ネット炎上予防

インフルエンサーマーケティングの炎上対策|炎上事例とその理由を解説

SNSで商品やサービスの情報を入手する一般ユーザーが増えるにつれ、多くの人に影響を与えるインフルエンサーを使った「インフルエンサーマーケティング」が注目され始めました。

インフルエンサーは多くのファン(フォロワー)を抱えているため、人気のあるインフルエンサーが紹介した商品は認知度が高まり、良い口コミを書いてもらえればその口コミを信じてくれる人もたくさん増えます。

一方で、インフルエンサーマーケティングに失敗した結果、炎上し企業やブランドに大きな傷がついてしまった事例をニュース記事などで目にしたことのある方もいるでしょう。

本記事ではインフルエンサーマーケティングの炎上問題に着目し、過去の事例をもとに今後企業がインフルエンサーマーケティングを行う上で炎上を避けるためにどのような対策をしていけば良いのか、解説します。

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インフルエンサーの炎上問題

インフルエンサーの炎上問題

SNSなどで大量のフォロワーを抱え大きな影響力をもつ「インフルエンサー」。「影響」「効果」などといった意味を持つ、英語の「influence」という言葉が語源であると言われています。

その語源の通り、インフルエンサーモデルやタレント、スポーツ選手など「インターネット上で大きな影響力を持つ人々」のことを指します。

ここでは、「インフルエンサーマーケティング」というマーケティング手法の基礎知識から、インフルエンサーが企業のPRを行うことが流行した理由などを見ていきましょう。

インフルエンサーマーケティングとは?

「インフルエンサーマーケティング」とは、ファンの多いインフルエンサーに自社の商品やサービスの紹介をしてもらうことによって、認知の拡大(新規顧客層の獲得)や自社ファンの獲得を狙うマーケティング手法です。

インフルエンサーは自身の人気がある(高い影響力を持つ)という点も重要なポイントですが、それだけではありません。

彼らはそれぞれの分野の専門家である場合も多く、例えば化粧品を取り扱う企業が「美容研究家のインフルエンサー」に自社製品を紹介してもらえば、より説得力を持った宣伝ができるといったメリットがあります。

インフルエンサーの活躍の場や仕事内容

YouTubeを主な舞台にしているインフルエンサーなら「YouTuber(ユーチューバー)」、Instagramの場合は「インスタグラマー」、ブログを主な活動の場所にしているなら「ブロガー」、TikTokであれば「TikToker(ティックトッカー)」など様々な呼び方があります。

インフルエンサーの代表格としては芸能活動を行っている芸能人が挙げられるでしょうが、2007年頃からは莫大なフォロワーを抱えている一般人もインフルエンサーと呼ばれるようになっています。

インフルエンサーは気軽にコメントのやり取りができるSNSやブログなどをメインの活動の場としているため、芸能人よりも一般の顧客に近く、自分のファンともコミュニケーションを取る人が多くいます。

なぜ多くの企業がインフルエンサーを起用するのか

一般の人々が気軽にインターネットを使って情報を得られるようになった現代。私たちは数多の情報の中から自分自身で「どれが信じられる情報なのか」を精査しなければなりません。

そんな中、商品やサービスの購入を迷った場合に、最も信用できる判断材料として注目されたのが「口コミ」です。なぜなら、「口コミ」は基本的に先にサービスや商品を購入、体験した人がその経験を投稿するものなので、実体験に基づいた信頼性の高い情報が得られるためです。

この「口コミ」とインフルエンサーは親和性が高いと言えます。多くの人に影響力を与える人間に商品やサービスの良い面を「口コミ」として広めてもらう事によって、より多くの人から認知してもらったり好感を持ってもらったりしやすくなるのです。

もちろん、インフルエンサーの「影響力」が良い方に働けば商品の売上に繋がりますが、プロモーションの仕方やインフルエンサー自身の炎上により、商品やブランドが炎上してしまうというトラブルに繋がる場合もあります。

インフルエンサーマーケティングにおける主な炎上事例とその理由

インフルエンサーマーケティングにおける主な炎上事例とその理由

ここでは、インフルエンサーをつかったマーケティングを行い、炎上してしまったという事例とその理由について解説していきます。

【インフルエンサーマーケティングの炎上事例】

  • ステマ(ステルスマーケティング)疑惑
  • 薬機法・景表法に違反している表現の使用
  • インフルエンサー自身の不適切発言
  • ターゲットとフォロワーのミスマッチ

以上4つの事例から、インフルエンサーマーケティングにおける炎上理由を考えていきましょう。

ステマ(ステルスマーケティング)疑惑

インフルエンサーを中心に一時横行した「利益提供型ステルスマーケティング(ステマ)」

「利益提供型」のステマとは、企業がインフルエンサーに対し「企業からの依頼だということを隠して」自社の商品やサービスを紹介させる手法です。

これまで日本ではステルスマーケティングを明確に「違法」とはしていませんでしたが、消費者側から見れば「騙された」「裏切られた」と感じる行為であることなど苦情も多かったことから、2023年10月から、一定の類型について規制がされることになりました。

多くのファンがいる大企業であってもステマ疑惑の炎上事例はあります。海外では既に違法としている国もあるので企業は十分に「ステマ」について勉強し、行わないようにしましょう。

参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について | 消費者庁

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薬機法・景表法に違反している表現の使用

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)景表法(不当景品類及び不当表示防止法)に違反したプロモーションも炎上の原因になります。

薬機法については、医薬品や医薬部外品、化粧品などを取り扱っている企業はとくに注意してプロモーションをおこなう必要があります。

インフルエンサーを使った広告ではありませんが、「薬機法違反」関連では過去に「健康食品に対して医薬品的な効能をうたった」として、広告主だけではなく広告代理店関係者も含む計6人が逮捕された事例もあります。

医薬品等の効果が過剰に良く表現されていないかどうか、誤解を与えない表現かどうか複数人でチェックできる体制があると安心です。

景表法は薬機法と違い特定の製品に関するものではなく、すべての商品・サービスの品質や価格について、実際のものより著しく優良・有利であると誤認される表示を規制する法律です。

どういった表現が違反となるのか感覚では理解しにくい部分もあるかと思いますので、景表法の違反事例などについては以下に掲載する消費者庁のページを参考にすると良いでしょう。

参考:事例でわかる景品表示法|消費者庁(PDF)
参考:景品表示法における 違反事例集|消費者庁(PDF)
参考:景品表示法関係ガイドライン等 | 消費者庁

インフルエンサー自身の不適切発言

企業がインフルエンサーに仕事を依頼する場合、そのインフルエンサー自身に不適切発言やモラルのない行動をしていないかをしっかり確認しましょう。

企業や自社のブランドを紹介してもらうインフルエンサーは、自社の顔になると言っても過言ではありません。自社商品を紹介したインフルエンサーの炎上は、自社ブランドの信用にも関わってくることを念頭に置き、発言や行動において信頼できる人間を見極めましょう。

知名度の高いインフルエンサーであればあるほど、その素行や過去のSNSでの投稿を含む発言内容にまで深く注意する必要があります。

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ターゲットとフォロワーのミスマッチ

新規の顧客層獲得を目指すあまり自社のイメージとあまりにも乖離しすぎたインフルエンサーを起用するのは大きなリスクがあります。

具体的に言うと、企業が「20代~30代の女性をメインターゲットにした化粧品」のPRをお願いするために20代の女性インフルエンサーに仕事を依頼しても、そのインフルエンサーをフォローしている大半が男性だった場合、企業のメインターゲットにPRはできませんよね。

「炎上」とは少し離れますが、インフルエンサーマーケティングの失敗を防ぐためにはインフルエンサー自身だけではなく、そのインフルエンサーをフォローしている利用者層まで入念に調べておく必要があります。

インフルエンサーマーケティングを行う場合の3つの炎上対策

インフルエンサーマーケティングを行う場合の3つの炎上対策

炎上事例をもとに、インフルエンサーマーケティングを行う場合に企業がどのような対策を行えば良いのかを考えていきましょう。

自社の顧客層やイメージに合ったインフルエンサーを選ぶ

広報にインフルエンサーを起用するなら「新規の顧客層を開拓する」ということを目的のひとつと考えている担当者は多いと思います。

しかし、今まで築き上げてきたブランドイメージを支持してきた既存顧客を蔑ろにしたPRは、思わぬ炎上に繋がってしまう可能性があります。自社の商品をさらに多くの人に手に取って欲しいのに、既存の顧客が離れて行っては意味がありません。

自社のブランドや商品に合ったインフルエンサーをしっかり選ぶようにしましょう。

起用するインフルエンサーのリテラシーをチェックする

インフルエンサーマーケティングで自社のブランドや商品の好感度・認知度を上げたいのにもかかわらず、インフルエンサーの不注意による炎上で企業にも悪いイメージがついてしまうのは避けたいところ。

インターネットでは、過去の発言内容や行動が掘り起こされて炎上するという事例も珍しくはありません。起用したいインフルエンサーの人物像や素行、交友関係、過去の発言内容までしっかりチェックしましょう。

炎上を避けられるインフルエンサーであるかどうかを見極めるために、まずは企業の担当者のリテラシーを高める努力をするのも有効です。

現在ではインターネットなどからリテラシーを高めるための情報を得る事も可能ですが、炎上対策専門の業者が行っているセミナーなどを受講して勉強会を行うのも良いでしょう。

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投稿のルールを定め、共有する

広告でありながら「一般人らしさ」「広告っぽくない」という点がインフルエンサーを起用する最大のメリット。折角インフルエンサーを起用するなら、企業としても「PR感のない自由なかたち」で宣伝して欲しいと考えていると思います。

とはいえ、自然な形に任せすぎてしまうと自社のブランドイメージに合わない宣伝をされてしまう可能性もあります。

インフルエンサーを起用する場合には、自社やブランドのイメージに沿った単語や文章(使って欲しい表現)、逆にNGワード(使って欲しくない表現)、さらには「必ずPRだとわかるハッシュタグを入れる」(ステマ対策)などといった投稿ルールの土台を予め用意しておき、起用するインフルエンサーとともに認識の相違が出ないようにルールのすり合わせを行うのがおすすめです。

まとめ|インフルエンサーマーケティングでは炎上対策まで考える!ルールをしっかり決めよう

インフルエンサーマーケティングでは炎上対策まで考える!ルールをしっかり決めよう

多くの人が情報精査のために「口コミ」を重視する現代において、商品やブランドの認知度・好感度拡大のためにインフルエンサーマーケティングを行う事は依然として有効な手段だと考えられます。

しかし、失敗して炎上してしまった事例も多数あります。ステマ疑惑の炎上はもちろん、インフルエンサー自体の炎上から商品・サービスの炎上に繋がってしまう場合がある点はよく理解しておく必要があります。

インフルエンサーを起用する企業側の人間がインターネット広告における知識をつけ、インフルエンサーの選抜やルールのすり合わせなどをしっかり行っていきましょう。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。