世界的な新型コロナウイルス感染拡大に伴い「ニューノーマル」という言葉が誕生し、テレワークや在宅勤務の導入がおどろくべきスピードで加速しています。
そこで課題になるのが必然的に触れる時間が多くなるSNSのマナーやリテラシーの向上です。常にインターネットに触れることになれば様々なトラブルのリスクが上昇し、SNSマナーやリテラシー研修は企業にとっても無視できない存在になっていいます。
ここではSNSマナー研修を受けるべき対象者や、考えうるリスク、研修業者の選定ポイントなどを解説しています。
新入社員がSNSマナー研修を受ける目的とメリット
新入社員にSNSマナー研修を行う目的はスマートフォンやSNSの利用には仕事とプライベートの垣根をしっかり作ってもらうことにあります。
新入社員に対してはどの企業も研修を実施していると思います。ビジネスマナーや基礎業務、コンプライアンスやファイナンスなど伝統的に実施している研修を毎年行っていることも少なくはないのでしょうか。
IT研修に関してもハードウェアの取り扱いや社内システムの扱い上の注意点など社内業務を円滑に行うための研修に留まっていることも多く見られます。
しかし新入社員の世代はデジタルネイティブと呼ばれている世代であり、プライベートでもスマートフォンを駆使し毎日インターネットに触れているのが当たり前の世代です。
総務省の調査によると、20代では実に98.7%がインターネットを利用。また20代の87.1%がSNSを利用しているデータがあります。
新入社員のSNSに関するマナーは学生時代の狭いコミュニティ内で形成されていることが多く、社会人になって思わぬトラブルに遭遇する可能性もあります。
小さなころからスマートフォンとSNSに触れているからといってリテラシーが高いとは限らないので要注意です。
役職者がSNSマナー研修を受ける目的とメリット
役職者世代になると逆にスマートフォンやSNSは最近出てきたツールでうまく使いこなせていない、もしくは使っていない方も多いイメージを持っているかもしれません。
しかし、先ほどと同じ総務省のデータを見ると50代のインターネット利用率は92.4%、SNS利用率も78.4%となっています。
SNSに関するマナーやリテラシーは若者世代だけの課題であり、役職者には関係ないといった意見が全く的外れであることが良く分かります。
最近ではSNSで部下とトラブルになったり、テレビに向かって話す感覚でSNSに発信を行ったりした結果、訴訟トラブルに発展するなど管理離職世代のSNSマナーやリテラシー不足も少しずつ話題になってきています。
やはり役職者世代にも「SNS上でも仕事とプライベートの垣根を意識してもらう」ことは共通で「SNS上で匿名で発信しても身元は絶対にバレる」ことも強く研修を通じで学んでもらう必要があります。
SNSに潜むリスクやトラブルとは
実際にSNSマナーが不足しているが故に起きたトラブルを紹介します。リツイートをしただけで訴訟になってしまった例もあるのでぜひ参考にしてみてください。
2021年、バイトテロは再びトレンドに
2015年前後は多数の飲食店で同様の事例が頻発し連日ネットニュースやワイドショーのネタになっていたことを覚えている人も多いと思います。
近年では事例も減ってきたと思っていましたが、2020年後半ごろからまたバイトテロに関わる話題が多く登場してきました。
最近の事例は当時を知らない若い世代だけではなく、30~50代のバイトテロ事件も発生しているのが特徴です。
具体的なバイトテロ対策はこの記事で詳しく解説しています。
地震の騒ぎに乗じてデマをツイートして逮捕
2016年の熊本地震が発生した直後に「熊本の動物園からライオンが逃げた」というツイートが画像と共に投稿されました、
このツイートは1万7000回以上もリツイートされ、該当すると思われた動植物園には問い合わせなどの電話が100件を超えたといいます。
結果、問い合わせ電話の殺到で動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20歳の会社員の男が逮捕されてしまいました。
この事件は全国で初めて災害時にデマを流し業務妨害をし、逮捕されたものとして大きな話題になりました。
逮捕された男性は「悪ふざけでやってしまった」と当時話しており、ただの悪ふざけが人生に大きな影響を与えてしまうことになってしまいました。
他人のツイートをリツイートしただけで訴訟沙汰
自分のツイートは注意している人もリツイートは特に気にしていない人も多いのではないでしょうか?
この事件は「ただリツイートしただけなのに」訴訟にまで発展した事例です。
具体的な個人名への言及は避けますが、とある政治家について「部下をパワハラで自殺に追い込んだ」と言及されたツイートをリツイートしたジャーナリストがいました。
この政治家はリツイートをしたジャーナリストを相手取り、名誉毀損で100万円の損害賠償等を求め提訴しました。
この裁判は第二審まで判決が出ており、高裁判決では
コメントなくリツイートする行為について、元ツイートに社会的評価を低下させる内容が含まれる場合、リツイートによって自身のフォロワー(登録読者)に元ツイートの内容が表示されると指摘。
投稿を正当化する事情がない限り、リツイートの経緯や意図、目的を問わず、名誉毀損による不法行為責任を負うとの判断を示しました。
ジャーナリストは表現への自由への過度な制約だと意見しましたが、高裁では「投稿行為に際し社会から受ける客観的評価を低下させるものであるか否かについて、相応の慎重さが求められる」などと退けられました。
ただのリツイートだけでも発信の際は注意が必要なことがわかる例です。
SNSを利用する際に気を付けたいこと
SNSのマナーやリテラシー研修で特に伝えるべきメッセージはこの2つです。
- 匿名で発信しても身元は絶対にバレること
- SNSは「気付きを失う場」になるリスクがあること
匿名で発信しても身元は絶対にバレる
これまで何度か言及していますが、SNSやインターネットの上の発信が匿名でされていても、身元が絶対にバレないということはありません。
インターネットやSNS上での誹謗中傷では、発信者情報の開示を求め特定するまでの時間的経済的負担が大きいのが難点でした。
しかし2021年4月にプロバイダ責任制限法の改正案が可決され、現在1年ほど要している時間が数か月~半年程度に短縮されることが期待されています。
この法改正の背景には2020年5月に起きた、人気リアリティー番組に出演していた女性がSNSの誹謗中傷を受け自殺した、痛ましい事件があります。
この事件をきっかけに総務省の有識者会議で議論が進み、改正法が成立しました。
有名人やその所属事務所も、誹謗中傷に対しては発信者開示請求を行うと表明していることが増え始めています。
バイトテロももちろんですが、他人に対する誹謗中傷をインターネットに発信することは世界中の人たちにメガホンで叫んでいることと同義で考えることが大切です。
SNSは「気付きを失う場」になるリスクがある
SNSは自分に欲しい情報を選択して収集できる点がメリットと言われています。しかしそれは「自分にとって都合のいい情報しか収集しなくなる」デメリットを表裏一体であり、利用する際は注意する必要があります。
SNSは仕組み上この現象に陥りやすい構造となっており最近では「エコーチェンバー」「フィルターバブル」といった言葉で説明がされています。
エコーチェンバー現象
エコーチェンバー現象とは、SNSを利用する際に自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくる状況のことです。
エコーチェンバー現象では、同一コミュニティ内の見解には疑問が一切投げかけられず、増幅・強化されて反響し続けます。一方で、それと異なったり対立したりする見解は検閲・禁止されるか、すぐにかき消されてしまいます。
そうするうちに、たとえコミュニティの外から見た場合にどんなにおかしいことでも、それが正しいことだとみんなが信じてしまう恐ろしい現象が発生してしまいます。
インターネットやSNSのコミュニティは、国内だけでなく世界中の様々な考えの人々がいるように思えますが、実際はそれぞれのコミュニティごとに考えが断片化しています。
同じような考えの人々が集団として集まり、コミュニティを構成する全てのメンバーが特定の偏った方向に同じ意見を持っていることを認識しておくことが大切です。
フィルターバブル現象
このエコーチェンバーを発生させやすくしているのがフィルターバブル現象です。
フィルターバブルとはGoogleやYouTubeなどのアルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することによって、個々のユーザーにとって見たい情報が優先的に表示されてしまい、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立してしまう情報環境のことを指しています。
この現状は視野が狭くなることや、自分と異なる価値観・考え方に触れる機会が根本的になくなるリスクがあります。
情報がフィルターバブルによって取捨選択されてしまい、自分の知見を広げてくれるような情報や、自分にとって都合の悪いニュースを知る機会を失ってしまうことに繋がります。
フィルターバブルはエコーチェンバーを生み出しやすい土壌を作っています。そうならないためにも情報収集は特定のメディアだけではなく、TVや新聞、ラジオ、専門誌など幅広い情報収集を心掛け、多数の視点で情報を咀嚼するリテラシーが求められます。
SNSマナーを身に着けるために企業で実施すべきこと
紹介してきたようなトラブルを避けるため、企業ではSNSマナー研修を行うべきなのはもはや言うまでもありません。
より効果を最大化するためにはSNSガイドラインを策定して社内に周知を徹底したり、SNSマナー研修を外部講師に委託したりすることをおすすめします。
SNSガイドラインの策定
SNSガイドラインを策定して社内で周知徹底することはSNSマナーの定着に非常に有効です。
対内だけでなく対外に策定したこととその内容を発信することで、SNS炎上が発生した際も世間へのイメージアップを訴求することが可能です。
ガイドライン策定においては弁護士や専門家の監修を受けているガイドラインを導入するのがおすすめです。
自社で策定する場合は弁護士が徹底監修したこちらの記事を参考にしてみてください。
SNSマナー研修はどこに頼むべきなのか
あらゆる要素に気を配ったとしても社内リソースで行うマナー研修では社員に響かない可能性があります。
このようなマナー研修や教育は普段から企業の風評やSNSの運用などに触れている専門業者に任せるのがおすすめです。
トレンドを常に追いかけ、TVのニュースにはなっていないような事例などを交えてくれるので活きた知識になることが多いのが特徴です。
まとめ|SNSマナー研修は専門家に依頼するのがおすすめ
SNSに関するマナーやリテラシーはまだ体系化されたマニュアルが存在しているわけではなく、トレンドも日々変わっていくものなので悩んでいる担当者も多いと思います。
餅は餅屋ではないですが、専門的なテーマは専門家に任せることでより効果的で実際に則した研修ができるでしょう。
現代人に必須となったSNSのマナーやリテラシー、まずは専門家に相談をしてみるのがおすすめです。
大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。
企業の風評対策実績10年以上のプロフェッショナルが、炎上を知り、未然に防ぐための社員研修を代行致します。
その他にもネット上の投稿、口コミの監視など、炎上予防や風評対策のための様々なご提案が可能です。
清水 陽平