ネット炎上予防

レピュテーションリスクとは?意味や事例、回避方法を初心者向けに解説

レピュテーションリスクとは?正しいリスク対応を知ろう

レピュテーションリスク、という言葉を聞いたことはあるでしょうか?現代における会社経営において、このリスクとインターネットは切っても切り離せない関係にあると言っても過言ではありません。

本記事では、レピュテーションリスクという言葉の意味をはじめ、企業の持つリスクの測定方法や正しいマネジメント(回避)方法について、初心者にもわかりやすいよう丁寧に解説します。

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レピュテーションリスクとは

レピュテーションリスクとは
まずは、「レピュテーションリスク」という言葉の意味について解説していきます。

レピュテーションリスクとは一体どんな意味を持つ言葉なのでしょうか?小学館の「日本大百科全書」によると、以下のように定義されています。

企業などの評判(レピュテーション)が悪化する危険(リスク)のこと。評判リスク、風評リスクともいう。否定的な評価が広まると、企業の信用やブランド価値は短期間のうちに低下する。たとえば、「アルバイトがレストランの厨房(ちゅうぼう)内で悪ふざけをしている画像をTwitterなどで配信した」「メニューに高級食材を表記しておきながら、実際には異なる食材を使用していた」などといった悪評が広まることで、リスクが顕在化する。こうした悪評はツイッターやブログなどインターネット上の書き込みを通じて広がり、それを追いかけるようにしてマスコミが取り上げるため、一気に増幅しやすい。企業側はすばやく適切な対応をとらなければ存亡の危機に追い込まれることもある。

引用:コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

レピュテーション(=reputation)とは英語で「評判」「世評」「名声」などという意味の言葉です。リスク(=risk)は同じく英語で「危険」「おそれ」を意味します。そのふたつの言葉を合わせて「レピュテーションリスク」とは「評判が悪化する危険」という意味になるのですね。

「レピュテーション」と「ブランド」の違い

レピュテーションと似たような概念に「ブランド」という言葉があります。

「ブランド」という言葉の由来は、自分の家畜を他人のものと間違えないように焼き印を押していたというエピソードの「焼き印を押す(=Brander)」にあると言われています。その由来からも想像できるように、「ブランド」は「自社の商品やサービス」と「他の会社が提供する同じカテゴリの商品やサービス」を差別化するための概念だと解釈する事ができます。

さらに言うと「ブランド」は、商品やサービスを提供する企業が他人から「こう見られたい」と思い発信されたイメージや価値の具現化とも言えます。企業の方から「価値」を演出し、サービスを受ける側がそれを受け入れる事によって確立されていくものです。

一方、「レピュテーション」は先ほども解説したように評判や世論といった意味となります。ブランドが「(企業側がユーザーに)見られたい姿、演出している姿」だとすると、レピュテーションは「(ユーザーから企業が)見られている姿」と表現する事ができます。

以上を踏まえて言える「ブランド」と「レピュテーション」の大きな違いは、「ブランド」は企業の理想像であるためポジティブなイメージになりますが、「レピュテーション」はユーザー発信の評価であるためポジティブとネガティブ両方が存在し得るということです。

具体的なレピュテーションリスクの例とは?

具体的なレピュテーションリスクの例とは
それでは、具体的なレピュテーションリスクの事例をいくつか挙げてみましょう。

従業員やイメージモデルなどの起こす不祥事

パートやアルバイト、社員、役員に関係なく、従業員の起こす不祥事はレピュテーションリスクのひとつと言えます。

もっと具体的に言えば、飲食店に務めるアルバイト店員が衛生管理を疑われるような悪ふざけを行ったり、接客を伴う店舗に務める社員が客として来店した芸能人の個人情報を公の場で公開したりすることです。

さらに、商品PRのために起用したイメージモデルが起こす不倫などの不祥事も、巡り巡って起用した企業のレピュテーション悪化の原因に繋がる場合があり、商品の不買運動が起こったり不穏なイメージが付いたりするなど企業の経営悪化に繋がります。

劣悪な労働環境

労働における不当な拘束時間の長さや残業代の未払いなど、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれる労働環境もレピュテーションリスクと言えます。また、企業が努力していたとしても、様々な理由から労働環境に不満を持つ従業員が出てきてしまう場合があります。

労働環境に関する悪評が広まると、現在いる従業員のモチベーション悪化やクライアント離れに繋がるだけではなく、当然新たに企業に応募する人材もいなくなっていきます。

商品クオリティ・サービスの悪化

企業が何か大きな不祥事や事件を起こした訳ではなくても、企業の評判が下がることがあります。その理由のひとつとして、商品クオリティや提供サービスの悪化が挙げられます。

身近なもので言えば、「価格は変わらず、商品のボリューム(量)が減少している」「同じブランドでも店舗によって顧客への対応が異なっている」「(ゲームや電子機器などの)不都合がよく起こる・デバッグが行き届いていない」などの事象が当てはまります。

顧客の企業に対する期待が大きければ大きいほど、こういった商品クオリティやサービスの悪化は「裏切られた」と感じ、大きな落胆を生みます。代替が利くものであれば、別のサービスや商品に客が流れてしまう場合もあります。

レピュテーションリスクのマネジメントが企業にとって重要である理由

レピュテーションリスクのマネジメントが企業にとって重要である理由
なぜ、現代においてレピュテーションリスクのマネジメントが重要視されるようになったのでしょうか。その大きな理由の一端として、手軽にインターネットへ接続できるスマートフォン、及びSNSの普及が挙げられます。

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リアルタイム性・拡散性の高いX(旧:Twitter)はとくに注意

インターネットの普及によって、個人がそれぞれSNSやブログなど自己発信の場を持つようになりました。SNS、とくにX(旧:Twitter)は個人のアカウント発行が簡単にできるために多くの人が利用しています。

「つぶやき」という特性上、情報収集能力の高いヘビーユーザーは多くの人がリアルタイムに見ている可能性が高い事も特徴のひとつです。

X(旧:Twitter)の公開アカウントでは個人が発信した情報でも、その投稿を見たフォロワーがボタンひとつ押すだけで情報をリポスト(拡散)でき、さらにその人のフォロワーに情報を見てもらえます。

関連性の高いハッシュタグを投稿内に入れればフォロワー外の人も簡単に検索でき、同じようにボタンひとつでリポストが可能です。

Xは情報の拡散能力が高いツールでもあり、拡散方法の手軽さから情報の正誤をよく確認しないままリポストを行う人も少なくはありません。

Twitterの公開アカウントに投稿された情報は、文字通りインターネットを通じて全世界に公開されます。

つまり、今までは個人メールやお問い合わせフォームなどのクローズドな環境で発信されていた企業に対するネガティブな意見や批判、内部告発さえも現代ではXをはじめとしたSNSやブログなどオープンな場で発信されるようになったということです。

誰でも手軽に「情報を世界へ発信」できる時代である事を念頭に置く

その他にも、SNSであればInstagramなどもアクティブなユーザーが増え続けていますし、オンラインショップや評判サイトなどには実際にサービスを受けた人からの口コミも多く寄せられます。また、様々なサイトからレピュテーションを集めた「まとめサイト」も一部のユーザーにとっては情報源のひとつとなっています。

一度インターネット上に投稿された情報は、該当の単語で検索をすればいつでも閲覧する事が可能になります。また、その情報は簡単に複製や再公開が出来ます。

SNSの鍵アカウント(フォロワーしか内容を見ることができないアカウント)に投稿した情報であっても、フォロワーがスクリーンショット等で複製し別の公開アカウントで公開すれば、その情報は全世界から閲覧可能になります。

つまり、インターネット上で企業の抱えるレピュテーションリスクが顕在化してしまった場合、その情報は瞬く間に拡散され、複製・再公開されながら多くの人の目に触れてしまう恐れがあると言う事です。

インターネットおよびSNSなどの普及は、企業の抱える「レピュテーションリスク」がいつ不特定多数の人物に知れ渡るかわからないという状況を生み出しました。これが、企業がしっかりと自社のレピュテーションリスクをマネジメントすべきだと主張する理由です。

レピュテーションリスクを上手にマネジメントするには?

レピュテーションリスクを上手にマネジメントするには?
さて、「レピュテーションリスク」はどんな企業も身近なリスクとして抱えているものであり、インターネットの普及によっていつリスクが顕在化し、実害を被ってしまう状況になるのかも分からないと説明しました。

しかし、リスクを上手くマネジメントする事によってレピュテーションリスクの顕在化に備える事は可能です。

一般的にリスクマネジメントの方法は、「回避」「保有」「軽減」「移転」の4つに分けることができると言われています。

ここからは、この4つの観点からレピュテーションリスクの対応方法について見ていきましょう。

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レピュテーションリスクを「回避」したい

「回避」はリスクそのものを取り除く事を言います。例えば、極端な例ですが「企業の公式Xで不適切な発言をしないよう、公式アカウント自体を削除する(更新をやめる)」などの事を言います。

上記の例に違和感を持った方もいると思いますが、リスクの完全な「回避」をするには、そのリスクを保有することによって得られる利益も同時に手放してしまう場合が多く、あまり現実的とは言えません。

レピュテーションリスクの「保有」は免れない

「保有」とは、とくにリスクへの対策を行わず、リスクがある事実を受け入れている状態のことを指します。これは、リスクによる被害を自社内で解決できる場合だけではなく、リスクのマネジメント方法がわからない、またはマネジメントにかかる予算を割けないなどの理由によりやむを得ず受け入れるしかない場合も指します。

「レピュテーションリスクは分かったけれど、どうマネジメントするのが自社にとって最適な道なのかわからない」と考えているなら、それはリスクを「保有」している状態だと言えます。

そこで、今すぐにでも実行できる「軽減」と「移転」という方法について考えていきましょう。

レピュテーションリスクを「軽減」するには

リスクの「軽減」とは、顕在化しそうなリスクの影響力を先回りして下げておくという事です。対策を行う前に、まず自社のレピュテーションリスクをしっかりと把握する事が肝心です。

【自社のレピュテーションリスクを測定するために行うこと】

  • 会社関係者の意見をくみげる
  • 世論調査を積極的に行う

まずは、会社関係者の意見をヒアリングしましょう。会社関係者とは、自社の従業員だけではなく、クライアントや株主なども含みます。

また、ここで言う世論調査とは、大々的なアンケートといった意味だけではなく、世論の拾いやすい場所(XやInstagramなどのSNS、掲示板のコメント、ブログ)を調査するという事も含みます。もちろん、検索エンジンで会社名や商品名を検索してみるのも良いでしょう。

自社の抱えるレピュテーションリスクが分かったら、リスクが軽減できるように対策を行っていきます。具体的な「軽減」の対策方法を見てみましょう。

ソーシャルメディアガイドラインの策定

「バイトテロ」「バカッター」などの単語を目にする機会が増えた事からもわかるように、現代におけるレピュテーションリスクの顕在化の背景にはインターネットの普及、とりわけSNSなどのソーシャルメディアの流行が大きく関わっていると言っても過言ではありません。

個人が自由にSNSなどのアカウントを作り、各々に発信を行う事が可能である現状を変える事は困難です。そこで、ソーシャルメディアガイドラインを策定して社員に共有し、正しい使い方を理解してもらう事によって、企業アカウント及び個人アカウントの炎上防止を促しましょう。

全社員ひとりひとりがインターネットの正しい使い方を理解することで、ソーシャルメディアを通したレピュテーションリスクの顕在化を抑える事に繋がるのです。

リスク対策のための社員研修を行う

こちらもガイドラインの策定と趣旨は似ていますが、外部のネット炎上やレピュテーションリスクの回避に詳しい会社を呼び、プロの視点からのアドバイスを貰ったり研修を行ってもらったりする事も有効です。

こういった研修を取り扱っている業者によっては、過去に起こったレピュテーションリスクの顕在化を元にしたシナリオを使い防災訓練のような研修を行ってくれる場合もあります。

実際にSNSなどで炎上が起こった場合を想定し、自分たちで対応から鎮火までのプロセスを追体験する事で、リスク顕在化に伴う信用失墜の度合いや損害の大きさだけではなく、自社にはどんな対応策が必要なのか、適切な対応のために何が足りていないのかも知る事が出来ます。

弊社でもSNSに関するリスクリテラシー研修を承っております。必要な研修内容だけを選択できるカスタマイズ式の研修となりますので、SNS研修をご検討される際にはぜひ参考にしてみていただければと思います。

監視ツールの導入

最後に、インターネット上でレピュテーションリスクが顕在化しやすい場所である「検索エンジンのサジェスト(関連検索ワードなども含む)」「SNS」「インターネット掲示板」などに書き込まれた特定のワードを監視できるツールの導入です。

これらのチェックは、もちろんツールが無くても行えますが、監視を行う人員を社内から出す場合は他の業務が滞ってしまう恐れがあります。監視専用のツールを利用する事によって検索語句を毎回打ち込む必要がなくなるため、チェックにかける時間の短縮になります。

さらに、ツールの機能によってはレピュテーションリスクの顕在化に繋がる可能性のある危険なワードが投稿された場合にメールなどで知らせてくれる機能が備わったものもあります。

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レピュテーションリスクを「移転」するとはどういう意味か?

最後のリスクマネジメント方法として「移転」が残りました。リスクの「移転」とは、例えばリスクの顕在化に備えて保険に加入したり、運用や監視を外部の業者に委託して自社の業務範囲から外してしまったりすることなどを言います。

リスク「軽減」の項目では監視ツールの導入を対策方法として挙げましたが、監視ツールではなく、わざわざ外部の有人監視サービスを行っている業者に監視を委託するメリットとしては以下を期待できます。

  • 社内から監視を行える人員を割けない場合でも監視が可能
  • 監視を外部に委託した事により自社の社員は社内の人にしかできない創造的な仕事に時間を割く事ができる
  • 監視ツールでは監視困難な、ログインの必要なサイト(評判系口コミサイトなど)の監視も可能
  • 有人による目視での監視なので、炎上に繋がる投稿であるかどうかの判断の精度が高い
  • 監視のプロに任せるので、自社で監視を行うよりもリスクの顕在化を上手く察知できる
  • リスクが顕在化した際には速やかに報告があるだけではなく、対処方法のコンサルティングを行ってくれる業者も多い

逆にデメリットは、監視のプロによる有人監視となるため自動の監視ツールに比べて料金が高くなってしまう点だと言えます。

この方法で企業の抱えているレピュテーションリスクを全て移転する事は難しいと言えますが、現代において一番深刻であるインターネットに関するレピュテーションリスクの一部をプロに移転する事によって、有事の際にも素早く適切な対応をとることができます。

まとめ|レピュテーションリスクを上手くマネジメントして会社を守る体制を万全に!

レピュテーションリスクを上手くマネジメントして会社を守る体制を万全に
レピュテーションリスクとは、企業や商品などの評判(=レピュテーション)が悪化する危険(=リスク)の事を言います。

インターネットが普及し、個人が自由に公衆の場へ発言する事が可能になった現代では、このリスクを完全に回避することは極めて難しいと言えます。だからこそ、自社の抱えるレピュテーションリスクを正しく把握し、しっかりとリスクマネジメントを行う必要があります。

万が一リスクが顕在化してしまった場合でも、しっかりとマネジメントを行っていれば早急に適切な対処を行う事が出来ます。

ソーシャルメディア利用におけるガイドラインの策定・共有や炎上の際の対処方法などを社内で確認し備えておく事はもちろん、リスクをいち早く察知できるように外部の有人監視サービスなどの利用を検討してみるのもおすすめです。

レピュテーションリスクを上手にマネジメントし、どんな時でも会社を守っていける体制を整えておきましょう。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。