スマートフォンの普及に伴い、現在SNSは私たち個人にとっても企業・団体にとってもなくてはならないものとなりました。
わたしたちは友人や家族、好きな企業とつながって情報を取得したり自ら情報を発信したりすることができるようになり、また企業や団体は、新規ファンを増やしたり既存ファンとのコミュニケーションを深めたりできる場としてSNS活用に力を注いでいます。
メリットも多いSNSですが、一方ではTwitterをはじめとしたSNSでは頻繁に炎上騒動が発生しています。
小さな書き込みが火種となり時には地上波のメディアや新聞に取り上げられ、企業のトップが謝罪会見をするまでに発展することも珍しいことではなくなりました。
ここではSNSによる企業の炎上リスクと、それに対応するSNSリスクマネジメントについて解説します。
企業におけるSNSリスクとは
早速ですが企業におけるSNSリスクとはなんでしょうか?
一番イメージしやすいのは炎上騒動でしょう。企業のSNSが炎上すると企業の評判や好意度の低下、ブランド価値へ悪影響を及ぼすことがあります。
2019年版情報通信白書では、「炎上」を以下のように定義しています。
「炎上」とは、「ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」「特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる」状態である。
出典 総務省『令和元年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114300.html
ひとたび拡散されて炎上騒動に発展してしまうと、騒動の内容は未来永劫残り続け取り返しがつかないことになってしまいます。
このSNS炎上の拡大にはスマートフォンの普及が起因しています。
総務省の調査によると2017年時点で13歳~59歳の個人のインターネット利用者の割合は90%を超えています。
◆個人のインターネット利用者の割合の推移◆
出典 総務省『平成30年度版情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html
また、スマートフォンの個人保有率も年々右肩上がりです。
◆スマートフォンの個人保有率の推移◆
出典 総務省『平成30年度版情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html
スマートフォンの普及と個人のインターネット利用率の上昇に伴い、日本国内での炎上発生件数は2011年から増え続けています。
◆国内における炎上発生件数推移◆
出典 総務省『令和元年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114300.html
このように今は炎上しやすい時代であり、その土台が十分に整っているといっていいでしょう。傍から見れば非常に些末な問題で炎上している事例も多く存在し、100%防ぎ切ることは非常に難しくなってきています。
しかし、ここで企業に求められるのは「SNSを腫れ物者扱いする」ことではなく「SNSリスクマネジメントを学んだうえで正しく向き合い活用すること」です。
自社のSNSアカウント運用をしていなくても従業員や第三者の発言がきっかけで炎上することは多くあるケースです。
SNS炎上のメカニズムと正しいSNSリスクマネジメントの手法を知ることがSNS炎上のダメージリスクを最小限に抑える唯一の方法です。
SNS炎上のプロセスとメカニズム
SNS炎上のパターンは様々で一見すると「メカニズムなんてものはないその場の直情的な現象ではないのか」という指摘もあると思います。
しかしフタを開けてみると、キッカケそのものは様々ですがその後の拡大まではほぼ同じような流れを辿ることが多いです。
まずはSNS炎上のメカニズムとその事例について学び、落ち着いてリスクマネジメントできる知識を身につけましょう。
SNS炎上のメカニズム
炎上は下記の図の様に「1次炎上」「2次炎上」「3次炎上」と拡大していきます。
SNSにおける1次炎上
1次炎上は原因となる事象、つまり「火種の発生」を指します。火種の種類は様々ですが、ここに例を紹介します。
- 公式アカウントからの不適切な投稿アカウント切り替えミスによる投稿(誤爆)
- 従業員による不適切投稿(業務に関係あるなしに関わらず)
- 不祥事の告発
- サービスの欠陥や瑕疵の告発
- デマやフェイクニュースなど
このような内容がSNSに投稿されると「火種が発生」したことになります。この火種はリアルタイムで書きこまれているものでだけでなく、数か月前や数年前のものが突現炎上することもあり得ます。
SNSで投稿を発信した段階で世界中の人に見られている、コピーを取られている意識が必要です。
SNSにおける2次炎上
2次炎上は「ネット上で炎上」していることを指します。
まずは火種を目にしたインフルエンサーなどに当該投稿にコメントしたりリツイートされたりすると、繋がっている数万~数十万のフォロワーにも伝わりSNS上での炎上が発生します。
SNS上での炎上が発生するとまとめサイトやYahoo!ニュースなどのネットニュースに取り上げられることがあります。多くの読者を抱えているこれらのサイトに掲載されてしまうと、一層多くのユーザーに「炎上案件」として認識されることとなります。
まとめサイトやネットニュースで取り上げられたSNS炎上解説記事を読んで興味をもったユーザーが原因となった投稿やコメントを見に行き、自分自身も批判コメントを付けたりリツイートしたりする場合があります。
普段はさほどSNSを利用していないユーザーにも、この炎上に対する認知が広がっていきます。
SNSにおける3次炎上
最後の3次炎上は「テレビや新聞などのマスメディアに取り上げられる」ことを指します。
総務省の調査では”ネット利用頻度が高くネットニュースによく接する者は、まとめサイト等で炎上情報を知ることが多いが、平均的日本人の多くはテレビによって情報を得ることが指摘されている”との見解を示しており、実際に炎上を知ったきっかけを聞いた調査によると一番割合が多いのが「テレビのバラエティ場組」、いわゆるワイドショーという結果が出ています。
◆「炎上」の確認経路◆
出典 総務省『令和元年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114320.html
ニュース番組やワイドショーなどのテレビ番組や新聞や雑誌で特集をされてしまうことで、SNSの炎上は社会的な事件として日本中に知れ渡ることになります。さらにマスメディアに取り上げられた内容を基にSNSやネットニュースで炎上が拡大することになります
ここまでくるとSNS炎上の拡大を止めることや隠ぺいを図ることは不可能です。SNS炎上騒動に巻き込まれた企業や個人は経済的にも社会的にも甚大な損失を被る可能性が高いでしょう。
このような事態を防ぐためにあるのが「SNSリスクマネジメント」です。
SNSリスクマネジメントとは
SNSリスクマネジメントとは、SNSを火種として発生する炎上の拡大を防ぐための
- 火種を発生させない体制づくりと教育
- 火種をいち早く察知する仕組みづくり
- 2次炎上までで食い止める体系的な知見の構築
を包括して指し、様々な要因で起こるSNSリスクに対して対応できる準備をすることです。
SNS担当者や広報担当、経営者が取り組むべき対策や従業員全員で取り組むべき対策が存在するので、全社的な活動が求められるのが大きな特徴です。
大事なことは防ぐことが出来る炎上は徹底的に防ぎ、防ぐことが出来ない炎上はダメージを最小限に抑えることです。
SNSリスクマネジメントを実践する方法
具体的にSNSリスクマネジメントをするにはどのような手法があるのでしょうか。
2019年ごろに世間を騒がせた保険商品の不適切販売を行っていた会社では社員に対するSNS利用の全面禁止令が大きな話題を集めました。
このSNS全面禁止令は、当該内容のメールが従業員のSNSを通じてあっという間に拡散されてしまい、結果的に最悪のSNSリスクマネジメントになってしまいました。
炎上の鎮火はおろか、本来の保険商品の不適切販売とは全く関係ないところで余計な炎上騒動を増やすことにもなってしまいました。
このような事態を防ぐためにも正しいSNSリスクマネジメントを学ぶことが大切です。
SNSリスクリテラシー研修を行う
SNSリスクマネジメントにおいて一番意識することはSNS利用を禁止することではなく「従業員のSNSリテラシー&モラルを向上させる」ことです。
そのためにおすすめなのはSNSリスクリテラシー研修を実施することです。
若手には学生気分の延長で使うと痛い目を見る上に社会的な制裁を受けるかもしれないこと、ベテラン層にはひとつひとつの発信が相手に届いてしまうこと、それによって相手が傷つき自分に返ってくる可能性があることを啓蒙する必要があります。
研修は内製でもよいですし、社外サービスを利用するのもよいでしょう。研修内容は、SNSの基本知識や正しい使い方、炎上予防策が網羅されているものが望ましいです。
特に普段から企業の風評などに触れている専門業者にアドバイスしてもらうのがおすすめです。
SNSガイドラインを策定する
SNSリスクリテラシー研修と並行してSNSガイドラインを策定することも有効です。研修のなかで従業員がSNSを利用する際のルールを浸透させるとより効果が出るでしょう。
業務利用・プライベート利用を問わず従業員がSNSを使う際の心構えや注意点、トラブルが起きた場合の社内緊急連絡先や対応方法などをまとめておくとよいでしょう。
従業員1人1人の危機管理意識が高まり炎上予防につながり、万が一炎上が発生したときには企業として適切かつスピーディーな対応がとれるようになります。
例えば、日本・コカ・コーラ社のように社内資料をあえて社外公開することも有効なSNSリスクマネジメントのひとつです。ルールが対外的にも明確化され、従業員だけではなく顧客となるユーザーやステークホルダーを安心させることができます。
SNS監視を行う
SNSリスクリテラシー研修とSNSガイドラインの策定が予防のSNSリスクマネジメントならば、SNS監視は早期発見・早期鎮火のSNSリスクマネジメントです。
いち早くSNSリスクの火種を察知し迅速な対応の準備を整えるのに必要不可欠です。
毎日SNSを担当者が確認するのは非常に大変な作業なので専用のツールを導入するか、WEBモニタリングを専門で行っている業者に依頼することをおすすめします。
またSNS監視と合わせて炎上やその他SNS上のトラブルが発生した際の対応フローを作っておくとよりリスクマネジメントの精度が向上します。トラブルの種類や原因にあわせて「どの部署のだれが」「どんなルールに基づいて」「どんな判断対応を行うか」などをあらかじめ関係部署で協議し共有しておくことが大切です。
まとめ|SNSリスクマネジメントは全社的な取り組みが大切
冒頭でも述べたとおり、スマートフォンとSNSの普及に伴いSNS炎上しやすい土壌が整っている世の中です。
SNS炎上のメカニズムを理解した上で、防ぐことが出来る炎上は徹底的に防ぎ、防ぐことが出来ない炎上はダメージを最小限に抑えるために予防と早期発見・早期鎮火をテーマにSNSリスクマネジメントを実施しましょう。
弊社でもSNSリスクマネジメントのための研修サービスをご提供しております。詳しくは、以下のページをご覧いただけますと幸いです。
大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。
企業の風評対策実績10年以上のプロフェッショナルが、炎上を知り、未然に防ぐための社員研修を代行致します。
その他にもネット上の投稿、口コミの監視など、炎上予防や風評対策のための様々なご提案が可能です。
清水 陽平