索されることで、このような表示が現れてしまうのです。
このような風評被害は、どのような影響を及ぼすのか、企業名・個人名の場合、それぞれ見ていきましょう。
企業の場合
- ブランドイメージの低下を招く
- 顧客離れ、取引先へのイメージダウンを及ぼす
- 採用活動に支障が出る
企業の場合には、ネガティブな投稿により商品や会社自体のブランドイメージが低下して、消費者や取引先のイメージがダウンします。また採用活動に影響が出て、良い人材が集まりにくくなります。
そして事態が深刻化することで、売り上げの低下や株価の下落、株主からの批判に発展することもあり得ます。
個人の場合
- 社会的評価の低下
- ビジネスへの悪影響
- 精神的な負担
個人の場合には社会的な評価が落ちてしまい、本人の仕事へ悪影響が及びます。また知人や親戚からの目が冷たくなってしまうこともあり、精神的な打撃を受けてしまうことが多いです。
また会社員の場合には、誹謗中傷の状況が会社側に把握されてしまうことで、社内における評価の低下を招いてしまうことがあります。
政府が規制のルール化を検討している
個人名の誹謗中傷被害の影響を思い知らされる出来事として、2020年5月23日の女子プロレスラー木村花さんの急死の報道が挙げられます。個人に誹謗中傷が集中してしまう事の危険、痛ましさを実感させられずにはいられません。
このような被害を防ぐために、SNSのプラットフォームを提供する企業に一定の責任を課したり、誹謗中傷投稿した人への罰則を設けるなどの法的なルール作りについて、国会議員も検討を始めている状況があります。
参考:ネット上の誹謗中傷、規制検討へ 与野党「ルール化必要」|毎日新聞
インターネット上の誹謗中傷による罪
それでは現在の法律上で、インターネット上の誹謗中傷はどのような罪に該当するのか見ていきましょう。
名誉毀損
ネット上の誹謗中傷による罪の一つが名誉毀損です。刑法上では「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が名誉毀損の罪に問われると定義されています。
「公然」とは、不特定多数の人が認知できる状況にすることを指しますので、掲示板やブログ、SNSで投稿することは「公然と」の要件に該当します。
「事実を摘示」とは、存否を確認できる事項を指摘しているかどうかを指し(なお、本当かどうかとは無関係です)、「人の名誉を毀損」とは該当の人物の社会的な評価を下げることを指しています。
つまり、実名を挙げて「〇〇は不倫していた」とか「〇〇は前科がある」と書きこんだ場合は、名誉毀損に該当します。
侮辱罪
名誉毀損に類似した罪で「侮辱罪」があります。これは「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が罰せられます。名誉毀損罪と違うのは「事実を摘示しない」という点です。
引用:刑法 第二百三十一条|電子政府の総合窓口(e-Gov)
「〇〇は無能だ」「〇〇はブラック企業」など、個人の主観で相手方を罵ったりした場合には、侮辱罪が問題になります。
インターネット上の誹謗中傷に対処する方法
もしも、自分が誹謗中傷の被害者となってしまったら、どのように対応すればよいのでしょうか。
掲示板やSNS、ブログなどに誹謗中傷が投稿されてしまった場合には、運用元に対して、自分で削除申請を送ることが可能です。多くのユーザーが使用しているサイトであれば、利用規約などに、削除についてのガイドラインが定められていて、これに従い削除の申請を送ります。
しかし、自分で削除申請を行うのは時間と労力が必要です。弁護士や誹謗中傷対策業者に相談することで、問題解決の確度を高めることが出来ます。
弁護士に誹謗中傷の記事削除を依頼する
弁護士に依頼することで、削除の申請を代行してもらうことで可能です。法律の専門家である弁護士を味方につけることで法律的な対処の必要性を明確にして、サイトの管理者に申請してもらえます。
もし管理者側が応じてくれない状況であれば、記事削除を命じる「仮処分」という決定を得る裁判手続を取ることも検討できます。
また誹謗中傷を書き込んだ投稿者を特定するための開示請求を行ったり、相手方への損害賠償請求についても相談できます。
誹謗中傷対策業者に相談する
弁護士に依頼した場合でも法的な理由が不十分な場合は、削除出来ない場合もあります。また投稿そのものを削除出来たとしても、拡散したネット上の情報すべてを消せるわけではありません。
誹謗中傷対策業者に相談することで、ネガティブな情報が書き込まれたページがGoogleなどの検索結果に表示されにくくするようにする対策について、提案を受けることが出来ます。
これにより、誹謗中傷が多くのユーザーの目に届くのを防ぎ、拡散による2次被害防止になり、企業や個人の信用力低下に歯止めをかけることが可能です。
まとめ|誹謗中傷被害を防ぐのは、インターネット上のルールとマナーを守ることが第一歩
インターネット上のSNSや掲示板は時間や場所、自分の身分に縛られずに、自由な発言を行うことを可能にしてくれます。しかし投稿のモラルやマナーは情報の発信者に委ねられる部分が多いため、1人1人が発言に配慮することが必要です。
相手を傷つけてしまう投稿や害を与えてしまう発言は控えましょう。また自分が被害者になってしまったら、被害が拡大してしまう前に、弁護士や誹謗中傷対策業者に相談して専門家の意見を求めましょう。
ネットの誹謗中傷、風評対策のプロがお悩みを伺います。
風評サイトやサジェストのお悩みのほか、SNSや口コミサイトの監視など、幅広くご対応可能です。
清水 陽平