ネット炎上予防

中小企業に必要なコンプライアンス意識!まずは経営者の意識改革から

現代では、企業のコンプライアンス意識が重要視されています。SNSの普及により誰もが情報を得たり発信したりできるようになったため、もしもコンプライアンス違反を起こした企業があればその情報は瞬く間に拡散され、企業の信用失墜に繋がります。

今まで「うちは中小企業だから関係ない」「コンプライアンスを意識しなければいけないのは大企業だ」と考え、コンプライアンス体制の整備を疎かにしていませんか?

本記事では、中小企業におけるコンプライアンス意識の必要性と問題点を取り上げ、これから体制を整えていく場合のアドバイスを紹介します。

問い合わせフォーム

企業コンプライアンスとは?

企業コンプライアンスとは?

元々「compliance」という単語は「(規則・法令などに対する)順守」を表す言葉です。

企業コンプライアンスとは、「企業が組織として活動を行う際に、法律や倫理観・道徳観を守る」ということを指します。つまり、国が定めたルールはもちろん、そうではない社会のルールまでしっかり守るということが企業に求められていると言えます。

コンプライアンスの考え方を基礎から徹底解説!
コンプライアンスの考え方を基礎から徹底解説!【弁護士監修記事】コンプライアンスにおける基礎的な知識から、重要とされている理由、違反した際に問われるリスク等も含めてご説明します。また、コンプライアンスの考え方を深めるために重要な、CSRとの関係についても触れたいと思います。...

コンプライアンス違反が企業に与えるダメージとは

企業がコンプライアンス違反を犯した場合、どうなるのか考えてみましょう。

粉飾決算や横領、情報漏洩、セクハラ、パワハラなど法律に違反するようなものであれば、犯人が刑事罰を受ける場合があります。個人または取引先に大きな不利益をもたらした場合は、相手から損害賠償を請求されることもあります。

企業として悪質な法令違反を犯した場合は、行政から業務停止処分を受け企業活動が出来なくなってしまうケースも考えられます。

たとえ法律に違反しているものではなかったとしても、倫理的・道徳的に問題のある行為が明るみになった場合、企業としての信用を失うという事は過去に起こった企業のコンプライアンス違反に関する不祥事の事例を見ても間違いありません。

現代ではインターネットで誰でも素早く情報を得る事ができるため、たとえ中小企業であっても、たった1人の従業員が起こした問題が企業の存続を揺るがすような大問題にまで発展する可能性があることを忘れないようにしましょう。

企業のコンプライアンス違反が大きく問題視された場合、大企業であればトラブルに耐えられる体力があり、信頼回復に向けて立ち直すための時間をつくることができるかもしれません。

しかし、中小企業にはそこまでの体力がない場合が多く、大きなトラブルを起こした後に信頼の回復ができず、そのまま経営が破綻、倒産することもあります。実は、中小企業ほどコンプライアンスの意識を徹底させる必要性があると言えるのです。

中小企業のコンプライアンスが低いと言われるのはなぜ?

大企業に比べて、中小企業はコンプライアンスの意識が低いと言われる事があります。その理由として、以下の点が挙げられます。

  • 大企業に比べて認知度が低い
  • 関わりを持つ人が少なく、責任範囲が狭い
  • コンプライアンスに関する取り決めがない
  • 社員教育が追いついていない

中小企業は、まだまだ自社の認知度が低いと感じている場合が多く、何か問題があった時にもマスコミなどに騒がれる心配が少ない(=社会に与える影響が少ない)ため、コンプライアンスの意識が低くなりがちです。

また、企業は大きくなればなるほど取引先企業や金融機関、大口の顧客など関わっていく団体の規模が大きくなります。自社で働く従業員やその家族も多くなり、企業としての責任範囲が拡大していくため、どうしてもコンプライアンスを意識せざるを得ません。

中小企業の場合は、まだその責任範囲がさほど大きくないと考える経営者が多いということも、企業のコンプライアンスの低さに繋がっています。また、そういった企業ではそもそもコンプライアンスに関するルールが整備されていない場合もあります。

さらに、責任を負う範囲が大きい大企業は、コンプライアンス違反を避けるために専門の部署を置き、社員にも入社時にしっかりとコンプライアンス研修を行います。中小企業の場合はそのような専門の部署を置く人員的・経済的な余力がないため、社員の教育が追いつかない結果、コンプライアンス意識の低下を招いているとも言えます。

コンプライアンスに取り組まないリスク

コンプライアンスに取り組まないリスク

企業が真剣にコンプライアンスに取り組んでいない場合、以下のようなリスクが顕在化すると考えられます。

多方面から敬遠されてしまう

コンプライアンスとは、「法律や倫理観・道徳観を守る」という態勢の構築であると説明しました。

逆に言えば、コンプライアンスがしっかりとしていない企業は、消費者や取引先、株主などから「法律をしっかり守ること、倫理観や道徳観に対しての意識などが希薄である」と捉えられてしまうと言っても過言ではありません。

「法律を守る」「倫理観や道徳観をしっかり意識する」というのは、皆さんも知っての通り「当たり前」の行為です。コンプライアンスがしっかりしていない企業は、当たり前の事が出来ていないと見なされ、それは取引先や一般の人々、ひいては従業員(求職者)など多方面から敬遠される理由になり得るのです。

社員の責任感や意欲が低下する

コンプライアンスの意識が低い企業では、社内ルールや業務マニュアルがしっかり定まっていなかったり、企業としてコンプライアンス研修の機会を設けていない場合が多くあります。

そして、そういった企業で仕事をしている社員も、社会人として企業で仕事をする際に必要な知識(法律など)やルール、マナーなどへの意識が希薄になっていきます。この「コンプライアンスの意識に関する無関心」が、企業全体を揺るがす大きな不祥事に繋がる事があることを忘れてはいけません。

さらに言えば、法律を守り、倫理観や道徳観をしっかり意識するという当たり前の行為を蔑ろにするような企業であっては、真面目で優秀な社員はどんどん辞めていきます。理由は前項でも説明しているとおり、コンプライアンス意識の低さが信用に直結するためです。

コンプライアンスがしっかりしていない企業は、外部だけでなく内部からの信用も薄れていきます。

大きな問題が起きた際の対応が遅くなる

コンプライアンスに対する意識の低い企業は、「個人情報の取り扱い」や自社の就業規則等のルールが明確に定まっていない、または全社員にしっかり認知されていないこともあり、企業の信頼を揺るがす問題に対しての意識が希薄です。

そういった企業では、万が一企業の中でコンプライアンス違反が発覚した際の対処方法も確立されておらず、トラブルの渦中でどのように対応すれば良いか適切な判断のできる人員がいません。それどころか、間違った対応をしてしまったがために更なる炎上に発展する可能性もあります。

企業のトラブル対応は、「トラブル発生時からスピードを持って動くこと」と「初動で適切な判断を行えること」の2点がとても重要です。これは、当然「実際に問題が起こったら考える」では遅く、問題が起こる前からトラブルを想定しておく必要があります。

コンプライアンスに対する高い意識を持っている企業は、普段から「万が一」のトラブルが起こった時のことを念頭に置き、しっかりと企業として適切な対処方法を社員に共有しています。

コンプライアンスの重要性をわかりやすく解説!目的や対策、社員教育のやり方まで網羅します
コンプライアンスの重要性をわかりやすく解説!目的や対策、社員教育のやり方まで網羅します【弁護士監修記事】コンプライアンスの重要性が問われる理由、さらには具体的な対策や社員教育のやり方まで紹介していきます。自社で実効性の高いコンプライアンス対策を実施するために、必要な知識を身に付けましょう。...

中小企業に必要なコンプライアンス体制の構築

中小企業に必要なコンプライアンス体制の構築

実際に中小企業がコンプライアンス体制を整えていく場合にはどのようなことを行えば良いのか、具体的に見ていきましょう。

まずはトップのコンプライアンス意識改革が必要

中小企業のコンプライアンス意識の構築のためには、まず企業のトップが意識を変えていくことが重要といえます。

社内のコンプライアンス意識を上げていくことには大きな労力やコストが必要になるため、中々手を出しにくいと考えている経営者もいるかもしれません。

しかし企業のコンプライアンスが重視される現代では、万が一にもコンプライアンス違反が露見した場合のリスクが大きい事も事実。あらかじめトラブルの予防をしておいたりトラブルの対処法が決まっていたりすれば、万が一の事態に遭遇しても慌てずに適切な行動ができます。

コンプライアンスの意識が欠如している企業は、まず社長や役員といった企業の経営層となっている人々にその価値が理解されていない場合も多いといえます。少なくとも、企業がコンプライアンス違反を起こした際には、周りからは「企業のトップに責任感がないのだろう」と判断されてしまいます。

まずは、経営層を中心にコンプライアンスに対する意識をしっかり持ち、「自社はコンプライアンスの意識を重要視している」という姿勢を従業員に見せましょう。

研修やマニュアルに関しては、自社にとって重要な項目から少しずつでも進めていくことが大切です。

自社のコンプライアンス体制の整備

まずは、自社のコンプライアンス体制について見直してみましょう。

可能であれば、社内にコンプライアンス担当の部署を置くことが理想です。予算や人員をあまりかけられない中小企業では、総務部や人事部が総括してコンプライアンスに関する教育や内部通報窓口の担当をする場合もあります。

コンプライアンス担当が決まったら、担当者を中心に自社のコンプライアンスマニュアルやガイドラインを作成します。マニュアル・ガイドライン作成の際には、企業として「何のために作成するのか」という目的をはっきりさせると軸のブレを防ぐことができます。

ゼロベースから作成する場合はインターネット上で公開されている書式などを参考にしても良いですが、自社の実情に応じた項目を取り入れたり、既に過去起きた問題点を参考に独自のものを作っていけたりするのが理想です。

コンプライアンスマニュアルやガイドラインは、就業規則などと一緒に全ての従業員が適宜読み返すことができるようにしておきましょう。

「SNS」を中心としたコンプライアンス意識の重要性

「SNS」を中心としたコンプライアンス意識の重要性

社内のコンプライアンス意識を高めていこうと考えた際に、「ひとえに『コンプライアンス』とは言っても、広すぎてどこから手を出して良いか分からない」と悩む経営者やコンプライアンス担当者は多くいます。

そこで、まずおすすめしたいのが「SNSをテーマにしたコンプライアンス意識の向上」です。優先的にSNSを中心としたコンプライアンスをテーマにして欲しい理由は、2つあります。

  • 近年の企業のコンプライアンス違反事例から見て、炎上しやすいトピックである
  • 若者を中心にSNSを利用している層は多く、興味を持ってもらいやすいテーマである

企業が一からコンプライアンス意識の向上を目指していく場合、全ての項目を一気に網羅するのは容易ではありませんし、コンプライアンスについて学ぶ従業員も混乱してしまいます。

普段から扱い慣れているSNSについてのコンプライアンスは、現在の企業の運営体制を見ても優先度が高く、スマホを日常的に使っている世代の従業員にとっても興味深く受け入れやすい内容です。

以上の点から、コンプライアンス研修の初期段階で「SNSをテーマにしたコンプライアンス意識の向上」を扱うことをおすすめしています。

「うっかり」「知らなかった」が大事になるSNS

さきほど、SNSを中心としたコンプライアンスが「近年の企業のコンプライアンス違反事例から見て、炎上しやすいトピックである」という話をしました。

企業のSNSの炎上例は近年だけで見ても様々なものがありますが、もちろん企業のSNS運用担当者が予め炎上を狙って投稿したものはありません。むしろ、自社の製品を紹介したい、企業のアピールをしたいと考えて投稿したものがほとんどでした。

それにもかかわらず多くの炎上を招いてしまったのは、SNSの運用担当者だけではなく企業全体の従業員が「どういったことがコンプライアンスに違反するのか」ということを知らなかった事が原因です。

また、「うっかり」で炎上する例も多くあります。2015年8月9日(日本では「原爆の日」とされている)に「なんでもない日おめでとう」と投稿したことによって多くの批判を受けたディズニー社の件など、名だたる大企業でも「うっかり」で簡単に人を傷付け、大炎上してしまうことをよく理解しておく必要があります。

そしてこれらはSNSの担当者をはじめ企業に所属している人たちがコンプライアンス意識をしっかりと持っていれば簡単に防げた事態でもあるのです。

SNSに関するマニュアルやガイドラインの作成例

SNSに関するコンプライアンスを高めるために、「ソーシャルメディア(SNS)運用ガイドライン」や「ソーシャルメディア(SNS)ポリシー」などという、明文化されたルールを定め、公開している企業もあります。

運用ガイドラインやポリシーには、自社のSNSアカウント運用のルールや運用方法、運用側の心構えなどが記載されています。例として、実際に公開されている3つのガイドライン・ポリシーを紹介します。

デジタル庁

デジタル庁 ソーシャルメディア
引用:ソーシャルメディア|デジタル庁

こちらは、デジタル庁の「公式ソーシャルメディア運用ポリシー」です。公式に運用しているアカウントのリストと、9つのルールが記載されています。

公式に運用しているSNSをリスト化しておくことは、アカウントを探しやすくする効果以外に、万が一何者かに偽物のアカウントが作成されてしまった際にも、ユーザーが「どれが正しいアカウントなのか」を瞬時に判断できるようにする効果があります。

日本赤十字社

日本赤十字社 ソーシャルメディア・ガイドライン

引用:ソーシャルメディア・ガイドライン|日本赤十字社

日本赤十字社の「ソーシャルメディア・ガイドライン」では、PDFにまとめられた詳細ページにて7項目のルールが定められています。

このガイドラインでは、公式アカウントにおける順守事項だけではなく、「(SNSの)私的利用における順守事項」も定められている点に注目です。組織が、職員ひとりひとりのコンプライアンス意識にまで気を配っているという事を示しています。

日清製粉グループ

日清製粉グループ ソーシャルメディアガイドライン

引用:ソーシャルメディアガイドライン | 日清製粉グループ

日清製粉グループのソーシャルメディアガイドラインでも「ソーシャルメディアにおける情報発信や対応についての自覚と責任」という項目が定められており、運用する社員がどのようなマインドでSNSの運用をするのかという指針がはっきりしています。

SNSに関するコンプライアンスを高める方法

コンプライアンスに関するポリシーやガイドラインを作成しただけで満足してしまうのではなく、その内容をしっかりと従業員に理解してもらうことも大切です。

従業員ひとりひとりがコンプライアンス意識を高められるようにするため、しっかりと研修の時間を取りましょう。研修は、社内にコンプライアンス部署が設置されていたりSNSに詳しい社員がいたりするならば、企業の中の人員で開催することも可能です。

より具体的な事例を交えた本格的な研修を行いたい場合や、「経営者用」「SNS担当者用」など立場に沿った研修を受けたい場合は、SNSリスクに特化した研修を行っている業者に相談するのがおすすめです。

弊社でもSNSリスクリテラシー研修を行っておりますので、ぜひご相談ください。

コンプライアンス研修の目的とは?テーマ・内容と研修実施の3つのポイントを解説
コンプライアンス研修の目的とは?テーマ・内容と研修実施の3つのポイントを解説【弁護士監修記事】コンプライアンス研修について、目的に応じた研修テーマや内容設定の方法。実施上でのポイントを詳しく解説します。近年事例が多発している企業のSNSコンプライアンス研修の重要性や効果についても言及します。...
ネットリテラシー研修とは?ニーズが高まっている理由と実際の研修事例を紹介します
ネットリテラシー研修とは?ニーズが高まっている理由と実際の研修事例を紹介します【弁護士監修記事】ネットリテラシーとは何か、ネットリテラシー教育のニーズが高まる背景、ネットリテラシーの低さが招くリスクなどを解説すると共に、ネットリテラシー研修を行う上で意識したいポイントやより効果的にする方法も紹介します...

まとめ|中小企業にもコンプライアンス意識は必要!トップが率先して進める事が成功の鍵

中小企業にもコンプライアンス意識は必要!

企業に対する高いコンプライアンス意識が求められている現代では、「中小企業だから曖昧でも大丈夫」という考えは通用しません。

むしろ問題が起きてしまった場合にも耐えられる体力のある大企業に比べ、中小企業はたった一度のコンプライアンス違反が倒産に直結してしまう可能性もあることを理解しましょう。

中小企業が全社員にコンプライアンス意識を持たせられるようにするには、まず企業のトップから率先して「自社はコンプライアンスの意識を重要視している」という姿勢を見せることが大切。

体制を整えるためにコストはかかりますが、企業に大切な「法律を守り、倫理観や道徳観をしっかり意識する」という行動や姿勢を社内外に発信していくことは後々のメリットになります。一からコンプライアンス体制を整えていく場合は、重要度の高いSNSに関するコンプライアンスから学んでいくのがおすすめです。

お問い合わせはこちらから

ご要望の内容 必須

お名前 必須
会社名 必須
電話番号 必須
メールアドレス 必須
お問い合わせ内容

お客様からお預かりした情報は、弊社からの情報提供やご回答の際にのみ使用し、
その他の目的で使用したり、無断で第三者へ提供することはございません。
個人情報および、お送りいただきました内容の秘密は厳守いたします。

受講者満足度98%以上!炎上リスクに備える研修
受講者満足度98%以上!炎上リスクに備える研修【株式会社エルプランニング】

大企業、官公庁を含め1500名以上が受講した、SNSリスクリテラシー研修。

企業の風評対策実績10年以上のプロフェッショナルが、炎上を知り、未然に防ぐための社員研修を代行致します。

その他にもネット上の投稿、口コミの監視など、炎上予防や風評対策のための様々なご提案が可能です。

監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。