あなたは、コンプライアンスの重要性についてしっかりと説明できますか?
「コンプライアンス=法令遵守・社会規範」という通念的な認識だけでなく、時流に合ったコンプライアンスとの向き合い方や必要性、目的も正しく理解したいですね。
本記事では、企業コンプライアンスの重要性が問われる理由、さらには具体的な対策や社員教育のやり方まで紹介していきます。
自社で実効性の高いコンプライアンス対策を実施するために、必要な知識を身に付けましょう。
企業コンプライアンスの重要性が問われる理由
コンプライアンスとは一般的に「法令遵守」を指しますが、法律だけでなく、社会で守るべきルールや倫理観に基づいて企業活動を行うことと定義されます。
企業がコンプライアンスを破れば、社会や取引先等からの信用を失ったり、経営にも悪影響を及ぼします。
実際にコンプライアンス違反が大きな事件に発展したり、メディアで取り上げられる機会も増えてきたことで、対策を取る必要性を企業側も感じてきているのです。
コンプライアンス違反を生み出す背景
コンプライアンス違反が起こる背景も様々考えられますが、大きな要因の一つとして社内環境が挙げられます。
企業風土や経営体制等によって、無意識の内にコンプライアンス違反が常態化している可能性があるからです。
コンプライアンス意識が低い企業は、ルールや管理体制に関心が薄いため、社員にも浸透しづらいのが実状です。
また、最近ではSNSがコンプライアンス違反の温床となっていることも問題視されています。
コンプライアンス違反の事例紹介
コンプライアンス違反の種類も多岐に渡りますが、ニュース等でも報道され話題となった違反事例を紹介します。
自社でも同様の事象が起きないように、事例をふまえて未然に対策を講じておきましょう。
事例①:製品偽装
とある部品メーカーが、自社の製品の性能数値などを虚偽の内容で報告し、国土交通大臣からの認定を不正に取得していた問題です。
この製品は、実際に公共施設やマンション等でも既に使用されており、同社の子会社は不正競争防止法違反で起訴されました。
複数の製品で偽装事実を隠ぺいし、欠陥製品の販売を行っていたことで大きな問題となった事例です。
- 経営陣の一斉辞任
- 連結決算で600億円以上の損失
- 最終損益は120億円超で、会社は大幅な赤字
事例②:顧客情報流出
出版系の大手企業で、数千万件にのぼる顧客情報の流出が発覚した事件です。
原因は、外部委託業者の派遣従業員による不正なデータ持ち出しによるものでした。
この事例では、不祥事の出所が自社ではなかったにもかかわらず、結果として企業側も管理責任が問われることとなりました。
- 見舞金やその他の対応により、大幅な赤字
- 信用問題に発展し、顧客ばなれが加速
事例③:給付金不正受給
新型コロナウイルス対策で、国が支援する持続化給付金を不正受給した新聞社の従業員が逮捕された事件です。
だまし取った100万円以上を自身の借金返済にあてたことや、複数人での関与も疑われ、大きなニュースとなりました。
また、企業側にも不正防止制度の不備、社内研修等のコンプライアンス対策の不備も指摘されています。
メディアとしての信頼の失墜
コンプライアンス対策の重要な実施項目
次に紹介するコンプライアンス対策は、企業として最優先で取り組んでおきたい項目です。
「なぜ、コンプライアンス対策が必要か?」という根本から再確認し、社内の取り決めを行い、管理体制を強化していくための実施順序も意識しながら考えましょう。
基本方針を定める
まずは、企業としての基本方針や行動規範をしっかりと定めましょう。
この指針がはっきりしないと、「なぜコンプライアンス対策をしなければならないのか?」やコンプライアンスを守ることでのメリット・デメリットが社員に伝わりづらくなります。
一例として、クラシエホールディングスの公式サイトに記載されている「コンプライアンスへの取り組み」をご紹介します。
それぞれのステークホルダーに対し、行動規範をしっかりと明示している点は参考になりますね。
参考:基本方針や行動規範の例:クラシエホールディングス株式会社
就業規則や社内規程の整備
法令遵守に関わる部分として、多くの企業では就業規則や社内規定を設けているケースがほとんどです。
もし、これから新たに策定する場合には次の規程を必ず入れましょう。
- 会社運営の根幹となる規程
- 人事規程
- 組織規程
- 業務規程
- 総務規程
- その他
また、一度策定されたルールにも、現在の社内状況や社会情勢等を加味した見直しが都度必要になります。
コンプライアンス部門の設置
企業体制におけるリスクマネジメントとして、法律や社内実状に精通した専門のコンプライアンス部門を設置しましょう。
コンプライアンス部門は、企業にとって非常に重要な役割を担うため、経営陣に近い取締役会の直下に置くことがポイントです。
また、コンプライアンス部門とは別に従業員向けの相談窓口を設ける場合もあります。
社内でコンプライアンス違反が起きた場合等の内部通報制度の仕組み化と合わせて活用していきましょう。
WEB監視の実施
従業員の個人単位でのスマートフォン取り扱いを規制することは難しいため、コンプライアンス違反の投稿を一早く発見、対処する目的でWEB監視も取り入れたいです。
いわゆる、SNS炎上が拡散する大きな要因として、「発見➡対応」の遅延によるものが多く見うけられます。
また、監視の取り組み自体を従業員側にアピールすることで、違反投稿の抑止にもつながるでしょう。
コンプライアンス研修の実施
社内規程や管理体制を十分に整備したにもかかわらず違反が起きてしまうのは、コンプライアンスの重要性を個々が自覚していないからです。
一番効果的な方法は全従業員向けにコンプライアンス研修を行うことです。
次項でより具体的な研修の内容を説明します。
コンプライアンス研修の重要な実施項目
コンプライアンス研修で教育すべき内容は様々考えられますが、特に重要性が高く、他社でも多く取り上げられるテーマについて紹介します。
ハラスメントについて
ハラスメント問題に関しては、近年、話題に上がる機会が多くなったため、注目度も高まっています。
職場内での立場や地位を濫用した「パワーハラスメント(パワハラ)」という言葉が一番耳馴染みがあるかと思いますが、実はそれ以外にも多数の種類があります。
- セクシャルハラスメント
- マタニティハラスメント
- パタニティハラスメント
- 時短ハラスメント
- ジェンダーハラスメント
- ケアハラスメント
また、ハラスメントが日常的に行われている企業は、社内環境の悪化や社外への悪評による採用関係への影響も考えられるでしょう。
情報セキュリティについて
情報セキュリティとは、情報に対する「機密性」「完全性」「可用性」を意味します。
外部からのサーバー攻撃を防衛するためのウイルス対策や従業員のヒューマンエラーによる情報漏洩等から機密情報を守る目的で行われます。
リスクの多様性をふまえ、各種情報の基本的な取り扱い、不審なメールや添付ファイルを開封しないこと等を従業員に意識付けさせることが重要です。
SNSリテラシーについて
SNSについては、これまで情報セキュリティの一環として取り入れられてきましたが、現代の急速な利用者増加に伴い、誰もが基礎的なリテラシーを持つことの重要性が増しています。
そのため、独立した研修科目として導入する企業が徐々に増えてきているのです。
SNS投稿でのNG項目だけでなく、SNS炎上に対するケーススタディや企業ごとのガイドラインについて等、多岐に渡って学習すべきでしょう。
SNS研修についてはこちらの記事も参考にしてください。
コンプライアンス研修の効果を高めるには?
コンプライアンス研修は、ただ闇雲に実施さえすれば良いというわけではありません。
研修による効果を最大限に高めるためには、内容はもちろん、事前の準備や事後のケア、実施タイミングにも気を配るべきです。
特に次のことを意識して研修を行いましょう。
目的とゴールを明確に設定する
コンプライアンス研修を実施するにあたって事前に決めておきたいことは、「なぜ研修を行うのか?」という実施目的や実施することで想定されるメリット、すべての従業員に徹底してもらいたいこと等をわかりやすく伝える必要があります。
当事者意識をもたせる
研修内容は、従業員一人一人が当事者意識を持てるものでなければ意味がありません。
自社の状況や業態等とあまりにかけ離れた事例では、リスクの想定がしにくくなり、自分には関係のないものと捉えられてしまいます。
できるだけ、自社に当てはまる事例を選ぶことや具体的な対応策まで含めて話すことが重要です。
対象・階層ごとに適切なテーマや内容を決める
全従業員が共通認識として持つべきテーマもありますが、年齢や役職、部署、在籍年数等によって学ぶべきカリキュラムは異なります。
一般には階層別研修と呼ばれ、それぞれの役割に求められるスキルや心構えに合わせて、最適な研修を行うことが大切です。
- 新人・・・基礎的なビジネスマナー
- 中堅社員・・・マネジメント能力
- 管理職・・・意思決定能力
実施するタイミングも重要
コンプライアンス研修を行うタイミングは、社内で明確なコンプライアンス違反やそれに順ずるトラブル等が発生した際、もしくはニュース等で他社のコンプライアンス違反による事件が大きく取り上げられた場合に実施するのがベストです。
業務的に研修に取り組むよりも、コンプライアンス意識への関心が高まった時にこそ定着率向上にもつながります。
コンプライアンス研修実施時のポイントについてはこちらの記事も参考にしてください。
コンプライアンスの重要性をしっかりと理解し、適切な対策を行いましょう!
コンプライアンスの重要性や社員研修をはじめとしたコンプライアンス対策について解説しました。
企業にとって、いかにコンプライアンス遵守が必須課題であるか理解できたでしょうか?
自社の状況とコンプライアンス違反事例を適切に当てはめることで、従業員に当事者意識を持たせ、違反行為を未然に防ぐ取り組みにつなげましょう。
また、社内ルールや方針を決める際には、必ず研修による教育、周知をセットにして取り組みましょう。
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清水 陽平