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ステマの意味や炎上事例まとめ!景品表示法はどう改正された?【2024年最新版】

ステマの意味や炎上事例まとめ!景品表示法はどう改正された?【2024年最新版】

SNSを中心に度々炎上する「ステマ」。「やらせ」や「サクラ」などと関連して、漠然とステマは悪い事だ!と知っている方も多いのではないでしょうか。

現在も高い需要のあるインフルエンサーマーケティング。興味を引く広告が多い中で、度々問題視され、炎上してきたのがステルスマーケティング(通称:ステマ)です。

景品表示法では、ついに「ステマ」が「不当表示」として指定されることになりました。

本記事では、ステマとはどういうものなのか、なぜ悪い事だと言われているのかという点をふまえた上で、景品表示法の解釈や過去のステマによる炎上案件などについても解説していきます。

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ステマ(ステルスマーケティング)とは?

ステマ(ステルスマーケティング)とは?

ステマとは、ステルスマーケティング(Stealth Marketing)の略。

ステルス(Stealth=こっそり行う)+マーケティング(marketing=宣伝活動)の言葉からもなんとなく予想が付いている方も多いかと思いますが、「宣伝であることを消費者に分からないように宣伝を行う」というマーケティング手法のこと。英語圏では、アンダーカバー・マーケティングと呼ばれています。

具体的には、企業からの依頼だという事を隠して高評価の口コミを投稿したり、企業から商品提供を受けている「広告」である事を隠して商品をオススメするブログ記事を書いたりすることなどを指します。

ちなみに、ステマと逆の意味の言葉は「ダイマ(ダイレクトマーケティング)」と言います。「宣伝」だという事を明らかにした宣伝手法のことなので、一般的なPRは「ダイマ」ということになると言えますね。

ステマの特徴は?発生しやすい場所とは

ステルスマーケティングの発生しやすい場所や特徴を詳しく見ていきましょう。

利益提供型 なりすまし型
発生する場所 X(旧:Twitter)・Instagram・YouTubeなどの各種SNS

有名人が運営するブログ

Amazon・楽天などの各種通販サイトの口コミ欄

匿名ブログ

ステマを行う主な人 芸能人やインフルエンサー 企業の社員などの関係者

ステマは、大きく「利益提供型」「なりすまし型」の2種類に分類されます。インターネットショッピングが普及し始めた頃は「なりすまし型」が多く見られましたが、SNSの普及に伴って「利益提供型」のステマも見られるようになりました。

【利益提供型ステマ】InstagramやX、YouTube等のSNS

企業がSNSのフォロワーが多く拡散力の高いインフルエンサー(芸能人など)に依頼し、そのインフルエンサーが「企業からの依頼だという事を隠して」サービスや商品の口コミを投稿するタイプのステマです。

こういったものは「利益提供型」のステマと呼ばれることがあります。「利益提供型」のステマには様々なパターンがあり、例えば

  1. 企業が金銭を提供して、インフルエンサーにサービスの体験を装った記事を書いてもらう
  2. 企業がサービスや商品を提供して、インフルエンサーに良い感想を書いてもらう

    ※どちらも、企業からの依頼であることは明記しない

①の場合、企業は金銭の提供のみ行い、インフルエンサーは実際にはサービスを受けていないにもかかわらずサービスを体験して「良かった」という投稿をします。

②の場合、企業はインフルエンサーにサービスや商品を報酬として提供し、インフルエンサーはサービスや商品の良い感想のみを投稿します。

「利益提供型」のステマはSNSを中心に発生しており、誰が投稿したのかが明確に分かる形で行われるのが特徴です。

次に紹介する「なりすまし型」のステマと比べ、ステマの事実がバレてしまった場合には企業・インフルエンサー双方が炎上してしまう可能性が高く、とても危険な手法と言えます。

【なりすまし型ステマ】オンラインショップの口コミ欄

広告会社や企業の社員が、一般の消費者を装って口コミを投稿し、商品を良く見せるというタイプのステマです。Amazonなどで一時期話題になったことを覚えている方も多いかと思います。

こちらは、企業の人間や関係者が一般消費者に擬態するステマ方法なので、先ほどの「利益提供型」に対して「なりすまし型」のステマと呼ばれる場合があります。

「なりすまし型」のステマは口コミや匿名ブログなど個人が誰であるか特定できない状態、あるいは媒体で行われるのが特徴です。その性質を悪用して競合他社の悪い口コミを投稿するというのも、「なりすまし型」のステマに分類されます。

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インフルエンサーマーケティングとステマの違い

InstagramやTikTok、X(旧:Twitter)などのSNSでインフルエンサーが商品を紹介している記事を見かけると、「これってステマ?」と身構えてしまう人もいるかもしれません。

インフルエンサーマーケティングとは、InstagramやX、最近ではYouTubeなどで多くのフォロワーや視聴者を抱えている人(=インフルエンサー)に広告を依頼して商品やサービスの宣伝をしてもらうマーケティング手法です。

通常のインフルエンサーマーケティングによる広告の場合、PRを依頼されたインフルエンサーは自分の投稿内に「企業からの依頼によるPR案件であること」を明記します。投稿内に記載する方もいますが、インフルエンサーの間では「#PR」といったハッシュタグを付けてアピールするのがメジャーとなっています。

FacebookとInstagramではステマ投稿を防ぐため、PR活動を行うための投稿(企業アカウントが自社の商品やサービスを紹介する場合は除く)には「ブランドコンテンツのタイアップ投稿タグ」を使うことが義務化されています。

参考:ブランドコンテンツポリシーについて | Instagramヘルプセンター

インフルエンサーのステマに対する意識

消費者庁の表示対策課が現役インフルエンサー300人に対して行ったアンケートの結果では、「広告主からステルスマーケティングを依頼された経験がある」と答えたインフルエンサーが41.0%、そのうち1度でもステマ広告の依頼を受けたことがあるインフルエンサーは45.7%と出ています。

ステルスマーケティングの依頼を受けたインフルエンサーの大半は、依頼を受けた理由について「ステルスマーケティングに対する理解が低かったから」という回答、次いで「広告であるということを隠すことが条件で報酬が貰える依頼だった」という回答が多く、企業側から強くステマ広告の依頼を出している様子も窺えます。

一方、企業からステマ広告依頼を持ちかけられた際「依頼を断った」と答えたインフルエンサーについては、その理由として

  • ステマを行うとフォロワーの信頼を失う
  • ステマは悪い事だと思っている
  • ステマは自身のインフルエンサーとしてのブランドを失う行為だから
  • フォロワーを騙しているようで申し訳ない

といった回答が上位にきており、インフルエンサーとしてプライドを持って仕事をしている方が多い傾向にあるという点もわかります。

実際インフルエンサーの中にはテレビで姿を見るような芸能人も多く含まれているため、白いイメージを壊すような事をしたくないと考える方も多いのではないかと考えられます。

参考:第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日) | 消費者庁 参考資料2「現役のインフルエンサーに対するアンケート結果」(PDF)

違法じゃないの?ステマが嫌われる理由

違法じゃないの?ステマが嫌われる理由

ステマが嫌われ炎上する理由は、消費者の「騙された」という心理に基づくものだと言えます。

「騙された」と書きましたが、多くの場合はステマで紹介された商品が「悪いものを良いものに見せた」という事を直接の原因として炎上したという案件は、現在のところそれほど多くありません。

そうではなく、元々良いものであったとしても、宣伝を宣伝として扱わないことにより消費者に「騙された」と受け取られてしまうことが問題なのです。

ステマにより消費者が感じる「騙された」という心理

先にも解説した通り、インターネットで様々な情報を得る事ができるようになった現代では、「他者の口コミ」を参考にしてモノを選ぶということは珍しい事ではありません。

そして、大多数の人がモノ選びの際に参考にする「他者の口コミ」は、対象の「モノ」に対して中立の立場で意見を述べていることを前提としています。つまり、企業とは全く関係のない第三者が「あくまでも自発的に紹介・宣伝している」という点に「モノ」の価値を求めているということです。

もっと言えば、「モノ」に対して良い意見も悪い意見も言える選択肢のある人間が、あえて「良い」と言っている点に信頼を置いていたのに、投稿がステマだった場合にはその「信頼」の前提が覆されることになりますよね。

近年では外出が困難だった時期もあり、オンラインショッピングは消費者にとって身近なものとなりました。本物を手に取って選ぶことができないオンラインショッピングでは、先に購入した人の中立的な意見や口コミが商品選びの助けになります。

「中立の意見」を見たくて、あえて企業の公式ページではなくSNSやブログを使って情報収集している消費者の立場になってみれば、企業から依頼された人間の「企業と無関係である事を装って書いた記事」の存在は「嘘の情報」や「裏切り」とも捉えられるもの。

多くの場合、人気商品の「ステマ」が発覚して炎上した場合、企業や紹介された商品だけではなく、ステマに加担した有名人(インフルエンサー)までもが信頼失墜に陥る結果となっています。

2023年10月1日からステマが違法に!規制されるまでの流れ

2023年10月1日からステマが違法に!規制されるまでの流れ

2023年10月、日本でもようやく景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」による告示が出されたことによって、ステルスマーケティングが「不当表示」として指定されました。

ステマは先ほども触れたように消費者を欺く手法であるため、詐欺やサクラと同列の印象を持つ人も少なくありません。日本での法規制は最近となりますが、アメリカやイギリスでは既にステルスマーケティング(アンダーカバー・マーケティング)は違法とされています。

ステマを規制するという旨が追加された「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」。この法律は「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的」としています。

日本では2023年にやっと規制されたステマですが、諸外国ではもっと早く規制が進んでいました。ここでは、日本でステマが規制されるまでの流れを追っていきましょう。

2022年:「ステルスマーケティングに関する検討会」が開催される

日本で違法とされていなかったステルスマーケティングに関する問題の対処をするため、消費者庁で「ステルスマーケティングに関する検討会」が開催されました。

2022年9月16日に1回目の検討会が開催されてから、2022年12月27日まで8回もの会議が行われ、ステルスマーケティングの違法化が進められました。

検討会では、主に以下の内容について検討されています。

(1)ステルスマーケティングに対する景品表示法による規制の必要性
(2)規制が必要である場合、具体的な規制の在り方
(3)その他

引用:第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日) | 消費者庁 資料1「ステルスマーケティングに関する検討会について」

これらの討論の中で出た意見の一部として

  • ステルスマーケティングを違法であるとすることにより、論理的にステルスマーケティングが悪い行為と理解できるようになってリテラシーが高まる
  • もしステマを法律で規制する場合には、諸外国の水準と合わせることが妥当

といった趣旨の発言が出ており、これらの考え方も考慮しながら今回の法改正についての検討が重ねられました。

参考:第6回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年11月11日) | 消費者庁 資料1 「前回の検討会(主な検討事項)における委員の御意見のまとめ(事務局説明資料)」

2023年:「不当景品類及び不当表示防止法」の改正

2022年に行われた討論会での報告を受け、2023年3月26日に「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表が行われました。

そして、2023年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(=ステルスマーケティング)「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為」として規制の対象となりました。

今回の告示指定によるステマ規制の対象となるのは商品やサービスを提供する事業者(広告主)のみとなっており、企業から依頼を受けたインフルエンサーや芸能人といった個人は対象となっていません。

つまり、万が一ステマを行ったとしても措置命令や懲役・罰金の対象となるのは広告を投稿したインフルエンサーではなく、ステマ広告を依頼した企業だけということになります。

とはいっても、ステマが違法であると認められた以上、それに加担するということは消費者からの信頼を失墜させる行為であることに変わりありません。企業からの依頼で商品を紹介する立場の方も状況をよく理解し、適切な対応を取りましょう。

参考:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁
参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準 | 消費者庁

2024年:11月までに施行される改正にも注目

2023年10月よりステマが規制されることとなりましたが、2024年11月までに施行される予定の改正にも注目しておいた方が良いでしょう。

変更点はいくつかありますが、簡単に要点をまとめると以下の3点がポイントとなります。

  1. 事業者の自主的な問題解決を促す
  2. 違反行為に対する罰則が厳しくなる
  3. 法執行を円滑にするための規定整備

このうち、特におさえておきたいのは①と②の内容です。

①は違反行為の疑いのある事業者が前もって是正措置計画の認定を受けた場合、措置命令・課徴金納付命令を回避できるといった主旨の内容です。

②については優良誤認表示・有利誤認表示(もちろん、ステマ行為だけに限ったことではありません)を行った事業者に対して直罰(100万円以下の罰金)が追加されるというもの。また、繰り返し違反を行う事業者に対しては課徴金の額が増え、抑止力の強化を狙っています。

過去の「ステマ」による炎上事例

過去の「ステマ」による炎上事例

過去のステルスマーケティングに関連する炎上事例を見てみましょう。いくつかあるステマによる炎上案件のうち、比較的最新の事例を2件紹介します。

ひとつは動画アプリTikTokを運営するTikTok Japanの件。ステマが疑われる時期は2019年〜2021年の間ですが、2022年1月に大きなニュースとなりました。もうひとつは、2019年にニュースとなったウォルト・ディズニー・ジャパンの件です。

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TikTok Japan

動画アプリ「TikTok」を運営するTikTok Japanが、Twitterインフルエンサーに報酬を支払い、指定したTikTok内の人気動画を転載させたという事例です。

Twitterに投稿されたTikTokの動画には、報酬を伴ったPR案件であることが明記されていませんでした。

TikTok Japanは謝罪文にて「商品やサービスの宣伝をするものではなく、TikTok内のコンテンツをより多くの皆様に知っていただくための活動」と釈明していますが、対象のツイートにはTikTokのURL(リンク)が記載されており、アプリのダウンロードへ誘導するものだと認識できるものでした。

参考:TikTokコンテンツをTwitterインフルエンサーに対価を支払って投稿依頼していた件に関するお詫び
参考:TikTok、ステマ疑惑について正式謝罪 「宣伝のつもりではなかった」|ITmedia
参考:TikTok、ステマ報酬7600万円…運営会社がインフルエンサー20人に支払い : 読売新聞オンライン

ウォルト・ディズニー・ジャパン

映画「アナと雪の女王2」の良い感想を描いた漫画が一斉にTwitterへ投稿されたことによって、その不自然さから「ステマではないか?」と炎上した事例です。

こちらも各々の漫画には「PR案件」であることは明記されておらず、どの投稿も「自発的に感想を描いた漫画である」と解釈されてしまうような内容になっていました。

元々話題性が大きかった映画であった事から、Twitterを中心に大きく炎上してしまう事態となりました。ウォルト・ディズニー・ジャパンが掲載した謝罪文ではクリエイターに責任はないとしているものの、事件から3年経った現在でも「ステマの漫画家」と強い印象を持ち続ける一部のユーザーがいる点からも、企業のステマが大きな不信感を生むことがわかります。

参考:「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び|ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
参考:「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」にご参加いただいたクリエイターのみなさま、そしてファンのみなさまへ|ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

まとめ|ステマは消費者の信用を失う行為!2023年から違法化へ

まとめ|ステマは消費者の信用を失い炎上に繋がる行為!2023年10月から違法へ

ステルスマーケティング(ステマ)は、現在SNSを中心に問題となっています。SNSで活動しているインフルエンサーの中には「企業に『広告』だということを隠して欲しい」と依頼された事があるという方もいるかもしれません。

諸外国から遅れてになりますが、日本においても2023年10月よりステマが違法行為となりました。

これにより罰せられるのは事業者(広告主)のみとなっているものの、インフルエンサーにとっては自分を信頼してくれているフォロワーを裏切る行為として炎上に繋がりますので、誠意のある広報活動を心がけて欲しいと思います。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。