スマホに知らない番号から電話がかかってきた時や、明らかに迷惑電話が増えてしまった時、昔の知り合いの名前や住所を伝手になんとか連絡を取りたい時などに「住所でポン!(ネットの電話帳) 」を利用した事のある方は多いのではないでしょうか。
約6億件ものデータから知りたい情報を得ることのできる「住所でポン!(ネットの電話帳) 」。しかし、個人の名前や住所、電話番号が簡単に検索されてしまうことはプライバシーの点から考えても「怖い」とネガティブに感じる方も多くいるでしょう。
本記事では、「住所でポン!(ネットの電話帳) 」がどのようなサイトであるかを押さえながら、もし自分の情報が書かれていた場合、削除が可能なのかどうかという疑問について解説します。
住所でポン!(ネットの電話帳)ってどんなサイト?
「住所でポン!」は示現舎合同会社代表の鳥取ループ(本名:宮部龍彦)氏が運営しているインターネット電話帳です。
サイト内には2000年、2007年、2012年のハローページに載っていた固定電話の電話番号や住所、名前が掲載されています。
地域ごとにまとまって掲載されており、電話番号、名前を使って検索することも可能です。
2012年のサービス開始時は「住所でポン!」という名称でしたが、2015年の5月から「ネットの電話帳」というサイト名に変更されました。
現在では、約6億件という膨大なデータを保有するサイトとなっており、毎月300万件以上のアクセスがあると説明されています。
有料版の住所でポン!(ネットの電話帳)とは?
基本無料で利用できる「住所でポン!」ですが、有料版があることをご存知でしょうか。
有料の「ネットの電話帳 有料版(JPON EXTREME)」は1993年から2019年までの電話帳(実際には、1993年、1997年、1999年から2019年)を見ることができるため、無料版(最新は2012年)よりも新しいデータの閲覧ができるという事ですね。
「ネットの電話帳 有料版」は30日あたり500円(または3mBTC)で利用でき、無料版に比べてセキュリティ対策が施されています。
複数の電話番号を一括で検索し一覧を作成できる「一括検索」やCSVダウンロードの機能を使えるのが特徴です。
住所でポン!(ネットの電話帳)のアプリ版について
【Android用 住所でポン!(ネットの電話帳)アプリ】
引用:GooglePlayストア ネットの電話帳
【iPhone/iPad用 住所でポン!(ネットの電話帳)アプリ】
引用:「ネットの電話帳」をApp Storeで
有料版だけではなく、アプリ版の「住所でポン!」も存在します。
Android用(GooglePlay)とiPhone用(App Store)どちらにも対応しているため、それぞれのダウンロードサイトからアプリを入手することが可能です。
アプリ版は月額課金制となっており、ひと月480円の課金を行えば有料版と同じく1993年から2019年までの電話帳を利用することができます。(課金をしない場合でも無料版と同程度の機能を使うことができます)
住所でポン!(ネットの電話帳)の掲載情報は削除できるの?
結論から言うと、住所でポン!(ネットの電話帳)に掲載されている情報の削除はとても難しいと言えます。
公式サイトにも「住所・名前・電話番号の削除は例外なく断固拒否します」と明記されています。
管理人自身が2019年頃に「アンチ個人情報保護法」というカテゴリでブログを書いていた点から考えてみても、管理人への連絡によって削除対応してもらえることは基本的にないと言って良いでしょう。
「住所でポン事件」とは?裁判の結果はどうなったのか
「住所でポン事件」とは、2015年に個人の方がプライバシー権侵害として「住所でポン!」の管理人を訴えた事件の通称です。
原告の主張は、被告(サイトの管理人)が「住所でポン!」に原告の氏名、住所および電話番号を掲載していることについて「人格権を侵害している」というものでした。
このことから、民法709条に基づいた「不法行為による損害賠償」および「住所でポン!」からの「原告の氏名、住所、電話番号の削除」などを請求しています。
原告の主張に対し、被告となる「住所でポン!」の管理人は徹底的に争う姿勢を見せ、
- 被告適格はない
- 紙媒体の電話帳に載っている情報であるため、プライバシー情報(保護すべき情報)ではない
- (仮にプライバシー侵害であったとして)プライバシーの侵害は不法行為ではない
などと主張しています。
注目すべき「原告の氏名,住所及び電話番号のプライバシー該当性」については、
原告の住所(これに付随する郵便番号も含む。)及び電話番号は,原告の生活の本拠を客観的かつ明確に示すものであり,かつ,郵便ないし電話等の手段により情報を伝達するために必要な情報であって,個人の私生活上の事実ないし情報であるといえ,かつ,周知の情報ではない。
そして,氏名は,個人を他人から識別し,特定する機能を有するものであり,当該個人の他の情報と結びつくことによってその情報と個人の関連性を示す機能を果たす。
以上からすれば,原告の住所,電話番号及び郵便番号は,原告の氏名と結びついて,原告のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである。
と書かれているように、この事件においては「氏名、住所、電話番号」がプライバシー情報に値すると判断されました。
さらに、原告が公職などに就いていない私人だったこともあり、情報を公開することの公益性も否定されています。
また、「元々紙媒体(ハローページ)で多くの人に配られていた情報をインターネットに掲載することが違法行為にあたるのか」という点においても注目されました。
上記についても「ハローページは配布先(NTT)が基本的に掲載地域という限定された地域への配布を目的としているため、ハローページへの掲載を承諾しているからといってインターネットへの掲載に承諾した訳ではない(=掲載は違法である)」という原告側の主張が認められています。
上記は2017年、京都地方裁判所での資料から引用していますが、実際にはその後原告と被告両方が控訴し、控訴審判決は2017年の11月に下されました。
この判決に対し被告側は上告していますが受理されず、判決が確定しています。
最終的に裁判が始まって約3年後の2018年5月10日に5万5000円の賠償命令が確定しましたが、2019年3月の時点で原告側に対し賠償金は支払われていません。
参考:下級裁判所 裁判例速報 事件番号:平成27年(ワ)第2640号
参考:京都の島崎法律事務所が本サイトを提訴したと表明
参考:「住所でポン!」創設者が解説 「破産者マップ」は消せるか
削除以外で住所でポン!(ネットの電話帳) の対策をすることは可能?
先述した通り「住所でポン事件」では最終的に情報の削除が認められたものの、損害賠償の支払いはされていません。
また、確定した賠償額も5万円程度となり、裁判で争った3年間の労力を考えると被害を受けている側の負担が大きいのではないかと感じた方も多いでしょう。
それでは、裁判で争うこと以外の対策は可能なのでしょうか。
注釈機能を利用する
住所でポン!(ネットの電話帳) の詳細ページには注釈機能がついており、掲載されている情報に対して手動で追記ができるようになっています。
掲載情報が間違っている場合は、こちらの機能を使って修正や補足を行うことが可能です。
補足ですが、迷惑電話などが多く、様々な対策を行っても解決することが難しい場合は固定電話の電話番号を変更することも可能です。
変更工事費として2,750円の支払いが必要となりますが、変更後の電話番号は電話帳に記載されず、104を使っての案内も対象外になります。
検索エンジンでの対策を考える
インターネット上に違法な情報が掲載されてしまっている場合、GoogleやYahoo!といった検索エンジンの管理者へ削除申請を送り、検索エンジンの検索結果に違法情報の載ったサイトを表示させないように依頼することができます。
ただし、削除をしてもらうにはGoogleやYahoo!の利用規約やポリシーに違反していることが前提であり、申請方法もそれぞれの検索エンジンが指定している方法に則っておこなう必要があります。
また、検索エンジンでの検索結果から削除されたとしても、住所でポン!(ネットの電話帳) に掲載されている情報が消える訳ではありません。
つまり、直接「住所でポン!(ネットの電話帳)」にアクセスして情報を検索する人には効果がないということです。
しかし、多くのインターネットユーザーは検索エンジンを利用して情報を収集するため、情報拡散の抑止にある程度の効果は見込めると言えます。
検索エンジンからの削除を検討する場合でも、削除申請には法律の知識が必要になってくるため、いちど弁護士に相談してみるのがおすすめです。
風評対策業者に相談する
サイトの管理人や弁護士に相談しても、情報を削除することが難しい場合は風評対策業者に相談してみましょう。
検索エンジン内で「逆SEO」と呼ばれる施策を行うことで、個人名や店舗名を調べた際に対象のサイトが上位化しにくくなるよう対策をすることができます。
逆SEOについての詳しい解説は以下の記事を参考にしてみてください。
弊社でも無料相談を行っておりますので、掲載されてしまった情報の対策を検討中の方はお気軽にご相談ください。
まとめ|住所でポン!(ネットの電話帳)の削除は困難!しかし削除の前例はアリ
インターネット上に勝手に自分の住所が掲載されていたら怖いですよね。しかし住所でポン!(ネットの電話帳)の管理者はサイト上で「削除依頼は断固拒否します」と宣言しているため、管理者への連絡で情報が削除されることは基本的にないと言って良いでしょう。
過去には裁判で情報の削除を要求した原告側が勝訴した前例はあるものの、被告となっていた管理者が徹底的に争う姿勢でサイトの正当性を主張しているため、裁判が長丁場となる上に期待していた結果が得られない場合もあることは留意しておく必要があります。
どうしても裁判を行って情報の削除を目指したいという場合は、インターネットのトラブルに強い弁護士を探して依頼することをおすすめします。
ネットの誹謗中傷、風評対策のプロがお悩みを伺います。
風評サイトやサジェストのお悩みのほか、SNSや口コミサイトの監視など、幅広くご対応可能です。
清水 陽平